第4章 国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組 

インドネシア・スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波に際しての国際緊急援助活動

(1)自衛隊の部隊などの派遣経緯など
 昨年12月26日にインドネシア・スマトラ島の西方沖で発生した大規模地震及びインド洋津波により、震源地を中心に激甚な被害が生じた。

 
インドネシア・スマトラ島沖大規模地震発生地域周辺

 このため、同月27日、タイ王国政府からわが国に対し支援要請があり、同月28日、外務大臣から防衛庁長官に対し、国際緊急援助隊法に基づく協力を求める協議が行われ、同日、インド洋におけるテロ対策特措法に基づく対応措置を交代して帰国途上であった海自の部隊をタイ王国に派遣した。
 また、本年1月3日、インドネシア共和国政府からわが国に対し支援要請があり、同月4日の外務省との協議を経て、同月6日以降空自のインドネシア国際緊急援助空輸隊、海自のインドネシア国際緊急援助海上派遣部隊、陸自のインドネシア国際緊急医療・航空援助隊及び統幕などの統合連絡調整所要員をインドネシア・アチェ州を中心とした地域に派遣した。

 
C-130H輸送機から撮影したインド洋津波災害の状況

 インドネシア・スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波災害への対応の経過の概要は、次表のとおりである。

 
インドネシア・スマトラ島沖大規模地震及びインド洋津波被害への対応の経過概要

 
CH-47JA輸送ヘリから援助物資を卸下する隊員

 
国際機関と協力して診療活動を行う隊員

 
エアクッション艇(LCAC)による海上輸送状況

 
ウタパオ海軍航空基地において援助物資を搭載するC-130H輸送機

(2)タイ王国での海自部隊による捜索・救助活動など
 昨年12月28日、防衛庁長官は自衛艦隊司令官に対し、タイ王国において国際緊急援助活動を行う旨の命令を発出したことを受け、インド洋での任務を終了し帰国のためにマレーシアの東方海上を航行中であった海自艦艇3隻(人員約600名)が急遽プーケット島沖に向かい、被災者の捜索・救助活動などを行った。
 搭載ヘリを含む海自艦艇3隻は、海上を漂流していた57体の遺体を収容しタイ当局への引き渡しを行うとともに、本邦から別途派遣されていた国際緊急援助隊救助チーム及び機材の航空輸送を行った。
 本年1月1日、タイ王国から要請された任務が終了したのを受けて、防衛庁長官は活動を終結する旨の命令を発出し、海自部隊は活動を終了して同月10日に帰国した。

 
被災者の捜索・救助活動を行う隊員

(3)インドネシア共和国周辺地域での自衛隊の活動
 本年1月4日、外務省との協議を経て、防衛庁長官から陸・海・空自衛隊に対して、部隊などの派遣準備の命令が発出されたことを受け、各自衛隊は、部隊の編成を含めた本格的な派遣準備を開始するとともに、現地状況の確認及び具体的な支援ニーズなどの調査を行うため、先遣チームをタイ王国及びインドネシア共和国に派遣した。そして、同月5日以降、防衛庁長官から空自、陸自及び海自に対し、それぞれ派遣命令が発出されたことを受け、部隊を現地に派遣し、輸送や医療・防疫活動を行った。
 現地における輸送活動では、空自のC-130H輸送機1機を国際的な救援活動の連絡・調整の拠点となったタイ王国ウタパオとインドネシア・バンダ・アチェなどの間で援助物資などの航空幹線輸送を行うとともに、陸自のCH-47JA輸送ヘリコプター3機及びUH-60JA多用途ヘリコプター2機や海自のSH-60J搭載ヘリコプター1機及びエアクッション艇(LCAC)2艇により、アチェ州の各地域間における援助物資や復旧工事に使用するインドネシアの重機などの輸送を行った。本輸送活動により、累計で援助物資など約400トン、人員約2,100名、重機など35両を輸送した。
 また、医療・防疫活動では、陸自派遣部隊がバンダ・アチェにおいて、国際移住機関(IOM)(International Organization for Migration)2との協力の下、医療活動及び防疫活動を行うとともに、アチェ州西岸において予防接種(麻疼ワクチン)を行った。本医療・防疫活動により、累計で診療6,013名、予防接種2,277名、防疫133,800平方メートル3の活動を行った。
 このような活動を行った今回の自衛隊による国際緊急援助活動の特徴として、次の三つが挙げられる。

1) 自衛隊による国際緊急援助活動として初めてヘリコプターを派遣し、現地において援助物資などの航空輸送を行った。

2) 陸自のヘリコプターを現地まで輸送するに当たり、海自の輸送艦「くにさき」に搭載し輸送したことや、活動期間中、バンダ・アチェ沖に停泊した海自の艦艇が、陸自派遣部隊の活動拠点として支援を行ったことなど、平成17年度末の新たな統合運用体制への移行に向けた1つの試金石となった。

3) 初めて3自衛隊及び統幕からの部隊及び要員がそろって派遣され、総勢約1,000名に上る自衛隊史上最大の海外での活動であり、各派遣部隊が現地において効果的かつ効率的に任務を遂行するための3自衛隊の連携の必要性が改めて認識された活動であった。今回は、ウタパオなどに統幕要員及び各自衛隊からの派遣された連絡幹部をもって統合連絡調整所(JCC:Joint Coordination Center)を開設し、活動にかかわる統合調整を行った。

 
部隊などの展開の概要

 
派遣隊員を激励する今津防衛庁副長官

 
陸自装備品を輸送する輸送艦「くにさき」

 
派遣部隊の活動実績

 
護衛艦「くらま」甲板上で活動する隊員

 
他国と調整を行う統合連絡調整所要員


 
2)51(昭和26)年、欧州・ラテン・アメリカにおける人口・難民・移民問題解決のために発足され、89(平成元)年の憲章改正により「国際移住機関(IOM)」となり、広く難民の輸送支援、移民支援、人的資源の移転を扱っている非国連の国際機関

 
3)東京ドームグランド面積(約13,000m2)の約10.3倍に相当する。


 

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