第5章 国民と防衛 

自衛官の教育

(1)教育の現状
ア 自衛官教育の概要
 部隊を構成する自衛官個々の能力を高めることは、部隊の任務遂行にとって不可欠な要素である。このため、自衛官は、自衛隊の学校や教育部隊などで、職務の遂行に必要な資質を養い、知識・技能の修得のための教育を受けている。教育では、使命感の育成と徳操の涵養(かんよう)1、装備の近代化に対応する知識と技能の修得、体力・気力の維持向上、統率力ある幹部の養成を重視している。
 採用後、自衛官は、学校や教育部隊などで基礎的な教育を受け、自衛官として必要な資質を養成し、基礎的な知識・技能を修得する。その後、部隊などに配置された後も、それぞれの階級、職務に必要な資質を養い、知識・技能を向上させるため、段階的かつ体系的な教育2が行われる。

 
普通科幹部上級課程の図上演習において作戦会議を行っている陸自幹部学生(本年5月 静岡県富士学校)

イ 自衛隊の教育の特性
(ア)入隊直後の基礎教育の徹底
 入隊後、例えば任期制自衛官は3〜5か月、幹部候補生は5〜12か月の比較的長期にわたり、自衛隊の学校や教育部隊などで基礎教育を受ける。

 
分隊ごとに整列して教務講堂に向かう海自幹部候補生(本年5月 海自幹部候補生学校)

(イ)在職期間全体を通じた教育
 自衛隊では、在職期間全体を通じ、階級などに応じた段階的な教育の機会が与えられる。
(ウ)資質及び知識・技能の養成を目的とした教育
 自衛官教育では、知識・技能の修得だけでなく、使命感、徳操など、資質の養成を目的とした教育を行っている。

 
幹部高級課程において研究成果を発表中の空自幹部学生(本年3月 空自幹部学校)

(エ)多種多様な教育
 自衛官は、専門の知識・技能をさらに高める必要がある場合や、それらを自衛隊内で修得するのが困難な場合など、海外留学を含め、部外教育機関、研究所3などで教育を受けており、その履修は、幅広い分野に及ぶ。

(2)時代に適合した教育のための取組
 近年、自衛隊では、国際社会での活動の機会や諸外国とのかかわりの増大にかんがみ、前述の教育に加え、英語、ロシア語、中国語、韓国語などの外国語教育を適切に行うとともに、外国に対する理解を深めるため、留学生を受け入れている4。また、国際平和協力業務のための教育訓練の一つとして、国連平和維持活動への参加実績が多い北欧諸国などで実施される研修に幹部自衛官を派遣している。
 さらに、装備品の近代化などに伴い、自衛官は、幅広い分野の高度な知識や技能が要求されるようになっており、そうした知識・技能を修得するための教育も行っている。また、中堅幹部に対して、自衛隊以外の人々との交流を通じて幅広い視野を広げるため、国内企業で1年程度の研修などを行っている。
 こうした教育や研修は、自衛官を受け入れている大学院や大学、専門学校、企業などの理解や協力の下に行われており、今後も隊員の資質と知識・技能をさらに高めるために、部外の教育機関や企業から積極的な協力が得られるよう努力している。

 
留学生受け入れ施策の概要



 
1)この教育は、自衛隊法第52条の「服務の本旨」に基づき、自衛官の基本的な心構えを述べた「自衛官の心がまえ」(資料45参照)に準拠して行う。

 
2)資料44参照。

 
3)昨年度の部外教育の協力先機関は、国内では筑波大学、東京工業大学など、海外では米国国防大学、ハーバード大学など。

 
4)留学生受入れ実績については資料46参照。


 

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