第5章 国民と防衛庁・自衛隊 

飛行場周辺における環境整備のあり方に関する検討

 防衛庁は、以前から、住宅防音工事への助成をはじめとする生活環境の整備などの施策を重点的に講じてきている。しかし、小松(石川県)、横田(東京都)、厚木(神奈川県)、嘉手納(かでな)(沖縄県)、普天間(ふてんま)(沖縄県)飛行場の周辺住民から、夜間の離着陸の差止請求、騒音被害に対する損害賠償請求などを内容とする訴訟が提起されている。これらのうち、確定判決がなされたものについては、周辺住民がこれまで被っていた過去分の被害の賠償を政府に命じる結果となっている。
 他方、こうした状況の中で、騒音に不満を持ちつつも訴訟を起こさない住民の中に不公平感が広まり、99(平成11)年、騒音訴訟判決で請求が認められた過去分の損害賠償に相当する金銭補償やこのような補償の制度化などを求める運動(いわゆる公平補償を求める運動)が生起した。
 また、防衛施設の周辺地方公共団体や周辺住民は、これまでの住宅防音工事の画一化された工法の見直しや新たな補助対象メニューの採択をはじめとする各種施策の拡充などを要望している。
 このようなことから、防衛庁は、今後のとるべき施策のあり方の検討の資とするため、部外の有識者による「飛行場周辺における環境整備の在り方に関する懇談会」を開催し、延べ9回に及ぶ会合を重ね、02(同14)年7月、同懇談会において報告書3が取りまとめられた。その概要は次のとおりである。
1) いわゆる公平補償を求める運動への対応として、騒音訴訟に参加しない住民も含め、飛行場周辺に居住する住民のさらなる理解を得る可能性の高い施策を追求すべきである。
2) 周辺地方公共団体や周辺住民の要望の多様化への対応として、限られた予算の中で、これまでの施策の継続を図るだけでなく、各地域の特性も踏まえた施策の多様化を図るとともに、航空機騒音の深刻な影響を被っている周辺地方公共団体や周辺住民に焦点を当てたメリハリのある施策の展開が必要である。


 
3)「飛行場周辺における幅広い周辺対策の在り方に関する報告」
http://www.dfaa.go.jp/kondankai/hokoku.pdf


 

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