国民の保護に関する「基本指針」の策定と「国民保護計画」の作成など
(1)国民の保護に関する「基本指針
2」の策定
本年3月、国民保護法の適切かつ円滑な執行を図るため、政府は、国民保護法第32条に基づき、国民の保護に関する基本指針(以下「基本指針」という。)を策定した。この基本指針は、国としての国民保護措置の実施に関する基本的な方針を示すとともに、指定行政機関及び都道府県がそれらの国民の保護に関する計画(以下「国民保護計画」という。)を、指定公共機関がその国民の保護に関する業務計画(以下「国民保護業務計画」という。)を作成する際の基準となるべき事項などを定めるものであり、国民保護措置の実施に関する基本的な方針に続き、武力攻撃事態の想定に関する事項、実施体制の確立、国民保護措置に関する事項、緊急対処事態への対処、国民保護計画等の作成手続などの運用に関する事項について、実施主体を明らかにしつつ、定めているものである。
ア 武力攻撃事態の想定
武力攻撃事態が実際にどのようなものになるかについては一概に言えないが、国民保護措置の実施に当たって留意すべき事項を明らかにするため、次の4類型を想定している。これらの事態は複合して起こることが予測されるが、それぞれの類型に応じて実施される国民保護措置の特徴などを整理している。
(ア)着上陸侵攻
事前の準備が可能であり、戦闘予想地域からの先行避難が必要となる。一般的に国民保護措置を実施すべき地域が広範囲に渡る。
(イ)ゲリラや特殊部隊による攻撃
事前にその活動を予測・察知することが困難で、突発的に被害が生じるため、攻撃当初は屋内に一時避難させ、関係機関が安全措置を講じつつ避難を実施する。
(ウ)弾道ミサイル攻撃
発射された段階での攻撃目標の特定は極めて困難かつ発射後極めて短時間で着弾するため、迅速な情報伝達などによる被害の局限化が重要であり、屋内への避難が中心となる。
(エ)航空攻撃
航空機による爆撃であり、攻撃目標の特定が困難なため、屋内への避難などを広範囲に指示することが必要となる。
イ 緊急対処事態の想定
緊急対処事態については、次の4つの事態を想定しており、事態に応じた緊急対処保護措置を行うこととされている。
(ア)危険性を内在する物質を有する施設などに対する攻撃が行われる事態
原子力事業所の破壊、石油コンビナートの爆破など
(イ)多数の人が集合する施設及び大量輸送機関などに対する攻撃が行われる事態
ターミナル駅や列車の爆破など
(ウ)多数の人を殺傷する特性を有する物資などによる攻撃が行われる事態
炭疽菌やサリンの大量散布など
(エ)破壊の手段として交通機関を用いた攻撃などが行われる事態
航空機による自爆テロ、弾道ミサイル等の飛来など
(2)国民保護計画の作成
今後の取組として、平成17年度中を目途に、基本指針に基づき指定行政機関及び都道府県が国民保護計画を、指定公共機関が国民保護業務計画を作成することが期待されている。また、平成18年度を目途に、都道府県の国民保護計画に基づき市町村が国民保護計画を、指定地方公共機関が国民保護業務計画を作成することが期待されている。
指定行政機関である防衛庁及び防衛施設庁も、平成17年度中を目途に、国民保護計画を作成する。
なお、地方公共団体の長は、国民保護計画の作成に際して、それぞれの国民保護協議会
3に諮問することとされている。