第3章 わが国の防衛のための自衛隊の運用と災害派遣や国民保護 

3 領水2内潜没潜水艦への対処

(1)基本的な考え方
 わが国の領海および内水で潜没航行する外国潜水艦に対しては、96(平成8)年の閣議決定3などに基づき海上警備行動4を発令し、自衛隊が当該潜水艦に対して、海面上を航行し、かつその旗を揚げる旨要求することおよび当該潜水艦がこれに応じない場合にはわが国の領海外への退去要求を行う。

(2)中国原子力潜水艦による領海内潜没航行事案を踏まえての措置など
 04(平成16)年11月、先島群島周辺のわが国領海内で潜没航行していた中国原子力潜水艦が発見された。これに対しては、自衛隊法第82条および96(同8)年の閣議決定に定める手続きに従い、海上警備行動を発令して対処し、海自の艦艇および航空機は、当該潜水艦が公海上に至るまで継続して追尾した。しかし結果として、当該潜水艦の入域情報に接してから海上警備行動の発令までに相当の時間を要することとなったことから、これらをはじめとする教訓を踏まえ、政府としては新たに次の対処方針などを定めた。

ア 対処方針
(ア)領水内潜没潜水艦に対しては、原則として海上警備行動により、浮上要求、退去要求などの措置を実施

(イ)防衛庁長官は、事案発生に際し、所要の手続きを経て、海上警備行動を速やかに発令
○このため、わが国領海に接近する潜水艦の情報が得られた場合には、これを早期に政府部内で共有
○当該潜水艦がわが国領海内に侵入した場合には、特段の事情がない限り、直ちに海上警備行動を発令

(ウ)当該潜水艦がわが国領海を出域した後も、再侵入の可能性の見極め、国籍の特定などのため、原則として海上警備行動を継続

(エ)関係国と連絡をとり必要な措置を講じつつ対処

(オ)領水内潜没潜水艦の状況、政府の対処などについては、安全保障上の観点などに留意しつつ、海上警備行動の発令の公表は速やかに行うなど、国民に対し適切かつ時宜を得た説明を実施

(カ)以上の方針を確実に実施するため、必要なマニュアル(対処要領)を関係省庁間で共有

イ 領水内潜没航行潜水艦対処のための装備などの充実
 海自は、わが国の領水内を潜没航行する外国潜水艦を探知・識別・追尾し、当該潜水艦に対するわが国の意思を表示する能力の整備・向上および浅海域における潜水艦対処能力の維持・向上を図っている。
参照> 2章2節5


 
2)領海および内水を含む

 
3)96(平成8)年12月安全保障会議および閣議で決定された「我が国の領海及び内水で潜没航行する外国潜水艦への対処について」
この閣議決定は、自衛隊の部隊がわが国の領海および内水で潜没航行する潜水艦に対して浮上・掲旗要求、退去要求を行うにあたり、あらかじめ閣議においてその基本方針と手順を決定しておき、個々の事案発生時に、改めて個別の閣議決定を経ることなく、内閣総理大臣の判断により、自衛隊の部隊が迅速に対処し得る途を開いたもの。


 
4)正式には「海上における警備行動」(自衛隊法第82条)という。海上における人命若しくは財産の保護又は治安の維持のため特別の必要がある場合に自衛隊がとる行動で内閣総理大臣の承認が必要


 

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