第3章 わが国の防衛のための自衛隊の運用と災害派遣や国民保護 

(解説)統合運用体制における自衛隊の運用の具体例

 今回の統合運用体制への移行により、自衛隊の運用にあたっては、統幕長が軍事専門的観点から一元的に長官を補佐し、各自衛隊に対する長官の命令を一元的に執行することになりました。これにより、例えば、大規模な人的・物的被害の発生が予想される南関東地域での震災に際しては、次のように、自衛隊の迅速な対応が容易となります。
 地震発生直後、陸・海・空自の部隊はそれぞれ、知事などの要請や自主的な判断に基づき、直ちに必要な人命救助活動を行います。これと同時に、統幕長は、映像などにより収集された陸・海・空自の部隊からの情報に基づき、被害の状況などについて、陸・海・空自の垣根を越えて総合的に把握します。この情報は、政府や防衛庁としての判断に活用されることになります。またこれに加え、一刻を争う救援のために、陸・海・空自の部隊の整合のとれた活動に関する防衛庁長官の判断を、統幕長が軍事専門的観点から補佐することにより、迅速な意思決定が可能となります。
 被害が甚大な場合は、内閣総理大臣による「災害緊急事態の布告」および防衛庁長官による「大規模震災災害派遣」の命令を受け、陸自東部方面総監(東方総監)を指揮官として、海自横須賀地方隊および空自航空総隊の部隊を含めた「統合任務部隊」を速やかに組織し、人口の密集した南関東地域における直接の救援活動を行うことを計画しています。
 この際、統幕長は、「統合任務部隊」指揮官への長官の命令を執行し、これまで陸・海・空各幕僚長がそれぞれ行っていた中央レベルでの調整や救援に必要な部隊・救援物資の輸送などの必要な処置を一元的に行います。例えば、全国の陸・海・空自の部隊をもって、「統合任務部隊」を増援し、地震の被害の状況に応じて、最大で約7万人の人員が救援活動にあたることを計画していますが、これらに必要な増援部隊、特に長距離を移動する部隊の輸送にあたっては、輸送の優先順位や手段に係わる統幕長の一元的な方針の下、陸・海・空自の輸送手段が、効率的に活用されます。
 一方、「統合任務部隊」指揮官である東方総監は、統幕長の行う全自衛隊レベルでの処置と連携しつつ、政府の現地対策本部などとの連絡調整窓口として、現地でのニーズを一元的に把握します。さらに、現地での被害の状況に応じた救援活動の優先順位に基づき、増強された部隊を含め、指揮下の陸・海・空自の部隊を一元的に運用し、救援・復旧支援活動を行うことになります。
 
大規模震災対処(南関東地震対処)

 

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