第III部 わが国の防衛に関する施策
第4節 防衛生産・技術基盤の維持・強化に向けた取組
1 防衛生産・技術基盤戦略

防衛省では、戦闘機の生産・技術基盤などにおける検討を踏まえつつ、10(同22)年11月に学識経験者などを構成員とする「防衛生産・技術基盤研究会」を開催し、わが国の防衛生産・技術基盤に関する戦略の方向性についての検討を開始し、12(同24)年6月に「防衛生産・技術基盤研究会最終報告」を取りまとめた。
同報告書では、次の事項が示されている。
○ 昨今の厳しい財政事情や、防衛装備品が高性能化・複雑化している現状、経済のグローバル化を踏まえると、資金面でも、技術力の面でもわが国一国ですべての防衛生産・技術基盤を維持していくことは困難な状況
○ したがって、安定的かつ中長期的な防衛力の維持・整備の実現に向け、防衛生産・技術基盤の維持・育成・高度化を図っていくためには、国際共同開発・生産を視野に入れつつ、<1>国内に真に保持すべき防衛生産・技術基盤を見極め、<2>その維持・育成・高度化を図る対策を講じていくことが必要
との問題意識のもと、以下を踏まえた「戦略」の策定を必要としている。
○ わが国に保持すべき防衛生産・技術基盤
安定的かつ中長期的な防衛力の維持・整備を実現するため、「選択と集中」の考えの下、わが国に保持すべき「重要分野」を選定する必要がある。
○ 防衛産業組織
防衛生産・技術基盤の現状と課題を克服し、維持・育成・高度化させていくための手段として、事業連携、部門統合などの産業組織再編・連携(アライアンス)は有効な手段である。
○ 防衛技術
防衛装備品の要素技術に着目すれば、民生品技術との間でデュアルユース化、ボーダレス化が進展しているため、防衛生産・技術基盤の維持・育成・高度化において両用技術や汎用技術をどのように位置づけていくかを考慮する必要がある。また、中長期的視点に立った技術研究や技術流出対策も行う必要がある。
○ 国際共同開発・生産に関する考え方
「重要分野」の選定結果として、国際共同開発・生産の対象となる可能性があるものを示すとともに、国際共同開発・生産のメリットおよび留意点を踏まえた上で参加を検討する際の考え方を示すべきである。
○ 政府として取るべき施策
<1> 競争環境の構築や調達(契約)手法の改善
<2> 防衛装備品の製造などに関する制約や規制について、産業界の創意工夫・効率化をさらに引き出すことや、国際共同開発・生産への国としての積極的コミットメント
<3> 省庁間や産官学の連携の推進
今後、防衛省においては、防衛大綱の見直しに合わせ防衛生産・技術基盤の維持・強化のための戦略について検討していくこととしている。

 
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