第6章 今後の防衛庁・自衛隊のあり方 

3 わが国として検討すべき事項など

 米国が現在取り組んでいる様々なBMDシステムのうち、地上配備型のPAC-31は、既に迎撃試験で多くの成功を収め、現在は量産へ移行している。また、海上配備型システムについても、最近の試験においては4回中3回迎撃に成功している。このことから、ミサイル防衛システムの技術的実現可能性は高まっているといえる。
 米国は、このような試験結果などを受けて、昨年12月17日、2004(平成16)年から05(同17)年にかけてミサイル防衛システムの初期配備を行うことを決定した。具体的には、GMD、SMD、PAC-3を配備するほか、既存の早期警戒衛星の利用や既に地上やイージス艦に配備されている各種のレーダーの改良の推進である2
 米国は今後ともさらに研究開発を推進していくこととしており、同盟国、友好国に対しても、協力を呼びかけている3
 本年5月23日の日米首脳会談では、小泉総理より、ミサイル防衛は日本の防衛の極めて重要な課題であり、米国とともに取り組んでいくことは、日米同盟の信頼性の強化にも資するので、わが国としても検討を加速していく旨を述べ、両首脳はミサイル防衛に関する協力を含めていくことを合意した。
 わが国としても、現在実施している日米共同技術研究を引き続き推進するとともに、わが国の安全保障環境の変化やBMDに関する技術的進歩などを踏まえつつ、わが国のBMDのあり方についての研究・検討を加速化させていくことが必要である。このような認識の下、現在、防衛庁では、次の点を念頭に置き、本格的な検討を行っている。
1) 各装備システムの能力や今後の開発の見通しといった技術的実現可能性
2) 経費面も含めてわが国に最適なシステムの構成とその運用構想
3) 運用上・法制上、想定し得る具体的な問題点
4) 武器輸出三原則との関係
5) 周辺諸国に与える影響
6) 日米防衛協力のあり方



 
1)ペトリオットは、主に航空機を対象とする地対空ミサイルシステムとして米国で開発され、逐次、改良・改善(PAC-1、PAC-2)を通じて能力向上が行われている。現在、米国ではミサイル防衛計画の一環としてPAC-3の開発配備が進められている。
 わが国が保有するPAC-2は、射程500km〜600km級の弾道ミサイルに対する極めて限定的な対処能力しか有していない。

 
2)米国はミサイル防衛システムの研究開発や配備については、その時々に技術的に可能なシステムを配備しつつ、漸次能力向上を図っていくこととしており、これを進化的らせん型(スパイラル)開発手法と称している。

 
3)例えば、英国とデンマークに対しては早期警戒レーダーの改善を要請しており、英国は既に要請の受入を表明している。


 

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