第1章 わが国を取り巻く安全保障環境 

10 国際連合などによる国際社会の安定化のための努力


(1)全般
 冷戦終結後、それまで十分に機能していなかった国連による平和維持の制度に対する期待が高まり、多くの国連平和維持活動(PKO:Peacekeeping Operations)が設立された。また、最近では、紛争に適切に対処するための方法として、アフリカ連合(AU:African Union)のような地域的枠組による取り組みや、国連安保理決議により権限を与えられ、多国籍軍が治安維持や人道復興支援などにあたる例もみられる。こうした中、国連では、多様化する課題に効果的に対処できるよう、組織面を含めた国連の改革についての議論が行われている。21世紀の新たな諸課題に対して、国際社会が有効に対処するためには、国連の機構を実効性と信頼性を高める形で改革することが求められており、わが国としても、積極的にこれに取り組んでいくこととしている1

(2)国連平和維持活動(PKO:Peacekeeping Operations)の動向
 PKOは、伝統的には、停戦の合意が成立した後に、停戦監視などを中心として、紛争の再発防止を主たる目的として行われてきたが、冷戦終結後、その任務は、武装解除の監視、選挙や行政監視、難民帰還などの人道支援など、文民の活動を含む幅広い分野にわたるようになり、さらに活動の規模も拡大した。また、国連憲章第7章の下で、武装解除などに関し強制措置をとり得るとされる活動や、紛争を未然に防止する目的を持った活動も行われるようになった。本年2月末現在、全世界で15のPKOが展開し、107か国、約7万3,000人が参加している。
 PKOは、要員・機材の確保の問題や要員の安全確保の問題2などの課題を抱えており、国連と関係国は、これらの課題に対する方策について議論を行ってきた。
 04(平成16)年12月に国連ハイレベル委員会が公表した報告書「より安全な世界、我々が共有する責任」は、現存の紛争において十分な平和維持を行うためには、要員の数をほぼ倍増させる必要があるとして、特に先進国に対して平和活動のための部隊を増強するよう求めている。また、平和構築委員会の設置や旅団レベルの待機制度や平和維持活動のための常設警察部門の立上げなどを提案しており、このうち、平和構築委員会の設立が昨年末に決定された。


 
1)昨年7月に、わが国を含む4か国が中心となって、安保理改革の枠組み決議案を国連事務局に提出した。この提案は、同年9月の国連総会閉幕に伴い廃案となったが、同時に、同月の国連首脳会議において、「安保理の代表性、効率性および透明性を向上させるため、早期の改革を支持する」とする「成果文書」が採択されており、引き続き国際社会において議論を深めていくこととされている。

 
2)PKO等における国連要員の犠牲者数は、昨年1年間で128人、これまでの総計が2,247人(本年3月末時点)に達しており、PKOなどに携わる要員の早急な安全確保が望まれている。


 

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