3 不審船対処

能登(のと)半島沖の不審船事案の経緯

 昨年3月23日早朝、警戒監視活動中の海上自衛隊の哨戒(しょうかい)機P−3Cが、佐渡島(さどがしま)西方及び能登半島東方の領海内で不審船らしい船舶を発見した。防衛庁は、訓練に向かっていた護衛艦を現場に向かわせ、この船舶の船名を確認し、海上保安庁に通報した。海上保安庁が、これらの船舶について確認したところ、第二大和丸については、兵庫県浜坂(はまさか)沖で操業中であること、第一大西丸については、漁船原簿から抹消されていることが確認されたため、最終的に不審船であると判断した。
 海上保安庁では、両船に対し停船命令、威嚇(いかく)射撃を実施したが、両船は無視して高速で逃走を続けた。同月24日午前0時30分、運輸大臣から防衛庁長官に対し、海上保安庁の能力を超える事態に至ったので、この後は内閣において判断されるべきものである旨の連絡があった。
 防衛庁では、直ちに、海上警備行動(注4-3)が必要と判断し、防衛庁長官は、自衛隊法第82条の規定に基づき、内閣総理大臣に対し、海上警備行動の承認の閣議を求めた。内閣総理大臣は、同日午前0時45分、安全保障会議と閣議を経て海上警備行動を承認した。この承認を受け、防衛庁長官は、午前0時50分に海上自衛隊に対し自衛隊創設以来初めての海上警備行動を発令し、海上自衛隊は直ちに不審船への対処を開始した。護衛艦による停船命令、警告射撃やP−3Cによる警告としての爆弾投下などの対処を行った(注4-4)。しかし、第二大和丸は午前3時20分に、第一大西丸は午前6時6分に我が国の防空識別圏の外に出た。今回のケースにおいては、自衛隊が日本の防空識別圏を越えて追跡した場合には、他国に無用の刺激を与えることにもなりかねないと考えられたため、護衛艦による追尾を終了し、同日午後3時30分、防衛庁長官より海上警備行動の終結が発令された。その後、同月30日には、更に種々の情報を総合的に分析した結果、政府として、不審船2隻は、北朝鮮の工作船であるとの判断に至ったことから、北朝鮮に対し抗議を行った。

(写真)不審船「第二大和丸」

不審船「第二大和丸」

(写真)不審船「第一大西丸」

不審船「第一大西丸」