2 「指針」の実効性を確保するための諸施策
(1)「指針」の実効性確保のための措置
「指針」の実効性を確保するためには、平素からの取組をはじめ、武力攻撃事態や周辺事態における日米協力について、法的側面を含めて必要な措置を適切に講じることが重要である。このような観点から、「指針」における共同作戦計画や相互協力計画の検討を含む日米間の共同作業を、平素から、政府全体で進めることが必要である。
これを踏まえ、周辺事態における日米協力の観点から、99(同11)年の周辺事態安全確保法、00(同12)年の船舶検査活動法などの法制整備が行われた。
また、武力攻撃事態等における日米協力の観点からは、有事法制整備の一環として、04(同16)年に米軍の行動の円滑化のための措置が講じられた。
参照 III部1章1節
(2)周辺事態安全確保法と船舶検査活動法の概要
周辺事態安全確保法は、周辺事態に対応してわが国が行う措置(対応措置)
4やその実施の手続などを定めている。また、船舶検査活動法は、周辺事態に対応して、わが国が行う船舶検査活動に関して、その実施の態様や手続などを定めている。その概要は、次のとおりである。
内閣総理大臣は、周辺事態に際して、自衛隊が行う後方地域支援
5、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動などを行う必要があると認めるときは、こうした措置を行うことと対応措置に関する基本計画の案について、閣議決定を求めなければならない。また、対応措置の実施については、国会の事前承認(緊急時は事後承認)を得なければならない。
防衛大臣は、基本計画に従い、実施要項(実施区域の指定など)を定め、内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の部隊などに、後方地域支援、後方地域捜索救助活動、船舶検査活動の実施を命ずる。
関係行政機関の長は、法令と基本計画に従い、対応措置を実施するとともに、地方公共団体の長に対し、その権限の行使について必要な協力を求めることができる。また、法令と基本計画に従い、国以外の者に対し、必要な協力を依頼することができる
6。
内閣総理大臣は、基本計画の決定・変更や対応措置の終了に際しては、遅滞なく、国会に報告する。
(3)後方地域支援
後方地域支援とは、周辺事態に際して日米安保条約の目的達成に寄与する活動を行っている米軍に対し、後方地域においてわが国が行う物品・役務の提供、便宜の供与などの支援措置である。(周辺事態安全確保法第3条第1項第1号)
このうち、自衛隊が行う後方地域支援で提供の対象となる物品・役務の種類は、補給、輸送、修理・整備、医療、通信、空港・港湾業務および基地業務である。
(4)後方地域捜索救助活動
後方地域捜索救助活動とは、周辺事態において行われた戦闘行為によって遭難した戦闘参加者について、後方地域で自衛隊が行う捜索救助活動(救助した者の輸送を含む。)である。(周辺事態安全確保法第3条第1項第2号)
その際、戦闘参加者以外の遭難者がいる場合はあわせて救助を行う。また、実施区域に隣接する外国の領海に遭難者がいる場合は、その外国の同意を得て、遭難者の救助を行うことができる。ただし、その領海において現に戦闘行為が行われておらず、かつ、活動期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる場合に限る。
(5)船舶検査活動
船舶検査活動とは、周辺事態に際し、わが国が参加する貿易その他の経済活動にかかわる規制措置の厳格な実施を確保する目的で、船舶(軍艦など
7を除く。)の積荷・目的地を検査・確認する活動や必要に応じ船舶の航路・目的港・目的地の変更を要請する活動である。こうした活動は、国連安全保障理事会(国連安保理)決議に基づいて、または旗国
8の同意を得て、わが国領海やわが国周辺の公海(排他的経済水域
9を含む。)において行われる。(船舶検査活動法第2条)
4)後方地域支援、後方地域捜索救助活動、周辺事態に際して実施する船舶検査活動に関する法律に規定する船舶検査活動その他の周辺事態に対応するため必要な措置(周辺事態安全確保法第2条)。
5)後方地域とは、わが国の領域並びに現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで行われる活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められるわが国周辺の公海(領海の基線から200海里(約370km)までの水域である排他的経済水域を含む。)およびその上空の範囲をいう。