第5章 国際的な安全保障環境の改善 

3 日中防衛交流


 中国は、アジア太平洋地域において大きな影響力を持っており、近年の目覚しい経済発展や軍事力の近代化など、各国がその動向に注目する存在となっている。防衛分野での相互理解を深め協力の基盤をつくることは、両国の安全保障のみならず、この地域の平和と安定にも有益である。
 98(平成10)年、久間防衛庁長官(当時)が訪中した際の防衛首脳会談において、防衛首脳レベルでの対話の継続実施など、今後の防衛交流の進め方について合意した。
 また、同年、小渕総理(当時)と江沢民国家主席(当時)との日中首脳会談では、「平和と発展のための友好協力パートナーシップの構築に関する日中共同宣言」を発表し、両首脳は、両国の防衛交流が相互理解の増進に有益な役割を果たしていることを積極的に評価したほか、安全保障・防衛分野での交流を徐々に深めることで意見が一致している。
 防衛庁は、中国防衛当局者との交流の中で、特に、日本の防衛政策に対する中国側の理解の促進に努めるとともに、中国の軍事力や国防政策の透明性が向上するよう働きかけている。

(1)防衛首脳クラスなどのハイレベルの交流
 03(同15)年9月、石破防衛庁長官(当時)が訪中し、曹剛川(そう・ごうせん)国防部長と会談を行った。これを契機に実務レベルを含む防衛交流を積極的に推進することで認識が一致した。現在、防衛庁は、98(同10)年以来となる中国の国防部長の訪日を招請している。
 次官級協議については、04(同16)年10月の熊光楷(ゆう・こうかい)副総参謀長(当時)の訪日に続き、昨年3月、守屋事務次官が訪中し、防衛当局の相互理解および信頼関係の増進の観点で、日中防衛交流をさらに進展させていくことが重要であるとの認識で一致した。

(2)防衛当局者間の定期協議など
 両国の外交・防衛当局間による安全保障対話が、現在まで9回行われている。また、防衛研究所一般課程への留学生受入れや、防衛研究所を中心とした研究交流や教育分野の交流、友好親善のための相互訪問などが継続的に行われている。

(3)部隊間の交流など
 00(同12)年10月、森総理(当時)と訪日した朱鎔基首相(当時)との会談において艦艇の相互訪問を早期に実現することで意見が一致した。しかしながら、02(同14)年5月に中国海軍艦艇が訪日する予定を中国の申し出により延期された経緯もあり、早期実現に向けて両国で調整を行っている。
 また、昨年11月の自衛隊音楽まつりに中国軍楽団が参加することになっていたが、同年10月、中国側の申し出により参加が見送られた。

 

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