資料編

資料8 中期防衛力整備計画(平成23年度〜平成27年度)について

平成22年12月17日 安全保障会議決定
 閣議決定
 平成23年度から平成27年度までを対象とする中期防衛力整備計画について、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成22年12月17日安全保障会議及び閣議決定)に従い、別紙のとおり定める。

(別紙)
中期防衛力整備計画(平成23年度〜平成27年度)
I 計画の方針

 平成23年度から平成27年度までの防衛力整備に当たっては、「平成23年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成22年12月17日安全保障会議及び閣議決定)に従い、即応性、機動性、柔軟性、持続性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた動的防衛力を構築するため、以下を計画の基本として、防衛力の整備、維持及び運用を効果的かつ効率的に行うこととする。
1 実効的な抑止及び対処、アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化並びにグローバルな安全保障環境の改善のための各種の活動を迅速かつシームレスに実施できるよう、複合事態への対応にも留意しつつ、即応態勢、統合運用態勢及び国際平和協力活動を積極的に実施し得る態勢を整備する。この観点から、統合の強化、島嶼(しょ)部における対応能力の強化、国際平和協力活動への対応能力の強化、情報機能の強化、科学技術の発展への対応を重視する。
2 防衛力の整備に当たっては、統合運用の実効性向上の観点も踏まえ、自衛隊が保有すべき各種の機能のうち、各種の活動に活用し得る機能、非対称的な対応能力を有する機能及び非代替的な機能を優先整備すべき機能として重点化し、適切な資源配分を行う。なお、本格的な侵略事態への備えについては、不確実な将来情勢の変化に対応するための最小限の専門的知見や技能の維持に必要な範囲に限り保持する。
3 装備品等の導入に当たっては、能力の高い新たな装備品等の導入と既存の装備品等の延命、能力向上等を組み合わせることにより、質の高い防衛力を効率的に整備する。
4 防衛力の能力発揮の基盤を効果的に整備するため、人事制度の抜本的な見直しにより、人件費の抑制・効率化を図るとともに若年化による精強性の向上等を推進し、人件費の比率が高く、自衛隊の活動経費を圧迫している防衛予算の構造の改善を図る。また、装備品等の取得改革をより一層推進し、部隊の運用水準の向上を図るほか、関係機関や地域社会との協力の強化を図る。
5 日米安全保障体制は、我が国の平和と安全にとって必要不可欠であり、また、米軍の軍事的プレゼンスは、地域の平和と安定の維持に不可欠である。新たな安全保障環境にふさわしい形で日米同盟を深化・発展させていくため、各種の協力や日米協議を推進するほか、在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするための取組等を積極的に推進する。
6 格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、一層の効率化・合理化を図り、経費を抑制する。その際、各自衛隊に係る予算配分についても、安全保障環境の変化に応じ、前例にとらわれず、縦割りを排除した総合的な見地から思い切った見直しを行う。また、自衛隊全体にわたる装備・人員・編成・配置等の抜本的な効率化・合理化を行った上で、事業の内容を精査の上、真に必要な機能に資源を選択的に集中して防衛力の構造的な変革を図り、限られた資源でより多くの成果を達成する。
II 基幹部隊の見直し等
1 陸上自衛隊については、部隊の編成及び人的構成を見直し、効率化・合理化を徹底する中で、戦車及び火砲の縮減を図りつつ、即応性、機動性等を一層向上させるため、5個の師団及び1個の旅団について改編を実施する。また、1個高射特科群を廃止し、これに伴い1個の旅団内に高射特科連隊を新設するとともに、即応性、航空輸送力等を一層向上させるため、1個の旅団について改編を実施する。
 平素からの情報収集・警戒監視及び事態発生時の迅速な対処に必要な体制を整備するため、南西地域の島嶼(しょ)部に、陸上自衛隊の沿岸監視部隊を新編し配置するとともに、初動を担任する部隊を新編するための事業に着手する。
 統合運用の推進や日米共同による対処態勢構築の推進等の観点から、指揮・管理機能の効率化にも留意しつつ、作戦基本部隊(師団・旅団)及び方面隊の在り方について検討の上、必要な措置を講ずる。
2 海上自衛隊については、情報収集・警戒監視、対潜戦等の各種作戦の効果的な遂行による周辺海域の防衛や海上交通の安全確保等に有効に対応するとともに、国際平和協力活動に柔軟に対応できるよう、護衛艦部隊(地域配備)を機動運用化する。その際、5個の護衛隊からなる護衛艦部隊(地域配備)を4個護衛隊とする。また、潜水艦増勢のために必要な措置を講ずる。
3 航空自衛隊については、南西地域における即応態勢を充実するため、那覇基地に戦闘機部隊1個飛行隊を移動させ、2個飛行隊とする改編を行うとともに、1個航空団を新設し、これに伴い既存の1個航空団を廃止する。また、米軍とのインターオペラビリティを向上するため、横田基地を新設し、航空総隊司令部等を移転する。
4 計画期間末の常備自衛官全体の定数は、平成22年度末の水準からおおむね2千人程度削減し、おおむね24万6千人程度とする。
(1)このうち、陸上自衛隊の計画期間末の編成定数については、おおむね15万7千人程度、常備自衛官定数についてはおおむね15万人程度、即応予備自衛官員数については、おおむね7千人をめどとする。
(2)また、海上自衛隊及び航空自衛隊の計画期間中の常備自衛官定数については、平成22年度末の水準をめどとする。
(3)なお、計画期間中においては、後方業務の抜本的な合理化・効率化を図ることにより、人員の一層の合理化を進めることとする。その際、精強性を高めるための第一線部隊の充足については、後方業務に関する新たな人事任用制度の導入に伴う人件費抑制や人員の配置転換により、人件費の追加的な負担を招かない範囲で措置することとする。
III 自衛隊の能力等に関する主要事業
1 実効的な抑止及び対処
(1)周辺海空域の安全確保
 陸・海・空の各領域で常時継続的に情報収集・警戒監視を行い、各種兆候を早期察知する態勢を強化するため、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)、汎用護衛艦(DD)、潜水艦及び固定翼哨戒機(P−1)の整備並びに既存の護衛艦、潜水艦及び固定翼哨戒機(P−3C)の延命を行う。また、固定式3次元レーダー装置を整備するとともに、引き続き、早期警戒管制機(E−767)の改善を行う。
(2)島嶼(しょ)部に対する攻撃への対応
(ア)情報収集・警戒監視体制の整備等
 平素からの情報収集・警戒監視を行うとともに、事態発生時の迅速な対処に必要な体制を整備するため、前記II1に示すとおり、南西地域の島嶼(しょ)部に陸上自衛隊の沿岸監視部隊を配置するとともに、初動を担任する部隊の新編に向けた事業に着手する。また、移動警戒レーダーを南西地域の島嶼(しょ)部に展開することにより、隙のない警戒監視態勢を保持する。さらに、南西地域において早期警戒機(E−2C)の整備基盤を整備し、常時継続的に運用し得る態勢を確保する。
(イ)迅速な展開・対応能力の向上
 迅速な展開能力を確保し、実効的な対応能力の向上を図るため、引き続き、輸送ヘリコプター(CH−47JA)を整備するとともに、現有の輸送機(C−1)の後継機として、新たな輸送機を整備する。また、部隊の迅速な展開に資するヘリコプター搭載護衛艦(DDH)を整備する。さらに、地対艦誘導弾を整備するほか、島嶼部への迅速な部隊展開に向けた機動展開訓練を実施する。
(ウ)防空能力の向上
 巡航ミサイル対処を含む防空能力の向上を図るため、前記・3に示すとおり、那覇基地における戦闘機部隊を1個飛行隊から2個飛行隊に改編する。また、現有の戦闘機(F−4)の後継機として、新たな戦闘機を整備するとともに、引き続き、戦闘機(F−15)の近代化改修及び自己防御能力の向上、地対空誘導弾ペトリオットの改修、中距離地対空誘導弾の整備を推進する。加えて、戦闘機(F−15)に電子戦能力を付加するとともに、戦闘機(F−2)の空対空能力やネットワーク機能の向上を行う。さらに、現有の救難ヘリコプター(UH−60J)の後継機として、新たな救難ヘリコプターを整備するとともに、引き続き、救難ヘリコプターに対する空中給油機能を輸送機(C−130H)に付加し、救難能力の向上を図る。
(エ)海上交通の安全確保
 南西地域等における情報収集・警戒監視態勢を充実し、対潜戦を始めとする各種作戦を効果的に行い、海上交通の安全を確保し得るよう、前記(1)に示すとおり、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)、汎用護衛艦(DD)、潜水艦及び固定翼哨戒機(P−1)の整備、既存の護衛艦、潜水艦及び固定翼哨戒機(P−3C)の延命を行うほか、哨戒ヘリコプター(SH−60K)、掃海艦艇、掃海・輸送ヘリコプター(MCH−101)を整備するとともに、哨戒ヘリコプター(SH−60J)の延命を行う。また、救難体制を効率化するとともに、救難飛行艇(US−2)を整備する。
(3)サイバー攻撃への対応
 自衛隊の情報通信ネットワークを防護するための機能の向上に向け、自衛隊に対するサイバー攻撃への対処を統合的に実施するための体制を強化するほか、サイバー攻撃対処に関する研究や演習の充実を図るとともに、サイバー攻撃対処に関する高度な知見を有する人材を育成し、政府全体として行う対応に寄与する。
(4)ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応
 ゲリラや特殊部隊による攻撃に迅速かつ効果的に対応できるよう、部隊の即応性、機動性等を一層高めることとし、普通科部隊の強化を行うほか、引き続き、軽装甲機動車、多用途ヘリコプター(UH−60JA)及び戦闘ヘリコプター(AH−64D)を整備する。
 また、核・生物・化学兵器による攻撃への対応能力の向上を図るため、引き続き、NBC偵察車を整備する。
(5)弾道ミサイル攻撃への対応
 弾道ミサイル攻撃への対処体制の強化に向け、引き続き、イージス・システム搭載護衛艦及び地対空誘導弾ペトリオットの能力向上等を行う。
 弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発を引き続き推進するとともに、その生産・配備段階への移行について検討の上、必要な措置を講ずる。
(6)複合事態への対応
 複数の事態が連続的又は同時に生起した場合にあっても、迅速かつ適切な対応を行えるよう、指揮統制、後方支援等の態勢を整備する。
(7)大規模・特殊災害等への対応
 大規模地震、原子力災害等、様々な大規模・特殊災害等に迅速かつ適切に対応し、国民の人命及び財産を保護するため、平素から関係機関と連携しつつ各種の訓練や計画の策定等の各種施策を推進する。
2 アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化
 我が国周辺において、平素からの情報収集・警戒監視や訓練・演習等の部隊運用を適時・適切に行うことにより、我が国周辺の安全保障環境の安定を目指す。
 アジア太平洋地域の不安定要因を除去し、安定化を図るため、引き続き各レベルにおいて二国間・多国間の安全保障対話、防衛協力・交流、各種の共同訓練・演習を多層的に推進するとともに、域内協力枠組みの構築・強化を促進する。また、より実際的な協力を推進するため、人道支援・災害救援等の非伝統的安全保障分野において防衛医学、地雷・不発弾処理等の自衛隊が保有する知識・経験を活用することで、同分野における域内諸国の対処能力向上や人材育成等の能力構築支援を実施する。
3 グローバルな安全保障環境の改善
 国際平和協力活動に積極的に取り組む。国連平和維持活動の実態を踏まえ、PKO参加五原則等我が国の参加の在り方を検討する。
 また、能力構築支援や、国際テロ対策、海上交通の安全確保や海洋秩序の維持のための取組等を積極的に推進する。さらに、気候変動や資源の制約が安全保障環境や作戦環境に及ぼす影響について検討を行い、諸外国と協力しつつ、所要の研究を推進するなど必要な措置を講ずる。
 国際平和協力センターにおいて、国際平和協力活動等に関する知識普及に資するための教育及び専門的な教育を実施するとともに、教育対象者について、関係府省職員等自衛隊員以外に拡大することを検討の上、必要な措置を講ずる。
 国際連合を含む国際機関等が行う軍備管理・軍縮分野における諸活動に対し、引き続き積極的に協力する。
4 体制整備に当たっての重視事項
(1)統合の強化
 島嶼(しょ)部への攻撃に対する対応や周辺海空域の安全確保、複合事態への対応等に際し、各自衛隊が一体となって有機的に対処し、国民の安全を確保し得る体制を構築する。このため、統合的な観点から、各自衛隊が保有する機動力、輸送能力及び実効的な対処能力のほか、統合幕僚監部の機能強化を始めとして指揮統制機能を高めるとともに、各自衛隊に横断的な機能の整理等を行いつつ、動的防衛力の強化に資する実効的かつ効率的な組織・編成・業務の在り方について検討の上、必要な措置を講ずる。
 統合運用基盤を強化するため、衛星通信を含む高度な情報通信ネットワークを活用した一元的な指揮統制、情報共有態勢の強化を図るとともに、自衛隊における統合的なサイバー攻撃対処能力強化に向け、サイバー攻撃対処の中核となる組織の新設や専門的な人材育成に必要な事業を実施する。また、自衛隊統合訓練や日米共同訓練を始めとする各種訓練を実施する。
 海上自衛隊及び航空自衛隊が担う陸上配備の航空救難機能の航空自衛隊への一元化に向けた体制整備に着手するとともに、陸上自衛隊及び航空自衛隊の高射部隊について統合の観点から効果的かつ効率的な体制整備に向けた検討を推進する。
(2)国際平和協力活動への対応能力の強化
 国際平和協力活動に迅速に部隊を派遣し、継続的に活動できるよう、待機態勢の強化を図るほか、陸上自衛隊の中央即応集団の機能の充実を図る。国際平和協力活動にも資する装備品として、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)や輸送機(C−1)の後継機等を整備し、海上及び航空輸送力を強化するほか、既存の装備品等を国際平和協力活動にも対応し得るよう改修し、各種の任務の遂行に必要な機能の充実を図る。
 また、施設・衛生等の機能や教育訓練体制の充実を図るため、国際平和協力活動にも資する装備品等を整備する。
(3)情報機能の強化
 安全保障環境の変化に伴う情報のニーズに柔軟に対応できるよう、宇宙分野や無人機を含む新たな各種技術動向等を踏まえ、広域における総合的な警戒監視態勢の在り方について検討するとともに、情報収集施設・器材・装置等の整備、更新と能力向上に努める。また、情報部門の総合的な分析・評価能力等を強化するため、能力の高い要員を確保し、多様な分野に精通した情報の専門家を育成する。
 自衛隊の海外派遣部隊等が円滑かつ安全に任務を行い得るよう地図・地誌の整備等を推進するなど、遠隔地での活動に対する情報支援を適切に行う体制を整備する。また、効果的かつ効率的な情報収集と要員の育成のため、関係国との情報協力・交流の拡大・強化に取り組む。
 また、今後の航空偵察機能の在り方について、新たな戦闘機等が保有する情報収集能力も踏まえて検討の上、必要な措置を講ずる。
(4)科学技術の発展への対応
(ア)指揮通信能力等の強化
 確実な指揮命令と迅速な情報共有に資するため、内外の優れた情報通信技術に対応し、高度な指揮通信システムや新野外通信システム等の情報通信ネットワークを整備する。その際、前記1(3)に示すとおりサイバー攻撃対処能力を強化する。
 指揮通信能力の強化に加え、防衛分野での宇宙利用の促進にも資する高機能なXバンド衛星通信網を構築する。その際、民間企業の資金、経営能力及び技術的能力を積極的に活用するなどして、我が国産業の振興にも資する効果的かつ効率的な事業形態を追求する。
(イ)研究開発の推進
 現有の多用途ヘリコプター(UH−1J)の後継機として、新たな多用途ヘリコプターの開発に着手する。また、機動戦闘車及び新空対艦誘導弾の開発や中距離地対空誘導弾の改善、潜水艦の能力向上、将来レーダー等の新規技術及び各種既存装備品の能力向上に関する研究開発を推進する。また、戦闘機(F−2)の後継機の取得を検討する所要の時期に、戦闘機の開発を選択肢として考慮できるよう、将来戦闘機のための戦略的検討を推進する。
 研究開発を効果的かつ効率的に行うため、技術調査体制の強化を図りつつ、無人化・省人化を含む科学技術の動向等を踏まえ、中長期的な視点に立って優先整備すべき機能を重点化するとともに、コスト分析、リスク評価等の事業管理を的確に行う仕組みを整備する。また、国内研究機関等との交流による産学官の優れた技術の積極的導入、米国を始めとする諸外国との協力等を推進する。
(5)衛生機能の強化
 隊員の壮健性を維持し、国際平和協力活動等、多様な任務への対応能力を強化するため、自衛隊病院等を拠点化・高機能化し、統合後送体制、衛生資器材等を整備するとともに、海外派遣部隊等に対する医療支援機能を強化する。また、情報通信技術を活用し、メディカル・コントロール体制、病院・医務室間の情報ネットワーク等を整備する。また、医官教育の強化、看護師養成課程の4年制化、医療資格保有隊員への教育等を実施し、質の高い衛生要員の確保を図る。さらに、自衛隊病院等において質の高い医療サービスを提供する体制を整備し、地域医療にも貢献する。
5 防衛力の能力発揮のための基盤
(1)人的資源の効果的な活用
(ア)人材の確保・育成等
 引き続き進行する社会の少子化・高学歴化と自衛隊の任務の多様化・国際化、装備の高度化等に的確に対応し得るよう、質の高い人材の確保・育成を図るとともに、訓練基盤の充実を図りつつ、必要な教育訓練を充実する。また、防衛大学校改革を着実に推進する。
(イ)人事施策の見直しを含む人事制度改革
 自衛隊が遂行すべき任務や体力、経験、技能等のバランスに留意しつつ士を増勢し、幹部及び准曹の構成比率を引き下げ、階級及び年齢構成の在り方を見直し、一層の精強性を実現する。このため、自衛官の定員及び現員について階級別定数管理等の基本原則を確立の上、体系的な管理を行うための制度を構築する。その上で、第一線部隊等に若年隊員を優先的に充当するとともに、その他の職務について最適化された給与等の処遇を適用する制度を設計・導入するなどの人事制度改革を実施し、人件費の追加的な負担を招かない範囲で所要の実員を確保する。また、幹部・准曹・士の各階層の活性化を図るための施策を検討し、導入するほか、退職自衛官を社会で有効活用するための措置を着実に行いつつ、公的部門での受入れを含む再就職援護や退職後の礼遇等に関する施策を推進し、これらと一体のものとして自衛官の早期退職制度等を検討し、導入する。
(ウ)後方業務の合理化・効率化の推進
 自衛隊の駐屯地・基地業務等の後方業務について、民間活力の有効活用等により業務の質の向上を図るとともに合理化・効率化を推進し、人員の一層の合理化を進め、人件費を抑制し、第一線部隊等を中心に必要な人員を確保する。
(エ)防衛研究所の研究・教育機能の活用
 防衛研究所の調査研究、教育及び国際交流について、内部部局及び各自衛隊のニーズに即したより組織的かつ効率的・効果的な運営を追求し、その安全保障及び戦史に係る研究・教育機能の活用を図る。
(2)防衛生産・技術基盤の維持・育成
 安全保障上の重要性等の観点から、国内に保持すべき重要な防衛生産・技術基盤を特定し、その分野の維持・育成を重点的に実施するとともに、実効性のある防衛力整備を効率的に実現するとの観点も踏まえ、防衛生産・技術基盤に関する戦略を策定する。
(3)防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討
 平和への貢献や国際的な協力において、自衛隊が携行する重機等の装備品の活用や被災国等への装備品の供与を通じて、より効果的な協力ができる機会が増加している。また、国際共同開発・生産に参加することで、装備品の高性能化を実現しつつ、コストの高騰に対応することが先進諸国で主流になっている。このような大きな変化に対応するための方策について検討する。
(4)より一層の効果的かつ効率的な装備品等の取得の推進
 より一層の効果的かつ効率的な装備品等の取得を推進するため、装備品の性能、価格等の総合的な観点から、必要な装備品等を適正な価格で調達するためコスト・マネジメントの手法の確立及びそのための体制の充実、強化を図る。
 また、民間活力を効果的に引き出す調達手法を導入するとともに、短期集中調達・一括調達等効果的かつ効率的な装備品等調達を行うため、契約に係る制度の改善に取り組む。
(5)装備品等の運用基盤の充実
 装備品等の運用に不可欠な燃料、部品等の確保に留意しつつ、装備品等の可動率をより低コストかつ高水準で維持できるよう、装備品等の維持整備について、国内外の先進的な事例も参考にして、維持整備に係る成果の達成に応じて対価を支払う新たな契約方式(Performance Based Logistics)の導入を図るとともに、業務全体の質の維持向上及び効率化に向けた抜本的な取組等にも着手して運用基盤の充実を図る。
 なお、こうした取組等を通じ、平成23年度から平成27年度までの各自衛隊の装備品等の維持整備等に係る経費の総額を、「III 自衛隊の能力等に関する主要事業」に掲げる主要事業の整備が可能な水準にまで実質的に抑制するとともに、平成28年度以降の更なる経費の抑制につなげ、これにより、継続的かつ着実な防衛力整備を実現する。各自衛隊による経費抑制の実績については適時公表していくものとする。
(6)関係機関や地域社会との協力の推進
 各種の事態に国として統合的に対応し得るよう、警察、消防、海上保安庁等の関係機関との連携を強化するとともに、国民保護法制も踏まえた地方公共団体、地域社会との協力を推進するほか、各種事態のシミュレーションや総合的な訓練・演習を平素から実施するなど、政府の意思決定及び対処に係る機能・体制を検証し、法的側面を含めた必要な対応について検討する。
 また、防衛施設の効率的な維持及び整備を実施するとともに、関係地方公共団体との緊密な協力の下、防衛施設とその周辺地域との一層の調和を図るため、引き続き、基地周辺対策を推進する。
IV 日米安全保障体制の強化のための施策
1 戦略的な対話及び政策調整
 日米間で安全保障環境の評価を行いつつ、共通の戦略目標及び役割・任務・能力に関する日米間の検討を引き続き行う。
2 日米防衛協力の強化
(1)各種分野における協力の一層の推進
 情報協力、計画検討作業の深化、周辺事態における協力を含む各種の運用協力、弾道ミサイル防衛における協力、装備・技術協力といった従来の分野における協力を進める。また、拡大抑止の信頼性向上、情報保全のための日米協議を実施する。さらに、地域における不測の事態に対する米軍の抑止及び対処力の強化を目指し、日米協力の充実を図るための措置を検討する。
(2)日米防衛協力の深化
 警戒監視活動における日米協力、日米二か国間、日米に他の一国を加えた三か国及び多国間の共同訓練の拡大、自衛隊施設と我が国及び米国に所在する米軍施設・区域の共同使用の拡大などによる平素からの各種協力の強化、国際平和協力業務、国際緊急援助活動、海賊対処行動等の地域及びグローバルな活動における日米協力の推進について日米間で協議を行い、日米協力の強化を図る。
 さらに、宇宙、サイバー空間における対応、海上交通の安全確保、気候変動といったグローバルな課題についても、関係府省間で連携しつつ日米間で協議を行い、協力を進める。
3 在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするための取組
 在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするとの観点から、一層の効率化・透明化を図りつつ在日米軍駐留経費を安定的に確保する。
V 整備規模
 前記IIIに示す装備品のうち、主要なものの具体的整備規模は、別表のとおりとする。
VI 所要経費
1 この計画の実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、下記3の額を含め、平成22年度価格でおおむね23兆4,900億円程度をめどとする。
2 各年度の予算の編成に際しては、国の他の諸施策との調和を図りつつ、一層の効率化・合理化に努め、おおむね23兆3,900億円程度の枠内で決定するものとする。その際、「今後の防衛力整備について」(昭和62年1月24日安全保障会議及び閣議決定)に示された節度ある防衛力の整備を行うという精神は、引き続きこれを尊重するものとする。
3 将来における予見し難い事象への対応、地域及びグローバルな安全保障課題への対応等特に必要があると認める場合にあっては、安全保障会議の承認を得て、上記2の額の他、1,000億円を限度として、これら事業の実施について措置することができる。
4 この計画については、3年後には、その時点における国際情勢、情報通信技術を始めとする技術的水準の動向、財政事情等内外諸情勢を勘案し、上記1に定める額の範囲内において、必要に応じ見直しを行う。
VII その他
1 防衛力の在り方について不断の検討を行うため、自衛隊の装備及び人員の配置や運用状況に関する情報を集約の上これを評価する体制を整備するとともに、防衛力の整備に係る諸計画の策定を行う体制を整備する。
2 米軍の抑止力を維持しつつ、沖縄県を始めとする地元の負担軽減を図るための在日米軍の兵力態勢見直し等についての具体的措置及びSACO(沖縄に関する特別行動委員会)関連事業については、着実に実施する。
(別表)

別表
 
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