第III部 わが国の防衛に関する諸施策
3 サイバー攻撃への対応

近年、情報通信基盤へのサイバー攻撃は高度化・複雑化しており、サイバー空間の安定的利用に対するリスクが新たな課題となりつつある。こうした中、防衛省・自衛隊としても、自衛隊の情報システム・通信ネットワークを防護するための機能を引き続き向上させていく必要がある

1 自衛隊の対応

22大綱においては、自衛隊は、サイバー攻撃に対し、自らの情報システムを防護するために必要な機能を統合的に運用して対処するとともに、サイバー攻撃に対する高度な知識・技能を蓄積し、政府全体として行う対応にも寄与することとしている。
自衛隊のサイバー攻撃への対処能力を強化するため、自衛隊に対するサイバー攻撃対処を統合的に実施するための体制を強化するほか、サイバー攻撃対処に関する研究や演習の充実を図ることが重要である。

2 防衛省・自衛隊の取組

防衛省・自衛隊では、08(平成20)年3月、サイバー攻撃への対処を含め、自衛隊の防衛情報通信基盤や中央指揮システム1の維持管理・運営などを任務とする「自衛隊指揮通信システム隊」を設置し、24時間態勢で自衛隊の通信ネットワークを監視する一方、日々多様化・複雑化するサイバー攻撃への対処にあたっては、情報通信システムの安全性向上を図るための侵入防止システムなどの導入、サイバー防護分析装置などの防護システムの整備にとどまらず、人的・技術的基盤の整備も含めた総合的な施策が必要であり、サイバー攻撃対処に関する態勢や要領を定めた規則2の整備や最新技術の研究などの取組を行っている。

図表III―1―2―4 防衛省・自衛隊におけるサイバー攻撃対処に係る施策

また、サイバー攻撃対処能力の強化に向け、平成24年度には、サイバー防護分析装置について、実践的な訓練の実施や外部インターネットから最新ウィルスを収集するための機能などの向上を図ることとしているほか、サイバー攻撃対処に関する研究の充実のための取組や、防衛大学校におけるネットワークセキュリティ分野の教育・研究体制の整備、国内外の大学院などへの職員留学など、高度な知見を有する人材の育成のための取組などを継続して行っている。
一方、サイバー空間の安定的利用を防衛省・自衛隊のみによって達成することは困難であることから、NISC:National Information Security Centerなど関係省庁との連携に加え3、11(同23)年6月の日米「2+2」共同発表において設置が言及され、同年9月に初めて開催された「安全保障分野におけるサイバー・セキュリティ問題に関する日米戦略政策対話」などを通じてサイバー空間を巡る課題や情報セキュリティに関する情報交換を行うほか、サイバー攻撃を想定した日米共同訓練を行うなど、米国をはじめとする国際社会との協力も進めている。
このように、日々多様化するサイバー攻撃への対応には総合的な施策が必要であり、その検討および実施を図るため、12(同24)年5月には、防衛大臣政務官を委員長とするサイバー攻撃対処委員会を設置し、サイバー空間の安定的利用に向けた包括的な方針の策定やサイバー攻撃対処の中核となるサイバー防護専門部隊の新設についての検討などを行っている。


1)1節4「自衛隊の統合運用体制」注3を参照
2)防衛省の情報保証に関する訓令(平成19年防衛省訓令第160号)などがある。
3)II部3章6節2「サイバー空間の安定的利用に関する取組」を参照
 
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