第III部 わが国の防衛に関する諸施策 

2 採用

(1)自衛官
 自衛官は、志願制度(個人の自由意思に基づく入隊)のもと、一般幹部候補生、一般曹候補生3、自衛官候補生などとして採用4される。そして、その職務の特殊性のため、一般の公務員とは異なる人事管理5を行っている。
 その中でも、一般の公務員と比べ大きく異なる点は、自衛隊の精強さを保つため、「若年定年制」と一部6に「任期制」という制度をとっている点である。「若年(じゃくねん)定年制」は、一般の公務員より若い年齢で定年退職する制度である。また、「任期制」は、2年または、3年という期間を区切って採用する制度である。
 採用後、各自衛隊に入隊した自衛官は、各自衛隊の教育部隊や学校で基本的な教育を受け、その後全国の部隊などへ赴任する。その後、基本的な教育を終えるまでに、各人の希望や適性などに応じて、その進むべき職種が決定される。
 なお、近年、防衛省は、幹部以外の自衛官について、「任期制」自衛官を大量採用し、大量退職させるよりも、定年まで安定して勤務できる「非任期制」自衛官(一般曹候補生など)の採用を拡大している。
 これは、少子・高学歴化による募集対象人口の減少に対応し、良質な人材を安定して確保するためである。「非任期制」自衛官の制度自体は昭和50年度からあるが、近年の任務の多様化や装備品の高度化にともない、「士」の定数を削減し、より高度な知識・技能を備えた「曹」の定数を増加させたことから、その数の大幅な拡大が可能となったものである。
 この結果、「士」の採用は、平成元年度の約2万3,000人から平成20年度の約1万2,000人へと半減する一方、「士」に占める「非任期制」自衛官の割合は平成元年度の6%から平成21年度には49%へと変化している。
 平成21年度においては、こうした経緯に加え、1)一昨年来の経済不況による雇用情勢の悪化から「任期制」自衛官の任期満了退職者および「非任期制」自衛官の中途退職者が大きく減少していること、2)総人件費改革による民間委託にともなう実員削減(21年度約1,500人)について、主に「士」の採用抑制により対応したことなどにより、「士」の採用数は6,701人と過去最低の水準となった。
(図表III-4-1-4 参照)
 
図表III-4-1-4 自衛官採用者数推移[任期、非任期制別]

参照 717273
 
新隊員入隊式

(2)即応予備自衛官、予備自衛官、予備自衛官補
ア 予備の要員を確保する意義
 自衛官は、平素は必要最小限の数で対応している。このため、有事などの際は、事態の推移に応じ、必要な自衛官の所要を早急に満たさなければならない。この所要を急速かつ計画的に確保するため、わが国では即応予備自衛官、予備自衛官および予備自衛官補7の三つの制度を設けている8。中でも、自衛官未経験者を対象とする予備自衛官補制度は、防衛基盤の育成・拡大を図り、予備自衛官を安定的に確保し、医療、語学などにおける民間の優れた専門技術を有効に活用することを目的として制度化されたものである。
 予備自衛官補制度には、一般と技能の二つの採用区分があり、技能の採用区分では、医療従事者、語学、情報処理などの技能資格者を採用している。
 予備自衛官補は、自衛官として勤務するために必要な教育訓練を修了した後、予備自衛官として任用されるが、近年では、医療従事者の資格で採用された予備自衛官補が予備自衛官に任用後、医官として統合防災訓練に参加したり、語学の資格により採用された予備自衛官補が予備自衛官に任用後、通訳として日米共同方面隊指揮所演習に参加するなど、各分野で活躍している。

参照 資料74

イ 雇用企業の協力
 予備自衛官などは、平素はそれぞれの職業などに就いているため、必要な練度を維持するには、仕事のスケジュールを調整し、休暇などを利用して、訓練招集や教育訓練招集に応じる必要がある。したがって、これらの制度を円滑に運用するためには、彼らを雇用する企業の理解と協力が不可欠である。特に、即応予備自衛官については、年間30日の訓練が必要なため、雇用企業に対して休暇取得の配慮など、必要な協力を求めることになる。
 このため防衛省は、即応予備自衛官を雇用する企業などの負担を軽減し、即応予備自衛官が安心して訓練に参加できるよう、訓練参加などのために所要の措置を行っている雇用企業などに対し、即応予備自衛官雇用企業給付金を支給している。

(3)事務官、技官、教官など
 防衛省・自衛隊には、自衛官のほか、約2万2,000名の事務官、技官、教官などが隊員として勤務している。これらの隊員は、主に国家公務員採用I種9、防衛省職員採用I種、II種、III種試験の合格者から採用され、I・II種採用者は共通の研修を受けたうえで、さまざまな分野で業務を行っている。
 事務官は、内部部局での防衛全般に関する各種政策の企画・立案、情報本部での分析・研究、全国各地の部隊や地方防衛局での行政事務(予算、渉外、基地対策など)などに従事している。
 技官は、各種の防衛施設(司令部庁舎、滑走路、弾薬庫など)の建設工事、戦闘機や艦艇に代表されるさまざまな装備の研究開発、効率的な調達の追求などで重要な役割を果たしている。
 教官は、防衛研究所や防衛大学校、防衛医科大学校などで、防衛に関する高度な研究や隊員への質の高い教育を行っている。
 技官および教官で、10(同22)年3月末において、博士号を取得している者は648名である。
 なお、これらの事務官などが中心となって職務に従事している防衛省の各機関においても、自衛官としての知識が必要な部門では、事務官などとともに陸上・海上・航空自衛官が各種業務に従事している。


 
3)最初から定年制の「曹」に昇任する前提で採用される「士」のこと。18歳以上27歳未満(一般曹候補学生については24歳未満)の者を曹候補者である自衛官に採用する制度として、平成18年度まで「一般曹候補学生」および「曹候補士」の二つの制度を設けていたが、一般曹候補学生制度の長所である曹候補者としての自覚の醸成という視点をいかしながら、曹候補士制度の長所である個人の能力に応じた昇任管理を採り入れた新たな任用制度として、両制度を整理・一本化し、平成19年度の募集から「一般曹候補生」として採用している。

 
4)これまで3等陸・海・空士として採用されていた自衛隊生徒のうち、海上自衛隊および航空自衛隊生徒については、平成19年度採用を最後に、以降の募集を行わないこととした。一方、陸上自衛隊生徒については、平成22年度の採用から、自衛官の身分ではなく、定員外の新たな身分である「生徒」に変更した。また、任期制自衛官については、自衛官として任官する前に、必要な使命感、責任感、団結心、規律心、法令遵守精神などの心構えを十分に涵養する教育などを行うため、「自衛官候補生」として採用し、当該教育を修了した後、2等陸・海・空士である自衛官に任用する制度を10(平成22)年7月から施行する。

 
5)自衛隊員は、自衛隊法に定められた防衛出動などの任務にあたる必要があることから、国家公務員法第2条で特別職の国家公務員と位置づけられ、一般職公務員とは独立した人事管理が行われている。

 
6)平成21年度新規採用した任期制自衛官は2,321人(新規採用自衛官全体の約33%)である。また、こうした任期制自衛官は自衛官全体の約10%を占めている。

 
7)<http://www.mod.go.jp/j/saiyou/yobiji/index.html>参照。

 
8)諸外国でも、予備役制度を設けている。

 
9)従来、事務系職員のみを国家公務員採用I種試験から採用していたが、10(平成22)年4月採用者から、技術系職員のうち主として行政事務に従事することとなる職員についても、国家公務員採用I種試験より採用することとした。その結果、防衛省職員I種試験は、主として研究業務に従事する職員を採用するための試験となった。


 

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