資料11 自衛隊法第95条の2の運用に関する指針 (平成28年12月22日 国家安全保障会議決定) 1 趣旨  この運用指針は、自衛隊法第95条の2(以下「本条」という。)の基本的な考え方及び本条の運用に際しての内閣の関与等について定めるものである。  防衛大臣は、本条の運用に際しては、法令に定めるもののほか、この運用指針によるものとする。 2 本条の基本的な考え方 (1)本条の趣旨  本条は、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。)に現に従事しているアメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊その他これに類する組織(以下「合衆国軍隊等」という。)の部隊の武器等という、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段に相当するものと評価することができるものを武力攻撃に至らない侵害から防護するための、極めて受動的かつ限定的な必要最小限の武器の使用を認めるものである。  本条第1項において「現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。」と規定することにより、同項の警護が合衆国軍隊等による「武力の行使と一体化」しないことを担保するとともに、同条の規定による武器の使用によって戦闘行為に対処することはないものとし、したがって、自衛隊が武力の行使に及ぶことがなく、また、同条の規定による武器の使用を契機として戦闘行為に発展することもないようにしている。  このような武器の使用は、憲法第9条で禁止された「武力の行使」には当たらない。  なお、本条における「その他の外国」については、これらの国の部隊は、自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事する部隊であることから、防衛分野において我が国と緊密な協力関係にある外国に限られる。 (2)我が国の防衛に資する活動  本条における「我が国の防衛に資する活動」に当たり得る活動については、個別具体的に判断するが、主に以下の活動が考えられる。  ア 弾道ミサイルの警戒を含む情報収集・警戒監視活動  イ 我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態に際して行われる輸送、補給等の活動  ウ 我が国を防衛するために必要な能力を向上させるための共同訓練 (3)警護の実施の判断  合衆国軍隊等から警護の要請があった場合には、防衛大臣は、当該合衆国軍隊等の部隊が自衛隊と連携して従事する活動が「我が国の防衛に資する活動」に該当するか及び自衛官が警護を行うことが必要かについて、当該活動の目的・内容、当該部隊の能力、要請に係る当該部隊の武器等の種類、戦闘行為が行われるおそれを含む周囲の情勢等を踏まえ、自衛隊の任務遂行への影響も考慮した上で主体的に判断する。 3 内閣の関与 (1)国家安全保障会議での審議  本条第2項の規定による合衆国軍隊等からの警護の要請を受けた防衛大臣の警護の実施の判断に関し、次の場合には、国家安全保障会議で審議するものとする。ただし、緊急の要請に際しそのいとまがない場合には、防衛大臣は、速やかに、警護の実施の判断について国家安全保障会議に報告するものとする。  ア 当該合衆国軍隊等から、初めて警護の要請があった場合  イ 第三国の領域における警護の要請があった場合(第三国の領域における本条に係る警護については、その活動について当該第三国の同意がある場合に限り実施するものとする。)  ウ その他特に重要であると認められる警護の要請があった場合  このほか、重要影響事態(重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律(平成11年法律第60号。以下「重要影響事態安全確保法」という。)第1条に規定する重要影響事態をいう。)における警護の実施が必要と認める場合は、内閣総理大臣は、その旨基本計画(重要影響事態安全確保法第4条第1項に規定する基本計画をいう。)に明記し、国家安全保障会議で審議の上、閣議の決定を求めるものとする。 (2)国家安全保障会議幹事会での審議  本条第2項の規定による合衆国軍隊等からの警護の要請を受けた防衛大臣の警護の実施の判断に関し、次の場合には、国家安全保障会議幹事会で審議するものとする。ただし、緊急の要請に際しそのいとまがない場合には、防衛省は、速やかに、警護の実施の判断について国家安全保障会議幹事会に報告するものとする。  これらの審議又は報告がなされた件については、国家安全保障会議に報告するものとする。  ア 警護対象となる合衆国軍隊等の部隊が行う「我が国の防衛に資する活動」について、過去に同様の活動を行う当該合衆国軍隊等の部隊の武器等の警護を実施した実績がない場合  イ その他重要であると認められる警護の要請があった場合 (3)関係省庁との連携  防衛省は、本条の運用に関し、合衆国軍隊等から警護の要請があった場合における内閣官房国家安全保障局との情報の共有を含め、関係省庁と緊密に連携するものとする。 4 国家安全保障会議への報告及び情報の公開 (1)国家安全保障会議への報告  防衛大臣は、毎年、前年に実施した警護の結果について、国家安全保障会議に報告するものとする。 (2)情報の公開  本条の運用の状況については、次のア及びイに規定するもののほか、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)を踏まえ、政府として適切に情報の公開を図ることとする。  ア 防衛大臣は、本条の運用に際し、自衛隊又は合衆国軍隊等の部隊に具体的な侵害が発生した場合等、本条による警護の実施中に特異な事象が発生した場合には、速やかに公表すること。  イ 内閣総理大臣は、3(1)の基本計画を公表すること。