2 防衛生産・技術基盤の充実強化
防衛産業は、わが国の安全保障の一翼を担う重要な産業である。したがって、「質の高い装備品を短期間で、安く、取得する」ためには、わが国において、装備品を設計・製造・維持する能力を持つ防衛生産・技術基盤を平素から確保しておくことが必要不可欠である。特に、航空機、艦船、戦車、誘導弾などの主要装備品については、概して、生産数が少量で、初期投資が多く、高度の技術能力が要求されることから、個々の装備品を開発・生産できる企業は、1社ないし数社に限られる。このため、装備品の製造にたずさわる一企業の市場からの撤退が、装備品の安定的な取得や維持に直ちに支障を及ぼすおそれがある。また、この基盤を維持することは、仮に海外から装備品を調達する場合にも、相手国との交渉力を確保し、出来る限りわが国に有利な条件で装備品を取得することを可能とする観点からも重要である。
装備品の取得については、性能・価格面に加え、維持・補給・教育訓練の容易性やわが国独自の改善の必要性なども考慮した費用対効果に関する検討に基づき、国内開発、ライセンス国産、輸入といった取得方法を適切に判断してきたところである。しかしながら厳しい財政事情や装備品の高価格化を踏まえると、今後とも、その取得数量の大幅な増加は見込めない。このため、生産性が高く技術力のある強い体質の防衛生産・技術基盤を育成・維持していくことについて、より一層配意していく必要がある。
また、わが国は、民生分野において世界でも先端的な性能を実現する技術力や高い信頼性の製品を製造する生産能力を有している。これらの技術を既存の防衛技術と適切に組み合わせることやデュアルユース技術(両用技術)を活用していくことで、質の高い装備品を生みだす技術を確立していくことは可能である。さらに、防衛専用技術の民生分野への用途拡大に努めることにより、防衛生産・技術基盤の育成・維持の一助となることも考えられる。
こうした状況を踏まえ、防衛庁においては、「真に必要な防衛生産・技術基盤の確立」を図るべく、わが国の安全保障上、重点を置いて育成・維持すべき防衛生産・技術基盤の分野を明確化するなどの検討を行っているところである。