第III部 わが国の防衛に関する諸施策
3 在日米軍の駐留

1 在日米軍の駐留の意義

日米安保体制に基づく日米同盟が、わが国の防衛やアジア太平洋地域の平和と安全に寄与する抑止力として十分に機能するためには、在日米軍のプレゼンスが確保されていることや、在日米軍が緊急事態に迅速かつ機動的に対応できる態勢が平時からわが国とその周辺でとられていることなどが必要である。
このため、わが国は、日米安保条約に基づいて、米軍の駐留を認めている。
(図表III―2―1―5参照)

図表III―2―1―5 在日米軍の日本における配置図

これにより、前述のとおり、わが国に対する武力攻撃に際しては、相手国が自衛隊に加えて米軍と直接対決する事態を覚悟する必要が生じることとなり、在日米軍がわが国への侵略に対する抑止力になる。また、安定的な在日米軍の駐留を実現することは、わが国に対する武力攻撃があった場合の日米安保条約第5条に基づく日米の共同対処を迅速に行うために必要である。さらに、わが国防衛のための米軍の行動は、在日米軍のみならず、適時の兵力の来援によってもなされるが、在日米軍は、そのような来援のための基盤ともなる。

在日米海軍横須賀基地を母港とする空母「ジョージワシントン」(奥) と連携して行動する海自のイージス艦「こんごう」(手前)
在日米海軍横須賀基地を母港とする空母「ジョージワシントン」(奥)
と連携して行動する海自のイージス艦「こんごう」(手前)

在日米軍が以上のような役割を果たすためには、在日米軍を含む米軍の各兵種が機能的に統合されている必要がある。たとえば、日米両国が協力してわが国に対する武力攻撃などに対処するにあたっては、米軍は主としていわゆる「矛」としての打撃力の役割を担っているが、このような打撃力として米軍が機能する際には、わが国に駐留する米海軍、米空軍、米海兵隊などが一体となって十分な機能を発揮するものと考えられる。
なお、日米安保条約は、以上のように第5条で米国の日本防衛義務を規定する一方、第6条でわが国の安全と極東における国際の平和と安全の維持のためにわが国の施設・区域の使用を米国に認めており、総合的に日米双方の義務のバランスを取っている。この点は、締約国による共同防衛についてのみ規定されている北大西洋条約とは異なっている。

2 在日米軍施設・区域と地域社会

在日米軍施設・区域がその機能を十分に発揮するためには、これを抱える地元の理解と協力が欠かせない。一方で、在日米軍施設・区域の周辺では、日米安保条約締結以来、過去数十年の間に市街化が進むなど、社会環境は大きく変化している。在日米軍施設・区域が十分に機能を発揮するとともに、真に国民に受け入れられ、支持されるものであるためには、こうした変化を踏まえ、在日米軍施設・区域による影響をできる限り軽減する必要がある。
わが国の国土は狭隘(きょうあい)でかつ平野部が少なく、在日米軍施設・区域と、都市部や産業地区とが隣接している例も多い。このような地域においては、在日米軍施設・区域の設置や航空機の離発着などにより、住民の生活環境や地域の振興に大きな影響を与えることから、各地域の実情に合った負担軽減の努力が必要である。

3 沖縄の在日米軍

沖縄は、米本土やハワイ、グアムなどに比べて東アジアの各地域と近い位置にある。このため、この地域において部隊を緊急に展開する必要がある場合には、沖縄に駐留する米軍は迅速に対応することができる。また、わが国の周辺諸国との間に一定の距離があるという地理上の利点を有している。さらに、南西諸島のほぼ中央にあることや、わが国のシーレーンにも近いなど、安全保障上きわめて重要な位置にある。こうした地理的特徴を有する沖縄に、高い機動力と即応性を有し、様々な緊急事態への対処を担当する米海兵隊をはじめとする米軍が駐留していることは、わが国の安全のみならずアジア太平洋地域の平和と安定に大きく寄与している。
一方、沖縄県内には、飛行場、演習場、後方支援施設など多くの在日米軍施設・区域が所在しており、12(平成24)年1月時点で、わが国における在日米軍施設・区域(専用施設)のうち、面積にして約74%が沖縄に集中している状況にある。このため、沖縄における負担の軽減については、前述の安全保障上の観点を踏まえつつ、最大限の努力をする必要がある。
(図表III―2―1―6参照)

図表III―2―1―6 沖縄の地政学的位置と在沖米海兵隊の意義・役割
 
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