第II部 わが国の防衛政策の基本と動的防衛力
3 自衛隊の能力などに関する主要事業
1 実効的な抑止及び対処

22大綱における防衛力の役割に示された、重視すべき事態への対応ごとに、各自衛隊の装備品の整備などの各種事業を行うこととしている。
(図表II―3―1―2参照)

図表II―3―1―2 「実効的な抑止及び対処」にかかる事業

(1)周辺海空域の安全確保
陸・海・空の各領域で常時継続的に情報収集・警戒監視を行い、各種兆候を早期察知する態勢を強化する。

(2)島嶼部に対する攻撃への対応
ア 情報収集・警戒監視体制の整備など平素からの情報収集・警戒監視を行うとともに、事態発生時の迅速な対処に必要な体制を整備する。
イ 迅速な展開・対応能力の向上迅速な展開能力を確保し、実効的な対応能力の向上を図る。
ウ 防空能力の向上巡航ミサイル対処を含む防空能力の向上を図る。
エ 海上交通の安全確保南西地域などにおける情報収集・警戒監視態勢を充実し、対潜戦をはじめとする各種作戦を効果的に行い、海上交通の安全を確保できる体制を整備する。

(3)サイバー攻撃への対応
自衛隊の情報通信ネットワークを防護するための機能を向上させるとともに、政府全体として行う対応に寄与する。

(4)ゲリラや特殊部隊による攻撃への対応ゲリラや特殊部隊による攻撃に迅速かつ効果的に対応できるよう、部隊の即応性、機動性などを一層高める。

(5)弾道ミサイル攻撃への対応
弾道ミサイル攻撃への対処体制を強化する。
また、わが国の防衛に万全を期すとともに、将来的な迎撃ミサイルの能力向上を着実に図るため、弾道ミサイル防衛用能力向上型迎撃ミサイルに関する日米共同開発を引き続き推進するとともに、その生産・配備段階への移行について検討の上、必要な措置を講ずる。

(6)複合事態への対応
複数の事態が連続的または同時に生起した場合にあっても、迅速かつ適切な対応を行えるよう、指揮統制、後方支援などの態勢を整備する。

(7)大規模・特殊災害などへの対応
大規模地震、原子力災害など、様々な大規模・特殊災害などに迅速かつ適切に対応し、国民の人命および財産を保護する。

11式短距離地対空誘導弾
11式短距離地対空誘導弾
進水式を行う潜水艦「ずいりゅう」
進水式を行う潜水艦「ずいりゅう」
近代化されたF―15戦闘機
近代化されたF―15戦闘機
2 アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化

アジア太平洋地域の安全保障環境の一層の安定化のため、次のような取組を行う。
○ 各レベルによる二国間・多国間の安全保障協力・対話、防衛協力・交流、各種の共同訓練・演習を多層的に推進
○ 域内協力枠組の構築・強化の推進
○ 能力構築支援1(人道支援、災害救援などの分野において、防衛医学、地雷・不発弾処理などの自衛隊が保有する知識・経験を活用することで、域内諸国の対処能力向上や人材育成などを支援)

3 グローバルな安全保障環境の改善

グローバルな安全保障環境の改善のため、次のような取組を行う。
○ 国際平和協力活動への積極的な取組
○ PKO参加5原則などわが国の参加のあり方を検討
○ 能力構築支援、国際テロ対策、海上交通の安全確保や海洋秩序維持のための取組などを積極的に推進
○ 気候変動、資源の制約が安全保障環境などに及ぼす影響の研究
○ 国際平和協力センターにおける教育の実施
○ 国連を含む国際機関などが行う軍備管理・軍縮分野における諸活動への積極的な協力

4 体制整備にあたっての重視事項

自衛隊の体制整備に当たっては、<1>統合の強化、<2>国際平和協力活動への対応能力の強化、<3>情報機能の強化、<4>科学技術の発展への対応、<5>衛生機能の強化を重視する。

5 防衛力の能力発揮のための基盤

防衛力の整備、維持および運用を効率的・効果的に行うため、防衛力の能力発揮のための基盤の整備として、次のような取組を行う。

(1)人的資源の効果的な活用
ア 人材の確保・育成など
○ 社会状況の変化や自衛隊の任務の多様化・国際化などに対応した質の高い人材の確保・育成、訓練基盤・教育訓練の充実など
イ 人事施策の見直しを含む人事制度改革
○ 自衛官の定員・現員について階級別定数管理などの基本原則を確立の上、体系的な管理を行うための制度を構築
○ 第一線部隊などへの若年隊員の優先的充当、その他の職務について最適化された処遇を適用する制度の設計・導入
○ 幹部・准曹・士の各階層の活性化を図るための施策の導入
○ 退職自衛官の社会における有効活用、再就職援護などに関する施策の推進、これらと一体のものとして、自衛官の早期退職制度の導入
ウ 後方業務の合理化・効率化の推進
○ 駐屯地・基地業務などについて民間活力の有効活用などにより業務の質の向上を図るなど、人員の一層の合理化を進め、人件費を抑制し、第一線部隊などの人員を確保
エ 防衛研究所の研究・教育機能の活用
○ 安全保障および戦史に係る研究、教育機能の活用を図るため、ニーズに即した組織的かつ効率的・効果的な運営の追求

(2)防衛生産・技術基盤の維持・育成
○ 国内に保持すべき重要な防衛生産・技術基盤の特定および維持・育成
○ 防衛生産・技術基盤に関する戦略の策定

(3)防衛装備品をめぐる国際的な環境変化に対する方策の検討
○ 装備品の高性能化や、コストの高騰に対応することが先進諸国で主流になっており、このような変化に対応するための方策について検討

(4)より一層の効果的かつ効率的な装備品などの取得の推進
○ 装備品などのコスト・マネジメント手法の確立および体制の充実、強化
○ 民間活力を効果的に引き出す調達手法の導入や契約に係る制度の改善に向けた取組

(5)装備品などの運用基盤の充実
○ 装備品などの運用に不可欠な燃料、部品などの確保
○ 装備品などの維持整備に関する新たな契約方式(PerformanceBased Logistics)の導入

(6)関係機関や地域社会との協力の推進
○ 警察・消防・海上保安庁などの関係機関との連携強化
○ 地方公共団体、地域社会との協力の推進
○ 政府の意思決定および対処に係る機能・体制を検証し、法的側面を含めた必要な対応について検討
○ 防衛施設の効率的な維持・整備、基地周辺対策の推進


1) 1 III部3章1節3参照
 
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