第4章 国際社会の平和と安全を確保するための取組 


拡大する防衛交流など

 防衛庁・自衛隊発足以降、日米安保体制の下での米国との関係を別にすれば、諸外国との交流は、海自の遠洋練習航海での寄港や留学生の受け入れなどを中心に行われ、時折友好国などとの間で防衛庁長官や幕僚長などのハイレベルでの訪問が行われるにとどまっていた。

 冷戦終結後、安全保障面での対話・交流を通じて、相互理解、信頼関係を深めることが地域の安全保障にとって重要であるとの認識が高まり、わが国と諸外国との間の対話・交流も進展してきた。防衛白書においても、平成5(93)年版に初めて本分野に関する記述がなされるようになり、平成7(95)年版に初めて「防衛交流」という言葉が登場した。95(平成7)年12月に策定された防衛計画の大綱においては、「より安定した安全保障環境の構築への貢献」が防衛力の役割の主要な柱として掲げられ、安全保障対話・防衛交流もその一環として位置づけられた。その後、97(同9)年には防衛交流を主管する国際企画課が防衛局に新設された。
 
63(昭和38)年、遠洋練習航海で初めてヨーロッパ方面を訪問し、ドイツのキール運河を航行する護衛艦「てるづき」。

 このような流れに沿って、各国との防衛交流が拡大、進展してきている。かつては考えられなかったような活発な交流がロシアとの間で行われており、中国との間でも交流が進んできている。また、韓国との間では、ハイレベル、実務者レベル、部隊間交流などの様々な分野において緊密な関係が築かれてきている。実務者間の意見交換は、安全保障対話・防衛交流において非常に重要な位置づけを占めるものであるが、図にあるように、1990年代に諸外国との定期的な協議が開始され、着実に対象国を拡大し、進展してきている。

 多国間の安全保障対話の枠組みについても、防衛庁が、96(同8)年以降アジア・太平洋地域防衛当局者フォーラム(東京ディフェンス・フォーラム)を主催し、防衛当局者間の率直な意見交換の場として地域の信頼醸成に貢献していることや、ASEAN地域フォーラム(ARF)への防衛当局者の参加の機会が増えていることなど、近年一層の深まりがみられる。
 また、2000年代に入ると、人道支援活動にかかわる訓練、掃海訓練、潜水艦救難訓練などの多国間共同訓練が行われるようになってきており、防衛庁も多国間共同訓練を主催するなど、この分野でも積極的な取組を進めている。
 
諸外国等との定期的な協議の実施状況


 

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