防衛力の中心的な役割が「わが国の防衛」にあることは言うまでもない。しかし、近年の内外諸情勢の変化や国際社会においてわが国が置かれている立場を踏まえ、社会の高度化や多様化の中で大きな影響をもたらし得る「大規模災害など各種の事態への対応」や「より安定した安全保障環境の構築への貢献」についても、適時適切にその役割を担うべきであり、この３つを防衛力が果たすべき役割の主要な柱とする。
（1）わが国の防衛
周辺諸国の軍備に配意しつつ、わが国の地理的特性に応じて必要な各種の機能を備えた適切な規模の防衛力を保有し、これを最も効果的に運用し得る態勢を築いてわが国の防衛意思を明示することにより、日米安保体制とあいまって、侵略の未然防止に努める。また、核兵器の脅威に対しては、核軍縮の国際的努力の中で積極的に役割を果たしつつ、米国の核抑止力に依存する。
次に、間接侵略事態又は侵略につながるおそれのある軍事力による不法行為が発生した場合は、これに即応して行動し、早期に事態を収拾する。さらに、直接侵略事態が発生した場合は、これに即応して行動しつつ、米国との適切な協力の下、防衛力の総合的・有機的な運用を図ることにより、極力早期にこれを排除する。
（2）大規模災害など各種の事態への対応
大規模な自然災害や、テロリズムにより引き起こされた特殊な災害その他の人命又は財産の保護を必要とする各種の事態に際し、関係機関から自衛隊に対応が要請された場合などに、関係機関との緊密な協力の下、適時適切に救援活動などを行う。
また、周辺地域でわが国の平和と安全に重要な影響を与えるような事態が発生した場合は、憲法と関係法令に従い、必要に応じて国連の活動を適切に支持しつつ、日米安保体制の円滑かつ効果的な運用を図ることなどで適切に対応する。
（3）より安定した安全保障環境の構築への貢献
国際平和協力業務の実施を通じた国際平和のための努力や国際緊急援助活動の実施を通じた国際協力の推進に寄与する。また、安全保障対話・防衛交流を引き続き推進し、周辺諸国を含む関係諸国との信頼関係の増進を図る。さらに、大量破壊兵器やミサイルなどの拡散の防止、地雷など通常兵器の規制や管理などのため、国連を含む国際機関などが行う軍備管理・軍縮分野の諸活動に協力する。