第1章 わが国を取り巻く安全保障環境 

北方領土におけるロシア軍

 ロシアが不法に占拠するわが国固有の領土である北方領土のうち国後(くなしり)島、択捉(えとろふ)島と色丹(しこたん)島に、旧ソ連時代の78(昭和53)年以来、ロシアは地上軍部隊を再配備してきたが、近年、人員数は減少傾向にあり、現在は、ピーク時に比べ大幅に縮小した状態にあると考えられる。しかし、この地域には、依然として戦車、装甲車、各種火砲、対空ミサイルなどが配備されている。北方領土の地上軍に関しては、93(平成5)年にエリツィン大統領(当時)が訪日した際、四島駐留軍の半数を既に撤退させ、国境軍を除き残りの半分も必ず撤退させる旨公式に表明した。また、1990年代後半には、日露間の各種公式協議の場で、北方領土駐留ロシア軍が削減されている旨の発言がロシア側より繰り返しなされている3
 しかし、02(同14)年には、軍の高官が相次いで同地域を視察し、生活施設などを整備する計画であることが明らかにされている。さらに、昨年11月以来、プーチン大統領及びラヴロフ外相が56(昭和31)年の日ソ共同宣言がロシアにとって義務であることを繰り返し発言しているが、本年に入ってからは、天然資源相が希少金属や金、石油など天然資源開発の意向を表明するなど、ロシアは北方領土に対し、改めて関心を示している。
 このように、わが国固有の領土である北方領土へのロシア軍の駐留は依然として継続しており、早期の北方領土問題の解決が望まれる。


 
3)97(平成9)年の日露防衛首脳会談において、ロジオノフ国防相(当時)は、北方領土の部隊が95(同7)年までに3,500人に削減されたことを明らかにした。また、98(同10)年の防衛事務次官訪露の際、セルゲーエフ国防相(当時)は、北方領土駐留ロシア軍兵員数については、着実に削減されている旨発言している。


 

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