第5章 国民と防衛 


隊員の現場の姿 武器弾薬員としての誇りと自覚

第6航空団 2等空曹  大津 泰雄(29才)

 石川県にある航空自衛隊小松基地では、日本海における防空任務を担い、各種任務遂行のための訓練を行うことで即応体制の維持に努めています。
 私は「武器弾薬員」と呼ばれる特技員で、航空機の構成品や武器の整備を行い、また、戦闘機に弾薬類の搭載を行うことを職務としています。最近では、新型ミサイルが開発されたり、航空機の近代化も行われているため、今まで以上に高度な知識が必要となり、隊員一人ひとりが自らの能力向上に日夜努力する毎日です。
 そのような私は日頃自衛隊という組織のなかで最も大切なものは「信頼関係」と考えています。どのようなものでもそれを取り扱う者同士が信頼できなければ、安全を確保することなどできません。ましてや取り扱うものが兵器となれば尚更です。また、兵器が危険を伴うものである以上、それを取り扱う隊員の安全意識と責任感が必要不可欠なものと言えます。民間企業は「営利」「環境」「福祉」など人が生活するうえで大切なものを生み出し、また、流行などに左右されてしまうことも度々ですが、国を防衛するという行為には「営利」も「流行」もありません。
 武器弾薬という一般社会では聞き慣れない危険を伴う仕事をしているので気疲れもしますが、それ以上の充実感があるのも事実です。安全を確保しつつ危険な任務を遂行するパイロットを滑走路横のアーミング場で最後に見送り、また、訓練を終えて基地に戻ってくる時に最初に出迎えることは、武器弾薬員の職務でありやり甲斐です。また、実際に防衛の一端を担っていることを実感できるときでもあります。しかし、辛いこともあります。それは、訓練中のパイロットの事故に遭遇した時です。最悪の場合は殉職の知らせもあります。そういう場合、我々が悲しみを乗り越えなければ、殉職したパイロットや残された家族に申し訳ないし、また、この乗り越えようとする力が団結につながり、ひいては強い組織になると思います。このことを後輩に伝えることが私たちがこれまで受けてきたことに対する組織への恩返しとなり、発展寄与し、また、わが国の「存続」「繁栄」につながるものと思います。
 自衛官として、ここ6空団での勤務を通じて私は「自由」や「平和」のあるべき姿を知りました。それらは与えられるものではなく勝ち取り、さらに維持することが大切であることを学びました。そして自由で平和な日本を後世に受け継ぎたいと思います。

 
F-15要撃戦闘機への弾薬搭載訓練を行っている筆者(本年5月 石川県小松基地)


 

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