2 国際連合などによる国際社会の安定化のための努力  

 国連は、第二次世界大戦末期、当時の連合国を中心として戦後の国際の平和と安全の維持のために設立された。国連が国際的な平和維持機構として本来の機能を発揮するためには、特に安保理を中心に加盟各国の協力が必要であるが、国連設立後、東西対立が激化したこともあり、国連憲章に規定された平和維持の制度は必ずしも十分に機能しなかった。

 冷戦の終結により、東西対立の時代に比して、主要国間の協調が図られるようになり、安保理がより有効に機能するようになるとみられていた。このため、地域紛争が発生する危険性が増大している状況の中で、国連が国際の平和と安全を維持する役割を発揮することが期待された。

 しかし、複雑な背景を有する紛争について、主要国の利害関係や思惑が錯綜(さくそう)している場合には、対応策については必ずしも合意が形成されない例が見られるなど、国連が十分にその機能を発揮するためには多くの課題があることも同時に明らかとなっている。さらに、国連平和維持活動については、与えられる任務に必要な要員や機材を確保できるかといった問題も抱えている。

国連平和維持活動

(資料5参照)

(1) 冷戦後の国連平和維持活動

 国連平和維持活動は、伝統的には、安保理又は総会決議に基づき、国連が、停戦の合意が成立した後に、紛争当事者の間に立って、停戦監視などを行うことにより事態の沈静化や紛争の再発防止を図り、紛争当事者による対話を通じた紛争解決を支援することを目的とした活動であった。このような活動を行う中で、紛争当事者の受け入れ同意があること、公平性を保つこと、必要最低限の武器使用などの原則が慣行として確立した。

 冷戦の終結により、地域紛争の処理や予防に関して、安保理を中心とする国連の役割に対する期待が高まるとともに、国際社会が対応を迫られる紛争の多くが国家間の紛争から一国内における紛争へと変わった結果、国連による平和維持活動の任務は、武装解除の監視、選挙や行政監視、難民帰還などの人道支援など、文民の活動を含む幅広い分野にわたるようになり、活動の規模も拡大した。また、国連憲章第7章の下で、武装解除などに関し強制措置をとり得るとされる活動や、紛争を未然に防止する目的を持った活動も行われるようになった(注1−180)

 国連及び関係国は、こうした多様な活動の経験を踏まえ、PKO(Peacekeeping Operations)の効果的な実施のための方策について議論を行ってきた。2000(平成12)年8月には、国連平和活動検討パネルが、紛争予防、平和維持、平和構築からなる一連の平和活動を国連がより効率的、実効的に行えるよう、様々な角度から勧告する報告書を公表した(注1−181)。報告書の勧告には、要員派遣国との協力強化を図る協議、国連本部平和維持活動局の人員増強(注1−182)などが含まれ、これらを受けて、安保理などで審議が行われている。

 なお、本年4月末現在、国連平和維持活動の要員は、約4万7,000人となっている。

(2) 国連要員の安全確保

 国連平和維持活動における国連要員の犠牲者数は、強制措置を伴う第2次国連ソマリア活動(UNOSOM II: United Nations Operation in SomaliaII)や国連防護隊(UNPROFOR: United Nations Protection Force)などの活動が行われていた93(同5)年がピークであったが、本年4月末までの犠牲者は1,762人に達し、国連平和維持活動などに携わる要員の早急な安全確保が望まれている。94(同6)年には、「国際連合要員及び関連要員の安全に関する条約」が採択され、各締約国に対し、国連要員などに対する殺人、攻撃、誘拐などの行為を犯罪とすること、一定の場合に当該犯罪についての裁判権を設定すること、一定の場合に当該犯罪の容疑者をその引渡しを求めた国に引き渡すことなどを義務付けた。98(同10)年には、この条約の発効に必要な22か国が締結し、99(同11)年に発効している(注1−183)

国連平和維持活動が行われている地域(2002.5.31現在)


国連平和維持活動が行われている地域(2002.5.31現在)