事態対処法制関連7法及び関連3条約の概要
防衛庁所管3法、内閣官房所管4法からなる事態対処法制関連7法及び関連する3条約の概要は、以下のとおりである。
【法律】
海上輸送規制法の概要
(1)目的
武力攻撃事態に際して、わが国領海又はわが国周辺の公海(海洋法に関する国際連合条約に規定する排他的経済水域を含む。以下同じ。)における外国軍用品等(武器などの外国軍用品又は外国軍隊などの構成員)の海上輸送を規制するため、防衛出動を命ぜられた海上自衛隊の部隊が実施する停船検査
4及び回航措置
5の手続並びに防衛庁に設置する外国軍用品審判所における審判の手続などを定め、もってわが国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資する
6。
(2)外国軍用品等の海上輸送の規制措置
ア 防衛庁長官は、わが国領海又はわが国周辺の公海において外国軍用品等の海上輸送を規制する必要があると認めるときは、内閣総理大臣の承認を得て、防衛出動を命ぜられた海上自衛隊の部隊に、停船検査及び回航措置を命ずることができる。内閣総理大臣の承認は、対処基本方針に記載し、国会の承認を求めなければならない。長官は、停船検査などを命ずるときは、停船検査を実施する区域(実施区域)を告示して定めなければならない。
イ 外務大臣は、関係する外国政府及び国際機関に対して、外国軍用品の範囲及び実施区域を周知させる措置をとらなければならない。
ウ 外国軍用品審判所は、外国軍用品及びそれを輸送する船舶について、
・核・化学・生物・毒素兵器(ミサイルなどの運搬手段を含む。)又は対人地雷に該当する積荷は、廃棄しなければならない。
・銃砲などの武器、弾薬などに該当する積荷は、輸送を停止しなければならない。
・軍用ヘルメット、防弾衣などの軍用の装備品、外国軍隊向けの食料などに該当する積荷は、必要があると認めるときは、輸送を停止することができる。
・当該船舶の船長などが外国軍隊の指揮監督を受けているなどの場合において、当該船舶が外国軍用品等の海上輸送を反復して行うことを防止するため必要があると認めるときは、その航行を停止することができる。
(3)外国軍用品審判所
海上自衛隊の自衛艦その他の部隊の長(艦長等)が停船検査を行った船舶にかかる事件の調査及び審判を行うことを任務とする特別の機関として、防衛庁に、臨時に、外国軍用品審判所を置く。審判官は、法律、海事などに関し知識、経験を有する部外の有識者などを任命する。
(4)停船検査と回航措置
ア 艦長等は、武力攻撃が発生した事態において実施区域を航行している船舶が外国軍用品等を輸送していることを疑うに足りる相当な理由があるときは、停船検査を行うことができる。ただし、当該船舶が軍艦などに警護されている場合は、この限りではない。
イ 船舶の停船検査後、艦長等は、当該船舶の積荷が外国軍用品であると認められた場合(一定の場合を除く。)において、当該積荷の引渡しを求めることができる。また、艦長等は、当該船舶の船長などがこの引渡しの求めに応じないときなどには、当該船長などに対し、わが国の港へ回航すべきことを命ずることができる。
ウ 艦長等は、回航船舶がわが国の港に到着したときなどにおいては、速やかに、事件を外国軍用品審判所に送致しなければならない。
エ 停船検査などの措置を命ぜられた自衛官は、警察官職務執行法第7条の規定を準用し武器を使用することができる。また、このほか艦長等が船舶の進行の停止を繰り返し命じても乗組員などがこれに応ぜずなお当該自衛官の職務の執行に抵抗し又は逃亡しようとする場合において、当該船舶の進行を停止させるために他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由があるときは、艦長等の命令により、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度において、武器を使用することができる。
(5)審判手続と審決の執行など
事件の送致を受けた外国軍用品審判所は、必要な調査を行い、審判の開始・不開始の決定を行う。審判を開始する場合は、利害関係者に意見を述べる機会を与えるなど積荷の所有者などの権利の保護に十分配意した形で外国軍用品審判所による審判手続及び審決の執行などに関し必要な規定を設ける。
捕虜取扱い法の概要
(1)目的
武力攻撃事態における捕虜などの拘束、抑留その他の取扱いに関し必要な事項を定めることにより、武力攻撃を排除するために必要な自衛隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるようにするとともに、武力攻撃事態において捕虜の待遇に関する1949年8月12日のジュネーヴ条約その他の捕虜などの取扱いにかかる国際人道法の的確な実施を確保する。
(2)基本原則
捕虜などの人道的な待遇を確保するとともに、捕虜などの生命、身体、健康及び名誉を尊重し、これらに対する侵害又は危難から常に保護することその他捕虜などの取扱いにかかわる国の責務などを定める。
(3)拘束と抑留資格認定の手続
捕虜などの拘束、資格の認定に関する手続、権限その他必要な規定を設ける。
(4)捕虜収容所における抑留と処遇
ア 三自衛隊の共同の機関として、臨時に捕虜収容所を置く。
イ 捕虜などを常に人道的に待遇するため、国際人道法の規定に従い、保健衛生、医療、宗教、衣類、食事その他必要な規定を設ける。
ウ 捕虜などの規律違反に対する懲戒制度に関し必要な規定を設ける。
(5)審査請求
捕虜などの資格認定及び抑留中の懲戒処分に対する不服申立てを審理するための捕虜資格認定等審査会を防衛庁に臨時に設置すること及びその審理手続などに関し必要な規定を設ける。
(6)抑留の終了
武力攻撃事態終了後の捕虜などの送還などに関し必要な規定を設ける。
(7)補則
ア 捕虜などの拘束及び抑留業務の目的達成に必要な範囲で、自衛官による武器の使用権限に関する規定を設ける。
イ 捕虜などが逃走した場合の再拘束の権限及びそのために必要な調査などに関する規定を設ける。
ウ その他所要の特例措置などに関する規定を設ける。
自衛隊法一部改正法の概要
(1)目的
日米物品役務相互提供協定(
ACSA)の改正に伴い、自衛隊法上必要な改正
7を実施する。
(2)物品・役務の提供の根拠規定の整備など
自衛隊が任務遂行に支障を生じない限度において、物品又は役務の提供を、次に掲げる合衆国軍隊に実施することができることとしたほか、提供に伴う手続などについて必要な規定の整備を行う。
ア 災害派遣を命じられた自衛隊の部隊などが活動している現場において、政府の要請に基づき災害応急対策のための活動を行う合衆国軍隊
イ 自衛隊が在外邦人などの輸送を行っている現場において、当該輸送と同種の活動を行う合衆国軍隊
ウ 訓練、連絡調整その他の日常的な活動のため、航空機、船舶又は車両によりわが国国内の自衛隊施設に到着して一時的に滞在する合衆国軍隊
8
国民保護法の概要
第1 総則
(1)通則
ア 目的
武力攻撃事態等において武力攻撃から国民の生命、身体及び財産を保護し、並びに武力攻撃の国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることの重要性にかんがみ、これらの事項に関し、国、地方公共団体などの責務、国民の協力、住民の避難に関する措置、避難住民などの救援に関する措置、武力攻撃災害
9への対処に関する措置その他の必要な事項を定めることにより、国全体として万全の態勢を整備し、もって武力攻撃事態等における国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施することを目的とする。
イ 国、地方公共団体などの責務と国民の協力
1)国は、国民の安全を確保するため、武力攻撃事態等に備えて、あらかじめ、国民の保護のための措置の実施に関する基本的な方針を定めるとともに、武力攻撃事態等においては、その組織及び機能のすべてを挙げて国民の保護のための措置を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体などが実施する国民の保護のための措置を的確かつ迅速に支援し、並びに国費による適切な措置を講ずることなどにより、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する。
2)地方公共団体は、国の方針に基づき、国民の保護のための措置を実施するとともに、関係機関が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する責務を有する。
3)国、地方公共団体並びに指定公共機関及び指定地方公共機関は、国民の保護のための措置を実施するに当たっては、相互に連携協力し、その的確かつ迅速な実施に万全を期さなければならない。
4)国民は、この法律の規定により国民の保護のための措置の実施に関し協力を要請されたときは、必要な協力をするよう努めるものとする。
ウ 配慮事項
1)国民の保護のための措置を実施するに当たっては、国民の自由と権利は尊重されなければならず、これに制限が加えられるときであっても、その制限は必要最小限のものに限られ、かつ、公正かつ適正な手続の下に行われるものとし、いやしくも国民を差別的に取り扱い、並びに思想及び良心の自由並びに表現の自由を侵すものであってはならない。
2)国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置の実施に伴う損失補償、不服申立て又は訴訟その他の国民の権利利益の救済にかかる手続について、できる限り迅速に処理するよう努めなければならない。
3)国及び地方公共団体は、日本赤十字社の自主性を尊重するとともに、放送事業者である指定公共機関などの言論その他表現の自由に特に配慮しなければならない。
4)国及び地方公共団体は、国民の保護のための措置に関し、国民に対し、正確な情報を、適時に、かつ、適切な方法で提供しなければならない。
5)国民の保護のための措置を実施するに当たっては、高齢者、障害者などに留意するとともに、国際人道法の的確な実施を確保しなければならない。
(2)国、都道府県及び市町村による国民の保護のための措置の実施
ア 国は、警報の発令、救援の指示、武力攻撃災害への対処に関する措置にかかる指示などを実施しなければならない。
イ 都道府県知事は、住民に対する避難の指示、救援の実施、武力攻撃災害の防除及び軽減などを実施しなければならない。
ウ 市町村長は、避難住民の誘導、警報の伝達、救援の補助、退避の指示などを実施しなければならない。
エ 都道府県知事は、国民の保護のための措置(治安の維持にかかるものを除く。)を円滑に実施するため必要があると認めるときは、防衛庁長官に対し、自衛隊の部隊などの派遣を要請することができる。対策本部長は、当該要請が行われない場合において、緊急の必要があると認めるときは、防衛庁長官に対し、自衛隊の部隊などの派遣を求めることができる(要請又は求めがあった場合の自衛隊の部隊などの派遣については第9(1)参照。)。また、市町村長は、都道府県知事に対し、自衛隊の部隊などの派遣を要請するよう求めることができるほか、当該求めができないときは、その旨及び国民の保護のための措置を円滑に実施するため必要があると認める事項を防衛庁長官に連絡することができる。この場合、防衛庁長官は、速やかに、その内容を対策本部長に報告しなければならない。
(3)国民の保護のための措置の実施体制
ア 対策本部は、指定行政機関、地方公共団体及び指定公共機関が実施する国民の保護のための措置を総合的に推進する。対策本部に、対策本部の事務の一部を行う組織として、武力攻撃事態等現地対策本部を置くことができる。
イ 閣議決定で指定を受けた地方公共団体の長は、都道府県国民保護対策本部又は市町村国民保護対策本部を設置しなければならない(本部長である地方公共団体の長に総合調整権を付与)。地方公共団体の長は、内閣総理大臣に指定を行うよう要請することができる。また、地方公共団体の長などは、本部の設置の有無にかかわらず、国民の保護のための措置を実施することができる。
(4)国民の保護に関する国の基本指針
政府は、武力攻撃事態等に備えて、国民の保護のための措置の実施に関し、あらかじめ、国民の保護に関する基本指針(基本指針)を定める。この場合、内閣総理大臣は、国会に報告しなければならない。
(5)国民の保護に関する計画
基本指針などに基づき、指定行政機関の長、地方公共団体の長、指定公共機関などは、国民の保護に関する計画又は国民の保護に関する業務計画を作成しなければならない。(指定行政機関の長及び都道府県知事にあっては内閣総理大臣に、市町村長にあっては都道府県知事に協議しなければならない。指定公共機関は内閣総理大臣に、指定地方公共機関は都道府県知事に報告しなければならない。この場合、内閣総理大臣は指定公共機関に対し、都道府県知事は指定地方公共機関に対し、必要な助言をすることができる。)
(6)都道府県国民保護協議会と市町村国民保護協議会
国民の保護のための措置に関し広く住民の意見を求め、国民の保護のための措置に関する施策を総合的に推進するため、都道府県及び市町村に、関係機関(自衛隊を含む。)の代表者などから各首長が任命する者よりなる国民保護協議会を置く。都道府県知事及び市町村長は、国民の保護に関する計画を作成し又は変更するときは、協議会に諮問しなければならない。
第2 住民の避難に関する措置
(1)対策本部長は、武力攻撃から国民の生命、身体又は財産を保護するため緊急の必要があると認めるときは、警報を発令しなければならない。
(2)対策本部長は、総務大臣を経由して、避難元及び避難先の都道府県知事に避難措置を指示するものとする。
(3)都道府県知事は、市町村長を通じ、住民に対し、直ちに、避難すべき旨を指示しなければならない(避難先、避難経路などを明示)。
(4)市町村長は、直ちに、避難実施要領を定め、市町村の職員並びに消防長及び消防団長を指揮して、避難住民を誘導しなければならない。また、必要があると認めるときは、警察署長、国民の保護のための措置を実施するため派遣を命ぜられた自衛隊の部隊などの長などに、避難住民の誘導を行うよう要請することができる。
(5)警察官、自衛官などが避難住民を誘導しようとするときは、警察署長、自衛隊の部隊の長などは、あらかじめ関係市町村長と協議し、避難実施要領に沿って避難住民の誘導が円滑に行われるよう必要な措置を講じなければならない。
(6)内閣総理大臣は、避難の指示、避難住民の受入れのための措置又は避難住民の誘導に関する措置が行われない場合などにおいて、是正措置を講ずる。
第3 避難住民などの救援に関する措置
(1)対策本部長の救援の指示を受けた都道府県知事は、避難住民及び被災者の救援(収容施設の供与、食品・生活必需品の給与、医療の提供など)を行わなければならない。
(2)都道府県知事は、救援を行うため、1)医薬品、食品などの物資を取扱う業者などに対し、当該物資の保管を命令し、又は売渡しを要請、正当な理由なく拒否したときは収用、2)収容施設又は臨時の医療施設を開設するため、同意を得て、土地、家屋又は物資を使用し、正当な理由なく拒否したときは同意を得ないで使用、3)医療関係者に医療を行うよう要請し、正当な理由なく拒否したときは医療の提供を指示することができる。
(3)内閣総理大臣は、救援が行われない場合などにおいて、是正措置を講ずる。
(4)地方公共団体の長は住民の安否情報の収集、整理に努める。総務大臣及び地方公共団体の長は、安否情報の照会があったときは、速やかに回答しなければならない。
第4 武力攻撃災害への対処に関する措置
(1)国は、武力攻撃災害の防除及び軽減のため、自ら必要な措置を講ずるとともに、地方公共団体と協力して、武力攻撃災害への対処に関する措置を的確かつ迅速に実施しなければならない。
(2)都道府県公安委員会などは、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため、都道府県知事から要請があったとき又は事態に照らして特に必要があると認めるときは、生活関連等施設
10の安全を確保するため立入制限区域を指定することができる。内閣総理大臣は、当該施設及びその周辺地域の安全の確保が特に必要であると認めるときは、関係大臣を指揮し、危険の防除、周辺住民の避難その他当該施設の安全の確保に関し必要な措置を講じさせることができる。
(3)指定行政機関の長などは、武力攻撃災害の発生又はその拡大を防止するため緊急の必要があると認めるときは、危険物質等
11の取扱者、原子力事業者などに対し、施設の使用の停止などを命ずることができる。
(4)内閣総理大臣は、放射性物質などによる汚染が生じたことにより、人の生命、身体又は財産に対する危険が生ずるおそれがあると認めるときは、関係大臣を指揮し、汚染原因となる物の撤去、汚染の除去、被災者の救難及び救助その他必要な措置を講じさせなければならない。
(5)市町村長は、武力攻撃災害が発生し又はまさに発生しようとしている場合において、当該武力攻撃災害による住民の生命又は身体に対する危険を防止するため特に必要があると認めるときは、警戒区域を設定し、当該警戒区域への立入りを制限し、若しくは禁止し又は当該警戒区域からの退去を命ずることができる。市町村長の職権を行うことができる者がその場にいない場合に限り、国民の保護のための措置を実施する出動などを命ぜられた自衛官も同様の措置を講ずることができる。
第5 その他
(1)指定行政機関の長、地方公共団体の長などは、国民生活との関連性が高い物資などの価格の高騰又は供給不足が生じ、又は生ずるおそれがあるときは、価格を安定させるための措置などを適切に講じなければならない。
(2)指定行政機関の長などは、避難、救援などに必要な物資及び資材の備蓄などを行わなければならない。
(3)都道府県知事は、避難又は救援のため、あらかじめ避難施設を指定しなければならない。
(4)都道府県公安委員会は、国民の保護のための措置が的確かつ迅速に実施されるようにするため緊急の必要があると認めるときは、緊急通行車両以外の車両の通行を禁止し又は制限することができる。
(5)指定行政機関の長などは、それぞれ又は共同して訓練を実施する。この場合においては、災害対策基本法に基づく防災訓練との有機的な連携に配慮する。
(6)指定行政機関の長又は都道府県知事は、医療関係者を識別するための赤十字標章などを交付又は使用許可する。また、国民の保護のための措置を行う者を識別するための国際的な特殊標章を交付又は使用許可する。
第6 財政上の措置など
(1)国及び地方公共団体は、この法律の規定による収用その他の処分を受けた者に対し、損失を補償するとともに、要請を受けて協力した者が、死亡、負傷などしたときは、損害を補償しなければならない。
(2)国は、総合調整又は内閣総理大臣の指示に従った結果、損失を受けた都道府県などの損失を補てんしなければならない。
(3)国が地方公共団体と共同して実施する訓練については、地方公共団体の訓練にかかる費用は、原則として国の負担とする。
第7 緊急対処事態に対処するための措置
(1)国は、国民の安全を確保するため、緊急対処事態(事態対処法に規定する緊急対処事態をいう。)においては、その組織及び機能のすべてを挙げて自ら緊急対処保護措置
12を的確かつ迅速に実施し、又は地方公共団体及び指定公共機関が実施する緊急対処保護措置を的確かつ迅速に支援し、並びに緊急対処保護措置に関し国費による適切な措置を講ずることなどにより、国全体として万全の態勢を整備する責務を有する。
(2)地方公共団体は、国の対処方針に基づき、緊急対処保護措置を実施するとともに、関係機関が実施する緊急対処保護措置を総合的に推進する責務を有する。
(3)指定行政機関の長などは、緊急対処事態対処方針が定められたときは、国民の保護に関する計画で定めるところにより、その所掌事務にかかる緊急対処保護措置を実施しなければならない。
(4)避難、救援、武力攻撃災害への対処、財政上の措置などに関する規定は、原則として緊急対処事態及び緊急対処保護措置について準用する。
第8 罰則
原子炉などによる危険防止のための措置命令に従わなかった者、物資の保管命令に従わなかった者、交通規制、立入制限などに従わなかった者などには、懲役若しくは罰金、又はこれを併科するなどの罰則規定を設ける。
第9 附則
国民保護法の整備に伴い、必要に応じ、既存の法律についても、附則において所要の改正が行われる。自衛隊法については、新たな自衛隊の行動として、「国民保護等派遣」
13を新設することを中心とした改正を行う。
国民保護等派遣などに関する規定の概要は以下のとおり。
(1)防衛庁長官は、都道府県知事からの要請を受けた場合において、事態やむを得ないと認めるとき、又は対策本部長から求めがあったときは、内閣総理大臣の承認を得て、国民の保護のための措置の実施のため部隊などを派遣できることとする。
(2)国民保護等派遣を命ぜられた自衛官は、警察官などがその場にいない場合に限り、警職法の避難等の措置、犯罪の予防及び制止、立入、武器の使用の権限を行使できる。
(3)国民の保護のための措置の実施を命ぜられた自衛官は、市町村長などがいない場合に限り、退避の指示、応急公用負担、警戒区域の設定、住民などに対する協力要請などの権限が国民保護法により付与され、行使できる。
(4)その他、国民保護等派遣を行う場合についても、必要に応じ特別の部隊を臨時に編成することができることや即応予備自衛官及び予備自衛官に招集命令を発することができることなど、所要の改正を行う。
(5)緊急対処事態にかかる措置に関しても同様の規定を整備する。
米軍行動関連措置法の概要
(1)目的
武力攻撃事態等において、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要なアメリカ合衆国の軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の当該行動に伴いわが国が実施する措置について定めることにより、わが国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に資する。
(2)定義
ア 「合衆国軍隊」とは、武力攻撃事態等において、日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動を実施しているアメリカ合衆国の軍隊をいう。
イ 「行動関連措置」とは、武力攻撃事態等において、合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に実施されるための措置その他の合衆国軍隊の行動に伴いわが国が実施する措置であって、対処基本方針に基づき、指定行政機関が実施するものをいう。
(3)政府の責務など
ア 政府は、武力攻撃事態等においては、的確かつ迅速に行動関連措置を実施し、わが国の平和と独立並びに国及び国民の安全の確保に努めるものとする。
イ 行動関連措置は、武力攻撃を排除する目的の範囲内において、事態に応じ合理的に必要と判断される限度を超えるものであってはならない。
ウ 地方公共団体及び事業者は、指定行政機関から行動関連措置に関し協力を要請されたときは、その要請に応じるよう努めるものとする。
エ 政府は、アの責務を果たすため、武力攻撃事態等の状況の認識及び武力攻撃事態等への対処に関し、日米安保条約に基づき、アメリカ合衆国政府と常に緊密な連絡を保つよう努めるものとする。
(4)情報の提供
政府は、武力攻撃事態等においては、国民に対し、合衆国軍隊の行動にかかる地域その他の合衆国軍隊の行動に関する状況及び行動関連措置の実施状況について、必要な情報の提供を適切に行うものとする。
(5)地方公共団体との連絡調整
政府は、合衆国軍隊の行動又は行動関連措置の実施が地方公共団体の実施する対処措置に影響を及ぼすおそれがあるときは、関係する地方公共団体との連絡調整を行うものとする。
(6)合衆国軍隊の行為にかかる通知
防衛庁長官は、武力攻撃事態(自衛隊法第76条第1項の規定による防衛出動命令があった場合に限る。(11)において、同じ。)において、合衆国軍隊から、応急措置としての道路に関する工事についての連絡を受けたときは、自衛隊法の関連する規定の例に準じて、関係機関に通知するものとする。
(7)自衛隊による物品及び役務の提供
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ア 内閣総理大臣又はその委任を受けた者は、自衛隊に属する物品の提供を実施することができる。
イ 防衛出動を命ぜられた自衛隊は、役務の提供を実施することができる。
ウ イの場合のほか、防衛庁長官は、内閣総理大臣の承認を得て、防衛庁本庁の機関又は自衛隊の部隊などに、役務の提供の実施を命ずることができる。
エ 物品及び役務の提供として行う業務は、補給(武器の提供を行う補給を除く。)、輸送、修理若しくは整備、医療、通信、空港若しくは港湾に関する業務、基地に関する業務、宿泊、保管、施設の利用又は訓練に関する業務(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。)とする。
(8)指定行政機関による行動関連措置の実施
(6)及び(7)に定めるもののほか、指定行政機関は、法令及び対処基本方針に基づき、必要な行動関連措置を実施するものとする。
(9)武器の使用
(7)ウの役務の提供の実施を命ぜられた自衛隊の部隊などの自衛官は、その職務を行うに際し、自己又は自己と共に当該職務に従事する自衛隊員若しくはその職務を行うに伴い自己の管理の下に入った者の生命又は身体の防護のためやむを得ない必要があると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第36条又は第37条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
(10)行動関連措置に関する指針の作成
ア 対策本部長は、行動関連措置を的確かつ迅速に実施するため、対処基本方針に基づき、行動関連措置に関する指針を定めることができる。
イ 指定行政機関は、アの指針が定められたときは、当該指針に基づき、必要な行動関連措置を適切に実施しなければならない。
(11)損失の補償
国は、武力攻撃事態において、合衆国軍隊の次の行為により損失を受けた者がある場合においては、自衛隊法などの規定の例により、その損失を補償しなければならない。
ア 通行に支障がある場所をう回するために行う緊急通行
イ 通行の妨害となっている車両などの物件の破損
(12)土地の使用など
ア 内閣総理大臣は、武力攻撃事態において、合衆国軍隊の用に供するため土地又は家屋を緊急に必要とする場合において、その土地などを合衆国軍隊の用に供することが適正かつ合理的であり、かつ、武力攻撃を排除する上で不可欠であると認めるときは、その告示して定めた地域内に限り、期間を定めて当該土地などを使用することができる。
イ 土地の使用などを行う場合には、原則として事前に、公用令書を交付して行わなければならない。
ウ 国は、土地の使用などによる損失を補償しなければならない。
エ 土地の使用などのための立入検査を拒んだ者などについての罰則規定(20万円以下の罰金)を設ける。
特定公共施設利用法の概要
(1)目的
武力攻撃事態等における特定公共施設等(港湾施設、飛行場施設、道路、海域、空域及び電波)の利用に関し、指針の策定その他の必要な事項を定めることにより、その総合的な調整を図り、もって対処措置等(1)武力攻撃を排除するために必要な自衛隊が実施する武力の行使、部隊などの展開その他の行動、2) 1)に掲げる自衛隊の行動及び合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置、3)合衆国軍隊が実施する日米安保条約に従って武力攻撃を排除するために必要な行動及び4)国民の保護のための措置)の的確かつ迅速な実施を図る。
(2)港湾施設・飛行場施設の利用
ア 対策本部長は、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、港湾施設又は飛行場施設の利用に関する指針を定めることができる。指針には、特定の者の優先的な利用を確保する必要がある対処措置等の概要及びその期間など基本的な事項について定めるものとする。
イ 対策本部長は、指針を定める場合には、関係する地方公共団体の長などの意見を聴かなければならない(以下、道路、海域、空域及び電波の利用に関する指針の策定において同じ)。
ウ 対策本部長は、特定の港湾施設又は飛行場施設に関し、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図る上で特定の者の優先的な利用を確保することが特に必要であると認めるときは、指針に基づき、当該施設の名称、特定の者の優先的な利用を確保する必要がある対処措置等の内容及びその期間その他の具体的な事項を明らかにして、当該施設の管理者に対し、当該施設の全部又は一部を特定の者に優先的に利用させるよう要請することができる。
エ ウの要請を受けた施設の管理者は、当該要請に関し、対策本部長に対して意見を申し出ることができる。
オ 港湾施設又は飛行場施設の管理者は、(3)の要請に基づきその管理する特定の港湾施設又は飛行場施設を利用させる場合において、必要があると認めるときは、当該施設の利用にかかる許可その他の処分を変更し、又は取り消すことができる。
カ 港湾施設又は飛行場施設の管理者は、当該施設の利用にかかる許可その他の処分を変更し、又は取り消した場合において、現に停泊中の船舶又は駐機中の航空機の移動が必要であると認めるときは、当該船舶の船長又は航空機の機長などに対し、当該船舶又は航空機の移動を命ずることができる。
キ 内閣総理大臣は、ウの要請に基づく所要の利用が確保されない場合において、国民の生命、身体若しくは財産の保護又は武力攻撃の排除を図るため特に必要があると認めるときは、施設の管理者に対し、当該所要の利用を確保すべきことを指示することができる。内閣総理大臣は、指示を行ってもなお所要の利用が確保されないなどの場合、国土交通大臣を指揮し、処分の変更又は取消しなどを行わせることができる。この場合において、内閣総理大臣は、国土交通大臣を指揮し、カに規定されている措置を命じさせることができる。
ク 国は、オ及びキの規定により港湾施設又は飛行場施設の利用にかかる許可その他の処分の変更などが行われたときは、当該処分により通常生ずべき損失を補償するものとする。
(3)道路の利用
対策本部長は、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、道路の利用に関する指針を定めることができる。
(4)海域・空域の利用
ア 対策本部長は、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、海域又は空域の利用に関する指針を定めることができる。
イ 海上保安庁長官は、海域の利用に関する指針に基づき、船舶の航行の安全を確保するため、特定の海域に関し、範囲又は期間を定めて、船舶の航行を制限することができる。
ウ 国土交通大臣は、空域の利用に関する指針に基づき、航空機の航行の安全を確保するため、航空法に定める飛行禁止区域の設定などの措置を適切に実施しなければならない。
エ イの海上保安庁長官の処分の違反となるような行為をした者に対する罰則を定める。
(5)電波の利用
ア 対策本部長は、対処措置等の的確かつ迅速な実施を図るため、電波の利用に関する指針を定めることができる。
イ 総務大臣は、無線局が行う(ア)の無線通信のうち特定のものを、他の無線局が行う(ア)又は(イ)に掲げる無線通信に優先させるため特に必要があると認めるときは、指針に基づき、当該特定の無線通信を行う無線局について、免許の条件の変更その他当該無線局の運用に関し必要な措置を講ずることができる。
(ア)1)自衛隊が実施する武力の行使、部隊などの展開その他の行動、2)自衛隊の行動及び合衆国軍隊の行動が円滑かつ効果的に行われるために実施する物品、施設又は役務の提供その他の措置、3)国民の保護のための措置を実施するために必要な無線通信
(イ)電波法第102条の2第1項各号に掲げる無線通信((ア)の無線通信を除く。)
15
ウ イの(ア)に掲げる無線通信を行う無線局は、イの総務大臣の措置に基づき無線通信を行う場合を除き、イの(ア)及び(イ)に掲げる無線通信を行う他の無線局に対し、その運用を阻害するような混信その他の妨害を与えないように運用しなければならない。
(6)緊急対処事態における特定公共施設等の利用
政府は、緊急対処事態においては、これに的確かつ迅速に対処し、特定公共施設等の円滑かつ効果的な利用を確保するため、特定公共施設等の利用に関する指針の策定その他の必要な措置を適切に講ずるものとする。
国際人道法違反処罰法の概要
(1)目的
国際的な武力紛争において適用される国際人道法に規定する重大な違反行為を処罰することにより、刑法などによる処罰と相まって、これらの国際人道法の的確な実施の確保に資する。
(2)重要な文化財を破壊する罪
武力紛争において、正当な理由がないのに、その戦闘行為として、歴史的記念物、芸術品又は礼拝所のうち、重要な文化財として政令で定めるもの
16を破壊した者は、7年以下の懲役に処する旨の罰則規定を設ける。
(3)捕虜の送還を遅延させる罪
捕虜の送還に関する権限を有する者が、捕虜の抑留の原因となった武力紛争が終了した場合などにおいて、正当な理由がないのに、当該武力紛争の相手国への捕虜の送還を遅延させたときは、5年以下の懲役に処する旨の罰則規定を設ける。
(4)占領地域に移送する罪
占領に関する措置の一環としてその国が占領した地域(占領地域)に入植させる目的で、当該国の国籍を有する者又は当該国の領域内に住所若しくは居所を有する者を当該占領地域に移送した者は、5年以下の懲役に処する旨の罰則規定を設ける。
(5)文民の出国などを妨げる罪
出国などの管理に関する権限を有する者が、正当な理由がないのに、文民の出国などを妨げたときは、3年以下の懲役に処する旨の罰則規定を設ける。
(6)国外犯
(2)から(5)までの罪及びジュネーヴ諸条約が規定している「重大な違反行為」について国外犯の処罰を可能とするための所要の規定を設ける。
【条約】
日米物品役務相互提供協定改正協定の概要
自衛隊と合衆国軍隊との間の緊密な協力関係を促進し、もって日米安保体制の円滑かつ効果的な運用及び国連を中心とする国際平和のための努力などに寄与することを目的として、現行の日米物品役務相互提供協定の適用範囲を拡大したもの。具体的には、以下の活動にも適用し得るよう規定している。
(1)武力攻撃事態又は武力攻撃予測事態に際して、わが国に対する武力攻撃を排除するために必要な活動。
(2)国際の平和及び安全に寄与するための国際社会の努力の促進、大規模災害への対処その他の目的のための活動。
ジュネーヴ諸条約第1追加議定書
17の概要
国際的な武力紛争について、1949年のジュネーヴ諸条約の内容を補完・拡充するものとして77(昭和52)年に作成されたもの。具体的には、以下の内容を規定している。
(1)ジュネーヴ諸条約及び本追加議定書を締約国間の武力紛争や占領に加え、いわゆる民族解放戦争にも適用すること。
(2)傷病者、医療組織などに与えられる保護を軍人・軍用物に限定せずに文民・民用物に拡大すること。
(3)戦闘の方法及び手段の規制(無用の苦痛を与える兵器の使用禁止など)に関すること。
(4)敵対行為による影響から住民を保護・援助するための「文民保護」の任務に対する保護に関すること。
(5)国際的な武力紛争に際して行われる非人道的な行為を処罰するため、「重大な違反行為」を追加・拡大すること、など。
ジュネーヴ諸条約第2追加議定書
18の概要
非国際的な武力紛争(いわゆる内乱など)について、ジュネーヴ諸条約共通第3条の内容を補完、拡充するものとして77(昭和52)年に作成されたもの。具体的には、以下の内容を規定している。
(1)敵対行為に直接参加していない者への人道的待遇や、傷病者、医療要員などの保護に関すること。
(2)軍事行動から生ずる危険から住民を保護するため、住民に対する攻撃の禁止や、住民の生存に不可欠な物(食糧など)などに対する保護に関すること、など。
12)緊急対処事態対処方針が定められてから廃止されるまでの間に、指定行政機関、地方公共団体又は指定公共機関若しくは指定地方公共機関が実施する緊急対処措置のうち、緊急対処事態の推移に応じて実施する警報の発令、避難の指示、被災者の救助、施設及び設備の応急の復旧その他これらの者が当該措置に関し国民の保護のための措置に準じて法律の規定に基づいて実施する措置をいう。
13)1)自衛隊は、武力攻撃予測事態や防衛出動の撤収後の武力攻撃事態などにおいて、国民保護等派遣により、住民の避難誘導に関する措置、避難住民などの救援に関する措置、武力攻撃災害への対処に関する措置、応急の復旧に関する措置などを実施することが想定される。
なお、防衛出動などを命ぜられている場合などにおいては、改めて国民保護等派遣を命ずることなく、防衛出動などの一環として上記のような措置を実施することとなる。
2)武力攻撃事態等においては、自衛隊は、速やかに武力攻撃を排除し、国民への被害を局限化することがその主たる任務であり、この自衛隊しか実施することのできない任務の遂行に万全を期すことは当然である。
このため、自衛隊の持てる能力の集中が可能な自然災害のみへの対応の場合とは異なって、避難住民の誘導などに割くことのできる自衛隊の能力は自ずと限界があり、自衛隊は、その武力攻撃を排除するという主たる任務の遂行に支障のない範囲内で、可能な限り、国民の保護のための措置を実施することとなる。