第6章 国民と防衛庁・自衛隊 

2 再発防止に係る抜本的対策について2


(1)検討の経緯
 本年1月31日、木村防衛庁副長官を委員長とする「検討会」が設置され、部外の有識者にも特別委員としてご参加いただき、審議を重ねた。
 そして、再発防止策について、入札手続、再就職、組織、人事管理、公益法人などに関する検討を行い、本年6月16日、報告書を以下のように取りまとめた。
 なお、今般のような不祥事案を二度と起こさないようにするため、再発防止策を確実に実施していくことは当然であるが、旧調達実施本部の事案および今回の事件が幹部職員あるいは元幹部職員によって行われたことにかんがみ、職員の徹底した意識改革の重要性、特に、予算が国民の血税であることの周知徹底と、法令遵守意識の向上などの取り組みを行っていく。
 この取り組みの一環として、本年6月、「防衛施設庁職員の心構え〜3,100名の決意〜」3を作成し、全職員に対して配布したところである。

(2)建設工事の入札手続など
 今般のような談合事案の再発を防止するため、談合の起こりにくい環境をつくるとの観点から、従来の入札手続きを見直すこととした。具体的には、調達に係わる一連のプロセスの透明性を高めるため、1)入札手続の改善4、2)入札・契約過程における監視・チェック機能などの強化5、3)談合に対する予防的措置の強化6、4)OBを含む業界関係者との適切な関係の確立7の措置を講じる。

(3)再就職
 今般の事案にかんがみ、早期退職慣行の見直しおよび再就職の自粛などを行っていく。
 早期退職慣行の見直しについては、早期退職慣行の是正に向けて、一層強力な取り組みを進めていくとの方針の下、いわゆる建設系技官の退職年齢について、早期に、事務官などの平均退職年齢まで引き上げていく。同時に、事務官など全般について、可能な限り、定年まで勤務させるよう、適切な措置を講ずる。また、勧奨退職の平均年齢の状況を、毎年度、防衛庁長官に報告する。
 さらに再就職の自粛などとして、
1)離職前5年間に建設工事の発注業務に関与していた幹部職員(行(一)8級相当以上)の建設工事受注業者への再就職の自粛要請(離職後5年間)
2)財団法人防衛施設技術協会への再就職の全面的自粛要請
3)今般の事案に関連した企業への当面の間の再就職の自粛8
4)防衛庁職員が再就職することがふさわしく、かつ国民から疑惑の目で見られることのない再就職先および再就職の仕組みの検討、
などを実施する。

(4)懲戒処分などの基準の明確化
 入札業務を含む調達関連業務について、その職務に係る規範などを明確にし、これに違反する行動の態様について、作為のみでなく不作為も含めて類型化し、懲戒処分などの基準を明確にする。また、公益通報者保護制度の適切な運用などを通じて、通報者を保護する。

(5)人事管理
 今回の事案の背景に、防衛施設庁の沿革に由来する独自の人事管理などがあるとの認識の下、人事管理の改善などを実施する。
 具体的には、
1)防衛施設に係る業務を行うI種技官の統一的な人事管理
2)防衛施設に係る業務を行うI種技官の他省庁との積極的な人事交流
3)防衛施設に係る業務を行う部署の幹部ポストの事務官と技官の組み合わせ配置
4)徹底した意識改革
などである。特に意識改革については、初心を忘るべからずとの考えの下、法令遵守意識の向上、高い倫理観の育成などを目的として、全職員、特に幹部職員に対しては、繰り返し教育研修などを行うことにより、継続的に徹底した意識改革のための努力を行う。

(6)組織
 今般の事案に係る組織の見直しでは、1)防衛施設庁の解体と防衛庁本庁への統合、2)建設工事の発注手続きに係る相互牽制機能の強化、3)全庁的な監査・監察機能の強化を実施する。
 防衛施設庁の機能について、以下の観点を踏まえ、業務の見直しを行い、組織の透明性を確保した上で、防衛施設庁の解体と防衛庁本庁への統合を実施する。
ア 各自衛隊や米軍などのユーザーサイドのニーズを的確に反映
イ 安全保障を担う組織にふさわしい、防衛政策と施設行政が密接に連携した体制の確立
 防衛庁本庁への統合にあたっては、
ア 建設工事や土地の購入などの施設の取得を中心とする調達に係る業務は、透明性の高い実施部門で処理
イ 防衛施設庁の行っている「基地問題への対応」や「住民への影響のある事件・事故への対応」といった業務は、地方自治体や国民との関係に焦点を当てた部門で対応
ウ 地方の「防衛施設局」は、地域と防衛行政との接点を担うべき組織との観点に立って再編
することとしている。
 また、建設工事の発注手続きに係る相互牽制機能の強化策としては、各防衛施設局建設部が行っている「積算」と「契約」を分離する。
 さらに、全庁的な監査・監察機能の強化として、地方の部隊なども含め、防衛庁・自衛隊の活動全般について、全庁的な立場からチェックを行う。そして、その規模にふさわしい体制を有した独立性の高い組織・部局を新設する。
 なお、今回の組織の見直しにあたっては、以下の視点に常に留意しつつ検討を進めている。
ア 職員一人一人が、国民の目線に立ち、かつ、国の防衛を担っていることを常に意識するとともに、これまで地方公共団体などとの間で果たしてきた役割やつちかってきた知見を活用し、誇りをもって業務に従事できること。
イ 防衛施設庁の独自性・特殊性が今般の事案の背景にあったという反省に立ち、「背広」と「制服」、「事務系」と「技術系」、「陸」・「海」・「空」といった既成概念の間にある垣根をできるだけ低くすること。

(7)公益法人
 今般の事案で問題が認められたことから、公益法人については、1)財団法人防衛施設技術協会の解散、2)随意契約の一般競争入札などへの移行、3)再委託の禁止、4)公益法人における勤務期間の是正などを実施する。
 財団法人防衛施設技術協会については、防衛庁OBの再々就職、随意契約、再委託の実施など運営の実態に問題が認められたことから、同協会の機能のうち民間企業などで実施することが困難な機能について、必要な措置を講じた上で、平成18年度中の自主解散を要請する。
 随意契約については、「よほどの事情がない限り」、一般競争入札などに移行し、所管公益法人と随意契約を実施する場合は、再委託を認めない。
 また、公益法人における勤務期間について、防衛庁から常勤・有給で再就職した所管公益法人の役員は、5年以内に防衛庁と密接な関係にある営利企業に就職するための退職をしないよう要請する。
 なお、技術研究本部が財団法人防衛技術協会および企業と行う労務借上契約について、一般競争入札などへ移行し、労務借上の予定価格の算定方法などについても見直しを実施する。

(8)今般の事案への対応
 今般の事案に対し厳正な対応を行うことが、かかる事案の再発防止につながるとの認識に立ち、今般の事案で逮捕・起訴された現職幹部2名については、本年4月26日、懲戒免職とした。また、調査により明らかになった長期にわたる談合関与行為の組織的な構造を踏まえ、処分のための事実関係をさらに確認した上で、過去までさかのぼり、談合に係る行為に関与した関係者および指揮監督責任を有した職員、合計82名について、本年6月15日、調査結果の公表と同時に厳正な処分を行った。(降任1名、停職10名、減給6名、戒告33名、訓戒18名、注意14名)
 なお、防衛施設庁の技術審議官および建設部長であった者で、現在、既に防衛施設庁を退職している者全員に対して、退職金相当額の全部又は一部の自主返納又は寄附について検討するよう呼びかけを行った。
 また、公正取引委員会の調査などにより、関与した当時の職員および国の損害額が特定された場合、当時の職員に対する損害賠償請求を含め、国の損害額の回復に向けた法的手続をとることとする。

(9)今後の対応
 この報告書でとりまとめた各分野における再発防止策については、直ちに実施に向けた取り組みを既に行っているが、平成19年度概算要求に向けての実務作業については、「防衛施設庁解体後の新たな防衛組織を検討する委員会(委員長:防衛庁長官)」において、精力的に検討していく。


 
2)<http://www.jda.go.jp/j/delibe/dangou/houkoku/index.html>に報告書の詳細を掲載

 
3)防衛施設庁HPのトップページ<http://www.dfaa.go.jp/>に「談合の再発防止に向けた取り組み」を掲載し、心構えを紹介

 
4)a.一般競争方式を現在7.3億円以上の事業から2億円以上の工事まで拡大する。b.総合評価方式の適用を段階的に拡大する。c.設計施工一括発注方式を積極的に採用する。などである。

 
5)a.第3者からなる入札監視委員会の地方への設置および監視機能の強化、b.談合等の情報を幅広く収集するための電子目安箱をホームページ上に設置、などである。

 
6)総合評価落札方式の評価点や企業の競争参加資格を定める際の総合審査数値の総合点数の算定にあたり、指名停止措置状況や施工成績などを適切に反映させた評価を行うこと。

 
7)職員と受注企業の社員(特にOB)とは真に業務上必要な場合を除き、接触を禁ずることなどを内容とする対応要領を定め、周知を徹底

 
8)当該企業においてコンプライアンス(法令遵守体制)が確立したと認められるまでの間


 

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