第1章 国際軍事情勢 

7 アジア太平洋地域の米軍

前方展開戦力の維持

 太平洋国家でもある米国は、アジア太平洋地域に陸・海・空軍及び海兵隊の統合軍である太平洋軍を配置し、この地域の平和と安定のために、引き続き重要な役割を果たしている。昨年初来日したブッシュ大統領は、同年2月19日の国会での演説で、日本と同様、米国も太平洋国家の一員であり、アジアの将来の一翼を担っているゆえに、米国はアジア地域における前方プレゼンスに以前にも増してコミットしていることを強調している。
 アジア太平洋地域における米軍の前方展開は、米国にとっては、1998(平成10)年に発表された「米国の東アジア・太平洋地域における安全保障戦略」(EASR:East Asia Strategy Report)にも記されているように、「アジアにおける米軍のプレゼンスは、侵略を抑止するという重要な役割を果たし、事態発生後のより大規模で、経費を要する米国の対応の必要性を度々軽減する。今日、抑止力は朝鮮半島などの地域においては引き続き重要である。アジアにおけるプレゼンスは、この重要な地域における米国・同盟国及び友好国の利益を守るという確固とした決意を示すもの。」である。
 01(同13)年10月に米国防省から公表された「4年毎の国防計画の見直し」(QDR:Quadrennial Defense Review)においても、4つの重要な地域(欧州、北東アジア、東アジア沿岸部、中東・南西アジア)における前方抑止態勢の強化を重視している。その中でも、アジア・太平洋地域にかかわる具体的施策として、西太平洋地域における空母戦闘群の増強、3〜4隻の水上艦艇や巡航ミサイル搭載潜水艦の母港を設定する際の選択肢の検討及び北東アジアにおける重要な基地の維持やこれらの基地を他地域への戦力投入のための中継地点とする考えを示している。一方、アジア地域においては、現地からの支援を最小限にして遠距離から作戦を維持することのできるシステム開発に重点を置かなければならない、とも述べられている。
 昨年8月、米国防省が公表した「2002年国防報告」によれば、アジア地域で安定したバランスを保つことが重要かつ困難な任務であるため、現地の最小限の支援で作戦が継続できるようなシステムを構築することが重要である、といった考え方が述べられており、QDRと同様の考え方を示している。
 米国は、現在、世界各地に展開している米軍の態勢について検討を着手しており、今後、それがアジア太平洋地域の安全保障にいかなる影響を及ぼしうるのか注目することが必要である。

 

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