第III部 わが国の防衛に関する施策
第4節 国際平和協力活動への取組

防衛省・自衛隊としては、紛争・テロなどの根本原因の解決などのための政府開発援助(ODA:Official Development Assistance)を含む外交活動とも連携しつつ、国際平和協力活動に積極的に取り組んでいる。
12(同24)年当初は、ゴラン高原、ハイチ、東ティモールおよび南スーダンにおける国連平和維持活動に自衛隊が派遣されてきたが、南スーダンにおける活動を除く活動については、順次終結した。
本節では、活動を終結した3つの活動について総括するとともに、現在も実施中の取組について説明する。

1 国際平和協力活動の枠組など
1 国際平和協力活動の枠組

防衛省・自衛隊は、国際平和協力活動として、現在までに<1>国連平和維持活動(いわゆるPKO(Peacekeeping Operations))への協力をはじめとする国際平和協力業務、<2>海外の大規模な災害に対応する国際緊急援助活動、<3>旧イラク人道復興支援特措法に基づく活動ならびに<4>旧テロ対策特措法および同法の失効後は旧補給支援特措法に基づく活動を行っている。
(図表 III-2-4-1参照)
参照 資料42436970

図表III-2-4-1 自衛隊による国際平和協力活動
2 国際平和協力活動の本来任務化の意義

新たな安全保障環境においては、国際社会の平和と安定がわが国の平和と安全に密接に結びついているという認識を踏まえ、07(同19)年、従来は付随的な業務1とされていた国際平和協力活動を、わが国の防衛や公共の秩序の維持といった任務と並ぶ自衛隊の本来任務2に位置づけた。

3 国際平和協力活動を迅速、的確に行うための平素からの取組

自衛隊が国際平和協力活動に積極的に取り組むためには、引き続き、各種体制の整備を進めるなど平素からの取組が重要である。陸自は07(同19)年7月より各方面隊などから持ち回りで派遣の候補となる要員をあらかじめ指定し、派遣ニーズに迅速かつ継続的に対応できる態勢を維持している。また、08(同20)年3月には、陸自の中央即応集団の隷下に中央即応連隊を新編し、派遣が決定された場合に速やかに先遣隊が派遣予定地に展開し、活動準備を行うことができる体制を整えた。
同年以来、毎年1回、国際平和協力活動派遣に関する一連の活動の訓練などを行うことにより、迅速な海外展開能力や海外における的確な任務遂行能力などの維持・向上を図っている。
また、09(同21)年には、わが国は、国連PKOへのより積極的な参加を目指し、PKOの展開に際して、国連から各国への要員派遣の打診の迅速化・円滑化を目的とする国連待機制度(UNSAS:U.N. Stand-by Arrangements System)3への登録を行った。13(同25)年3月末現在、わが国は、<1>医療(防疫上の措置を含む。)、<2>輸送、<3>保管(備蓄を含む。)、<4>通信、<5>建設、<6>機械器具の据付け、検査または修理、の後方支援能力を有する自衛隊の部隊、<7>軍事監視要員および<8>司令部要員、のポストにつく要員を提供する用意がある旨を登録している。
自衛隊は、国際平和協力活動のための装備品の改善・充実も進めている。陸自は、防弾ガラスやランフラットタイヤ4などを装備した各種車両や、インフラの未整備な場所でも活動ができるよう大容量発電機などを装備するとともに、多様な環境下での活動を可能とするため、輸送ヘリコプター(CH-47JA)のエンジン能力向上などを推進している。また、平成25年度からは、狙撃(そげき)銃、小銃などの射撃位置を探知する装備も取得することとしている。海自は、海外でのヘリコプター運用の基盤ともなる輸送艦およびヘリコプター搭載護衛艦を整備するとともに、固定翼哨戒(しょうかい)機を海外で効果的に運用するための海上航空作戦指揮統制システムの可搬化および機動運用などを推進している。空自は、多様な環境下で航空機と地上との指揮通信機能を保持するため、航空機用衛星電話などの整備や輸送機用自己防御装置、航空機衝突防止装置などの整備を推進している。これらの装備は、わが国における事態発生時などにもきわめて有効である。
さらに、駒門(こまかど)駐屯地(静岡県)の国際活動教育隊において、国際平和協力活動へ派遣される陸自要員の育成、国際平和協力活動にかかわる訓練の支援などを行っている。加えて、10(同22)年3月、統合幕僚学校に新設された国際平和協力センターでは、11(同23)年10月より国際平和協力活動などに関する基礎的な講習(国際平和協力基礎講習)を開始するとともに、平成24年度からは、国際平和協力活動などに関する施策および運用にかかわる企画・立案を担当する要員や国連派遣部隊の司令部で勤務する要員を養成するための専門的な教育(国際平和協力中級課程・国際平和協力上級課程)を行うなど、国際平和協力活動に関して様々なレベルに応じた教育を行っている。教育対象者をより拡大することを含め、同センターの国際平和協力活動に関する教育拠点としてのさらなる充実のための検討を行っている。

国際活動教育隊において教育を受ける陸自隊員
国際活動教育隊において教育を受ける陸自隊員
4 派遣部隊の福利厚生やメンタルヘルスケア

国や家族から遠く離れ、困難な勤務環境下において任務を遂行することを求められる派遣隊員が、心身の健康を維持して任務を支障なく遂行できる態勢を整えることは、非常に重要である。
このため、防衛省・自衛隊では、国際平和協力活動などで海外に派遣される隊員が安心して職務に専念できるよう、隊員と留守家族の精神的不安を緩和する各種施策を行っている。
具体的には、派遣部隊の福利厚生施策として、隊員と留守家族の絆を維持するため、メールやテレビ電話など、派遣隊員と家族が直接連絡できる手段の確保や、隊員および留守家族間のビデオレターの交換などを行っている。また、隊員の家族に対しては、家族説明会を開催して様々な情報を提供するとともに、家族支援センターや家族相談室などを設置して各種相談に応じる態勢をとっている。
さらに、メンタルヘルスケアの施策も行っており、派遣前の隊員にストレスの軽減に必要な知識を与えるための講習を行うとともに、現地では、カウンセリング教育を受けた隊員を配置するなど、隊員の精神面のケアに十分配慮している。加えて、派遣部隊に医官を配置するとともに、定期的に本国からの専門的知識を有する医官を中心としたメンタルヘルス診療支援チームなどを派遣し、現地でのストレス対処方法や、帰国後の家族および所属部隊の隊員とのコミュニケーションにおける注意点などについて教育を行っている。また、派遣を終えて帰国した後には、臨時の健康診断、メンタルヘルスチェックを行っている。

UNMISS宿営地内においてメンタルヘルスに関する教育を行う陸自医官
UNMISS宿営地内においてメンタルヘルスに関する教育を行う陸自医官
5 国際平和協力のあり方に関する議論

国際社会の平和と安定は、わが国の安全と繁栄の基盤となるものであり、わが国として、国際平和協力のための多様な取組に機動的に対応して、的確な協力の推進を図ることが必要である。
国際社会の平和と安定に一層貢献するとの観点から、国際平和協力活動のためのいわゆる「一般法」については、国会などにおける議論などを踏まえつつ、政府全体として検討していくべきものと考えている。


1)自衛隊法第8章(雑則)あるいは附則に規定される業務
2)自衛隊法第3条に定める任務。主たる任務は「わが国の防衛」であり、従たる任務は「公共の秩序の維持」、「周辺事態に対応して行う活動」および「国際平和協力活動」である。
3)国連PKOの機動的展開を可能にする目的で、94(平成6)年に国連が導入した制度。国連加盟各国が、国連PKOの軍事部門に提供可能な能力、要員数、派遣に要する期間などを予め国連に登録しておくもの。なお、登録に基づき国連から派遣要請がある場合も、実際に派遣するか否かは、各国が個別に判断することとなる。
4)被弾などにより空気が抜けても安定走行が可能なタイヤ
 
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