信頼醸成措置(CBM:Confidence Building Measures)

 偶発的な軍事衝突を防ぐとともに、国家間の信頼を醸成するとの見地から、軍事情報の公開や一定の軍事行動の規制、軍事交流などを進める努力が行われている。これは、一般的に信頼醸成措置(CBM)と呼ばれている。

(1) 米露間の軍事交流・信頼醸成措置

 米露間の軍事交流は、93(同5)年以降、従来の友好親善を目的としたものから、海上・航空救難といった具体的な活動を伴うもの、さらには、平和維持活動などを目的とした共同演習の分野にまで発展してきた。93(同5)年に、米露の国防相間で、毎年1回の国防相会談や平和維持活動を想定した共同演習を行うことなどを内容とする覚書が署名されたが、これは、両国が軍事面でも協同する状況になったことを示すものと言える。
 94(同6)年には、両国の国防省の間にホットラインが設置され、また、95(同7)年には、両国の国防相が「軍事技術協力に関する協定」に署名するなど、米露間の軍事協力関係は進展してきている。その後、両国の軍事交流は、99(同11)年のNATOによるユーゴ連邦共和国への空爆などにより一時停滞したものの、最近では、2000年問題に関連した臨時早期警戒センターを共同設置したほか、昨年の一連の米露首脳会談で、早期警戒システムに関する共同データ交換センターのモスクワ設置、ミサイル発射の相互事前通知制度の検討などに合意している。

(2) 欧州における信頼醸成措置

 欧州においては、89(同元)年から信頼・安全醸成措置(CSBM:Confidence and Security-Building Measures)交渉が行われてきたが、92(同4)年の欧州安全保障協力会議(CSCE:Conference on Security and Cooperation in Europe)全体会議において、軍事情報の年次交換、一定規模以上の演習などの通報・査察・制限などを内容とする「ウィーン文書1992」が採択された(注1−82)。99(同11)年、主要兵器・装備システムが使われなくなった場合の通報、交流に関する情報提供、演習実施に関する砲・装甲戦闘車などの数的制限、査察報告の期限や地域的な信頼醸成のため多国間・二国間などの自主的な同意に基づく信頼醸成措置の実施などを追加した「ウィーン文書1999」が採択された。
 また、相互の査察飛行により、締約国の軍事活動の公開性と透明性を増進させるとともに、軍備管理の検証手段を補足するオープン・スカイズ条約は、92(同4)年に25か国により署名された。この条約は、年8回以上の査察義務を有する国すべての批准を発効要件の一つとしており、本年3月末現在、ロシア及びベラルーシが未批准のため、いまだ発効に至っていないが、米露を含む一部署名国間で査察試験飛行が行われている。