第II部 わが国の防衛政策の基本と動的防衛力
第2節 22大綱の内容

本節では、22大綱が示す防衛力の考え方や自衛隊の態勢・体制などについて説明する。

1 基本的な考え方−動的防衛力の構築など

22大綱は、安全保障環境の変化に対応するため、「動的防衛力」を構築するとしている点が大きな特徴となっている。
わが国周辺においては、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在するとともに、多くの国が軍事力を近代化し、また各種の活動を活発化させている。こうした中では、防衛力の存在自体によって相手を抑止するのみならず、平素から各種の活動を適時・適切に行うことによって国家の意思や高い防衛能力を示すなど防衛力の運用に着眼した「動的な抑止力」が重要となる。加えて、軍事科学技術などの飛躍的な発展にともない、兆候が現れてから事態が発生するまでの時間は短縮化する傾向にあることなどから、事態に迅速かつシームレスに(切れ目なく)対応するためには、即応性をはじめ、総合的な部隊運用の能力の重要性が増している。
また、現在の世界における多くの安全保障課題は、国境を越えて広がるため、平素からの各国の連携・協力が重要となっている。こうした中で、軍事力の役割が一層多様化し、人道支援・災害救援、平和維持、海賊対処など平素から常時継続的に軍事力を運用することが一般化しつつある。自衛隊も、これまで国際平和協力活動を数多く行ってきており、海外での活動が日常化している。このような活動を行っていく上で、持続性をはじめ、継続的な活動を支える能力が重要となっている。
このような中にあっては、今後の防衛力については、「防衛力の存在」を重視した従来の「基盤的防衛力構想」によることなく、「防衛力の運用」に焦点を当て、与えられた防衛力の役割を効果的に果たすための各種の活動を能動的に行い得る「動的なもの」としていくことが必要である。このため、22大綱では、即応性、機動性、柔軟性、持続性および多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度な技術力と情報能力に支えられた「動的防衛力」を構築することとしている。この「動的防衛力」の考え方は、自衛隊の活動を通じて防衛力の役割を果たしていくことを主眼としている。
一層厳しさを増す安全保障環境に対応するには、適切な規模の防衛力を着実に整備することが必要である。このため、22大綱においては、厳しい財政事情を踏まえ、自衛隊全体にわたる装備・人員・編成・配置などの抜本的見直しによる思い切った効率化・合理化を行った上で、真に必要な機能に資源を選択的に集中する「選択と集中」を行い、防衛力の構造的な改革を図り、限られた資源でより多くの成果を達成するとともに、人事制度の抜本的な見直しにより、人件費の抑制・効率化とともに若年化による精強性の向上などを推進し、人件費が高く自衛隊の活動経費を圧迫している防衛予算の構造の改善を図ることとされている。このように防衛力の構造的な改革や人事制度改革に触れていることも、22大綱の特徴の一つである。

 
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