第III部 わが国の防衛に関する施策
2 戦闘機の生産・技術基盤

自衛隊の主力装備品の一つである戦闘機については、F-2戦闘機の最終号機が11(同23)年9月27日に防衛省に納入され、これ以降は、わが国における戦闘機の生産は、当面の間途絶えることとなった。
これまで、<1>継続的な戦闘機の生産、研究開発、<2>戦闘機を運用するために必要な整備や修理により、国内の生産・技術基盤が維持・向上され、戦闘機を運用する際に必要不可欠である「高い可動率の維持」、「わが国の運用に適した能力向上等」、「安全性の確保」という三つの要素を確保してきた。
しかし、このたびの戦闘機の生産中断は、<1>将来の戦闘機に関する研究開発に必要となる技術水準の維持・向上が困難になる<2>戦闘機の整備・修理などの運用支援能力の低下といった影響を及ぼすおそれがある。このような生産の空白期間がいかなる影響を与えるのかについては、有識者を含め官民で整理することを目的とした「戦闘機の生産技術基盤の在り方に関する懇談会」において、09(同21)年12月に中間とりまとめを行っている。
同懇談会では、戦闘機の生産・技術基盤の将来に向けて、今後取り組むべき課題として次の3点を示している。
○ 「高い可動率の維持」、「わが国の運用に適した能力向上等」、「安全性の確保」という三つの要素に不可欠な基盤は国内に維持するという観点から、今後、戦闘機の運用上国内に維持しなければならない基盤を精査する。
○ 将来の戦闘機に関する研究開発について、中長期的視点に立ったビジョンを策定する。
○ 戦闘機の生産・技術基盤の一部には、その他の航空機の開発・生産により維持されるものもあることを踏まえ、自衛隊機の開発時に培われた技術の民間転用などの施策を検討・推進する。
これを受け、防衛省では、10(同22)年8月、F-2戦闘機後継の取得を検討する所要の時期に開発を選択肢として考慮できるよう、将来戦闘機のコンセプトと必要な検討事項などについて、「将来の戦闘機に関する研究開発ビジョン」として公表している。また、防衛航空機産業との間で進むべき方向性についての認識を共有することが重要であることから、「将来戦闘機官民合同研究会」を立ち上げ、わが国の防衛航空機産業との間で定期的に意見交換を行っている。

 
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