第4章 より安定した安全保障環境の構築への貢献 

1 安全保障対話・防衛交流

安全保障対話・防衛交流の意義

 冷戦終結後、安全保障環境をより安定化させるため、各国がその保有する軍事力や国防政策の透明性を高め、防衛当局者間の対話・交流などを通じて相互の信頼関係を深めることで、無用な軍備増強や不測の事態の発生とその拡大を抑えることが重要になっている。
 アジア太平洋地域は、地理的、歴史的に多様性に富み、各国の安全保障観も多様である。また、冷戦期にも、中国という第三極が存在していたため、欧州のような明確な東西対立は存在しなかった。このような諸要因を背景に、この地域では、欧州のような多国間の安全保障の枠組みが構築されなかった。
 こうした中で、アジア太平洋地域の平和と安定のため、米国を中心とした二国間の同盟・友好関係と米軍の存在が重要な役割を果たしてきた。このような状況は現在でも基本的には変わらない。一方、冷戦終結後には、従来イデオロギーや領土をめぐって対立や紛争を続けてきた国家間で関係改善の動きが見られ、対話や交流が活発化している。また、ASEAN(:Association of Southeast Asian Nations)地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)のように、様々な多国間の安全保障分野での対話が試みられ、次第に定着している1
 このような情勢の下、わが国の平和と安全を確保するためには、適切な防衛力を整備し、日米安保体制を堅持するとともに、国際社会、特に、アジア太平洋地域で、より安定した安全保障環境を構築することはますます重要となっている。防衛庁・自衛隊は、この地域における関係諸国との信頼関係の増進を図る上で、関係諸国との二国間交流やARFなどの多国間の安全保障対話などを重視して積極的な取組を進めており、今後とも、関係諸国の動向をも見つつ、その内容を深め、幅を広げることで、より安定した安全保障環境の構築への貢献を積極的に行うこととしている。

 
 二国間の防衛交流と多国間の安全保障対話


 
1)1章3節8参照。


 

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