第2章 わが国の防衛政策の基本 

2 防衛大綱策定の経緯


 以上のようなわが国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ、04(平成16)年12月に現在の防衛大綱が策定されるに至った経緯について紹介する。

(1)防衛庁内での検討(「防衛力の在り方検討会議」)(01(平成13)年9月〜04(同16)年12月)
 国際情勢の変化や科学技術の飛躍的発展といったわが国を取り巻く安全保障環境の変化を踏まえ、01(同13)年9月、防衛庁長官の下に「防衛力の在り方検討会議」を設置し、今後の防衛力のあり方に関連する事項について、幅広い観点から検討した。
 この防衛庁内における検討も踏まえて、03(同15)年12月、「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」が閣議決定された。この中で、今後の防衛力については、新たな脅威や多様な事態2に対して、実効的に対応するとともに、国際社会の平和と安定のための活動に主体的・積極的に取り組み得るよう、防衛力全般に関して見直しを行う必要があるとの方向性を示した。
 また、この閣議決定では、以後政府部内の検討を行い、04(同16)年中に07大綱に代わる新たな防衛計画の大綱を策定することとされた。
参照> 資料27

(2)「安全保障と防衛力に関する懇談会」における検討(04(平成16)年4月〜10月)
 04(同16)年4月には、今後のわが国の安全保障と防衛力のあり方に関する政府全体としての取り組みについて、幅広い観点から総合的な検討を行うため、小泉内閣総理大臣の下に、安全保障、経済などの分野の有識者から意見を聴取することを目的とした「安全保障と防衛力に関する懇談会」3(座長:荒木浩 東京電力顧問)が設置された。
 同懇談会は、13回開催され、同年10月、報告書を小泉総理に提出した。
 当該報告書の中で、日本の安全を確保するため、2つの目標(1)日本の防衛、2)国際的安全保障環境の改善による脅威の予防)を達成するため、3つのアプローチ(1)日本自身の努力、2)同盟国との協力、3)国際社会との協力)を適切に組み合わせて統合的に実行する必要があるという統合的安全保障戦略の考え方が示された。
 その上で、今後の防衛力については、統合的安全保障戦略を実践するため、防衛力を弾力的に運用することによって多様な機能(テロ対処、弾道ミサイル対処、国際協力など)を発揮できる「多機能弾力的防衛力」を追求すべきとしている。
 防衛大綱における安全保障の基本方針、新たな防衛力の考え方は、こうした懇談会の提言の趣旨を反映させたものとなっている。

(3)安全保障会議などにおける検討(04(平成16)年10月〜12月)
 閣議決定「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」や「安全保障と防衛力に関する懇談会」の報告も踏まえ、安全保障会議において、今後の防衛力のあり方について幅広い観点から総合的に審議を行い、04(同16)年12月10日に防衛大綱が安全保障会議と閣議において決定された。



 
2)この閣議決定において、「大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展、国際テロ組織等の活動を含む新たな脅威や平和と安全に影響を与える多様な事態」と定義されている。

 
3)「安全保障と防衛力に関する懇談会」報告書<http://www.kantei.go.jp/jp/singi/ampobouei/dai13/13siryou.pdf


 

前の項目に戻る     次の項目に進む