第III部 わが国の防衛に関する施策
7 在外邦人等の輸送への対応

防衛大臣は、外国での災害、騒乱、その他の緊急事態に際し、外務大臣から邦人等の輸送の依頼があった場合、外務大臣と協議をした上で、当該在外邦人等の輸送を行うことができる。その際は、自衛隊などが、派遣先国の空港・港湾などで、在外公館から在外邦人等を引き継ぎ、航空機・船舶まで安全に誘導することとなる。このため、陸自ではヘリコプター隊と誘導隊1の要員を、海自は輸送艦をはじめとする艦艇と航空部隊を、空自では輸送機部隊と派遣要員をそれぞれ指定するなど待機態勢を維持している。
在外邦人等の輸送は、陸・海・空自の緊密な連携が必要となることから、輸送機や輸送艦などを用いた協同訓練を行っている。また、防衛省は、毎年タイで行われている多国間共同訓練コブラ・ゴールドにおける在外邦人等の輸送訓練に、在タイ日本国大使館の協力を得て、同大使館職員およびその家族ならびに在タイ以外の在外公館の職員とともに参加している。こうした訓練を通じ、外務省との連携要領や海外における自衛隊の活動要領への習熟を深め、任務遂行のための能力向上に努めている。また、在外邦人等の輸送は、07(同19)年1月、本来任務と位置づけられた。
13(同25)年1月のアルジェリアにおける邦人に対するテロ事件において、被害邦人等の輸送のため、自衛隊法第84条の3(在外邦人等の輸送)に基づき、空自特別航空輸送隊(千歳(ちとせ)基地所属)の政府専用機をアルジェリアに派遣し、安全が確認された7名の邦人と9名の御遺体を本邦に輸送した。在外邦人の輸送において空自機が使用されたのは、04(同16)年にイラクからクウェートまでC-130H輸送機が使用されて以来2例目であり、政府専用機が使用されたのは初めてである。
13(同25)年2月28日、政府は「在アルジェリア邦人に対するテロ事件の対応に関する検証委員会検証報告書」を公表し、同報告書では、陸上輸送を含め現行法制の見直しの検討が提言されている。さらに、与党においても同年3月、自衛隊の行う在外邦人等輸送について、陸上輸送を可能とすることを含む自衛隊法の改正について提言がなされた。これらの提言を踏まえ、在外邦人等の輸送について、輸送手段への車両の追加、輸送対象者の拡大、武器使用の場所と防護対象の拡大などを内容とする自衛隊法の改正案が4月19日に閣議決定され、国会に提出された。
(図表III-1-1-13参照)
参照 資料4243

図表III-1-1-13 在外邦人などの輸送における下令手続およびイメージ
初めて在外邦人輸送に使用された政府専用機
初めて在外邦人輸送に使用された政府専用機

1)輸送部隊(自衛隊の航空機・艦艇)とともに派遣され、現地において在外邦人等の誘導・防護にあたる臨時に編成される部隊
 
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