第6章 今後の防衛庁・自衛隊のあり方 

第2節 陸・海・空自衛隊の統合運用のあり方

 自衛隊の統合運用は、自衛隊の総合的かつ有効な運営を図るため、本年から50年前の54(昭和29)年7月に陸・海・空幕僚長と統合幕僚会議議長で構成される統合幕僚会議(統幕)が設立されたことに始まり、時代の要請に応じてその役割を逐次広げてきた。しかし、実際に運用を行うにあたっては、各自衛隊がそれぞれの構想に基づいて個別に行動し、必要に応じて統幕が統合調整を行い対処するという「各自衛隊ごとの運用を基本」とする態勢をとってきたのが現状である1
 一方、軍事科学技術や情報通信技術の発達、これらによる戦闘様相の変化、さらには多種多様な事態の発生や新たな脅威の出現による国民の自衛隊に対する期待の高まりなど、自衛隊を取り巻く環境は変化し、役割は拡大している。これら多様化する役割などに速やかに対応し、将来にわたり自衛隊の任務を迅速かつ効果的に遂行するためには、平素から陸・海・空自衛隊を有機的かつ一体的に運用できる態勢が必要である。このような問題意識から、防衛庁では、02(平成14)年4月、各幕僚長と統幕に対して「統合運用に関する検討」を行うよう長官指示を発出した。12月には、これまでの「各自衛隊ごとの運用を基本」とする態勢から「統合運用を基本」とする態勢へ移行することの必要性を整理し、「自衛隊の運用に関する軍事専門的見地からの防衛庁長官の補佐の一元化」、「統合運用のための幕僚組織の設置」、「陸・海・空自衛隊の部隊における統合運用体制の強化」についての施策をとりまとめた成果報告書が提出された2。また、昨年12月19日に閣議決定された「弾道ミサイル防衛システムの整備等について」における「我が国の防衛力の見直し」3の項において、「現在の組織等を見直して、統合運用を基本とした自衛隊の運用に必要な防衛庁長官の補佐機構等を設ける。」こととされた。
 成果報告書や閣議決定を踏まえ、現在、防衛庁として、法律、組織などの観点から細部にわたる具体的な検討を行っているが、本節では、成果報告書に記述されている統合運用の態勢強化の必要性と新たな統合運用態勢の方向性、成果報告書を踏まえ現在防衛庁において検討している事項などについて説明する。



 
1)2以上の自衛隊を統合運用する場合、長官の補佐は統幕による統合調整によって行われる。統幕は合意を基本とするため、統合調整においては、各自衛隊ごとの作戦構想を整合させて一定の合意に達するまでの調整に時間を要し、結果として長官に対する迅速な補佐に支障をきたすおそれがあるとともに、事態の推移に応じてその都度相互に調整が必要となることから自衛隊の行う作戦全般が適切に行われないおそれがある。

 
2)「『統合運用に関する検討』成果報告書」
http://www.jda.go.jp/join/folder/seikahoukoku/cyou-houkoku.pdf

 
3)資料61参照。本章1節参照。


 

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