第II部 わが国の防衛政策の基本と防衛力整備 

資料10 中期防衛力整備計画(平成17年度〜平成21年度)について

平成16年12月10日 安全保障会議決定
 閣議決定
 平成17年度から平成21年度までを対象とする中期防衛力整備計画について、「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成16年12月10日安全保障会議及び閣議決定)に従い、別紙のとおり定める。
 これに伴い、平成12年12月15日付け閣議決定「中期防衛力整備計画(平成13年度〜平成17年度)について」は、平成16年度限りで廃止する。
(別紙)
中期防衛力整備計画(平成17年度〜平成21年度)
I 計画の方針
 平成17年度から平成21年度までの防衛力整備に当たっては、「平成17年度以降に係る防衛計画の大綱」(平成16年12月10日安全保障会議及び閣議決定。以下「新防衛大綱」という。)に従い、以下を計画の基本として、適切な防衛力の整備に努めることとする。
1 新たな脅威や多様な事態に実効的に対応するとともに、国際的な安全保障環境を改善するために国際社会が協力して行う活動(以下「国際平和協力活動」という。)に主体的かつ積極的に取り組むため、本格的な侵略事態に備えるための基盤的な部分を確保しつつ、即応性、機動性、柔軟性及び多目的性を備え、軍事技術水準の動向を踏まえた高度の技術力と情報能力に支えられた多機能で弾力的な実効性のある防衛力を効率的に整備する。
2 新たな安全保障環境の下、防衛行政を担う組織等を見直すとともに、本格的な侵略事態に備えた装備・要員の縮減を図りつつ、基幹部隊、主要装備等について、新防衛大綱に定める新たな防衛力の体制へ早期かつ効率的に移行する。
3 多機能で弾力的な実効性のある防衛力を実現するため、科学技術の発展に的確に対応しつつ、人的資源の効果的な活用を図りながら、統合運用の強化及び情報機能の強化を図ることとし、防衛力の基本的な事項の充実に努める。
4 防衛力の整備、維持及び運用に際して、装備品等の取得の効果的かつ効率的な実施、関係機関や地域社会との協力の強化を図ることとし、防衛力を支える各種施策を推進する。
5 日米安全保障体制は、我が国の安全の確保にとって必要不可欠であり、また、米軍のプレゼンスは、アジア太平洋地域の平和と安定の維持に不可欠である。また、日米安全保障体制を基調とする日米両国の協力関係は安全保障面における国際的取組を効果的に進める上でも重要である。このため、新たな安全保障環境の下、日米安全保障体制及びそれを基調とする米国との緊密な関係を一層強化するための各種施策を推進する。
6 格段に厳しさを増す財政事情を勘案し、国の他の諸施策との調和を図りつつ、防衛力の一層の効率化、合理化を図り、経費を抑制する。
II 防衛庁・自衛隊の組織の見直し
1 防衛行政を担う組織の充実・強化を図るため、内部部局等の在り方について検討の上、必要な措置を講ずる。
2 統合運用を基本とする体制を強化するため、既存の組織等の見直し、効率化を図り、統合幕僚組織の新設及び各幕僚監部の改編を行うほか、統合運用の成果を踏まえて、統合運用を実効的に行い得る組織等の在り方について、検討の上、必要な措置を講ずる。
 また、情報本部については、防衛庁長官直轄の組織とする。
3 陸上自衛隊については、戦車及び主要特科装備の縮減を図りつつ、即応性、機動性等を一層向上させるため、5個の師団、1個の旅団及び2個の混成団について改編を実施し、このうち1個の師団及び2個の混成団は旅団に改編する。また、機動運用部隊や専門部隊を一元的に管理・運用する中央即応集団を新編する。
 計画期間末の編成定数については、おおむね16万1千人程度、常備自衛官定員についてはおおむね15万2千人程度、即応予備自衛官員数については、おおむね8千人程度をめどとする。なお、陸上自衛隊の常備自衛官の充足については、計画期間末において、おおむね14万6千人程度をめどとする。
4 海上自衛隊については、護衛艦部隊(機動運用)について、一つの護衛隊を4隻とし、8個護衛隊に集約化するとともに、護衛艦部隊(地域配備)のうち1個護衛隊を廃止する。また、潜水艦部隊を5個潜水隊に、固定翼哨戒機部隊を4個航空隊に、回転翼哨戒機部隊を5個航空隊に、それぞれ集約化する。
5 航空自衛隊については、航空警戒管制部隊のうち警戒航空隊を2個飛行隊とする改編を行うとともに、空中給油・輸送部隊を新設する。
III 自衛隊の能力等に関する主要事業
1 新たな脅威や多様な事態への実効的な対応
(1)弾道ミサイル攻撃への対応
 弾道ミサイル攻撃へ対応する機能を付加するため、引き続き、イージス・システム搭載護衛艦及び地対空誘導弾ペトリオットの能力向上を行う。ただし、平成20年度以降の能力向上の在り方については、米国における開発の状況等を踏まえて検討の上、必要な措置を講ずる。
 また、引き続き、自動警戒管制システムの改修を行うとともに、弾道ミサイルの探知・追尾能力を有する新たな警戒管制レーダーの整備に着手する。
 海上配備型上層システムを対象とした日米共同技術研究については、これを引き続き推進するとともに、その開発段階への移行について検討の上、必要な措置を講ずる。
(2)ゲリラや特殊部隊による攻撃等への対応
 ゲリラや特殊部隊による攻撃等に実効的に対処し得るよう、部隊の即応性、機動性等を一層高めることとし、普通科部隊の強化を行うほか、引き続き、軽装甲機動車、多用途ヘリコプター(UH−60JA、UH−1J)、戦闘ヘリコプター(AH−64D)を整備する。また、核・生物・化学兵器による攻撃への対処能力の向上を図る。
(3)島嶼部に対する侵略への対応
 輸送・展開能力等の向上を図り、島嶼部に対する侵略に実効的に対処し得るよう、引き続き、輸送ヘリコプター(CH−47JA/J)、空中給油・輸送機(KC−767)、戦闘機(F−2)を整備するとともに、現有の輸送機(C−1)の後継機として、新たな輸送機を整備する。また、空中給油・輸送機(KC−767)については、その運用状況等を踏まえ、その保有機数の在り方について検討の上、必要な措置を講ずる。
 さらに、救難ヘリコプター(UH−60J)に対する空中給油機能を輸送機(C−130H)に付加し、救難能力の向上を図る。
(4)周辺海空域の警戒監視及び領空侵犯対処や武装工作船等への対応
 周辺海空域の警戒監視を常時継続的に行うとともに、武装工作船、領海内で潜没航行する外国潜水艦等に適切に対処するため、引き続き、ヘリコプター搭載護衛艦(DDH)、汎用護衛艦(DD)、哨戒ヘリコプター(SH−60K)及び掃海・輸送ヘリコプター(MCH−101)を整備するほか、早期警戒機(E−2C)の改善及び自動警戒管制組織の航空警戒管制機能の近代化を推進する。また、現有の固定翼哨戒機(P−3C)の後継機として、新たな固定翼哨戒機を整備するとともに、早期警戒管制機(E−767)の改善に着手する。
 さらに、領空侵犯に対して即時適切な措置を講ずるため、引き続き、戦闘機(F−15)の近代化改修を推進する。併せて、財政事情も勘案し、新防衛大綱の下での整備数量の抑制に配意しつつ、現有の戦闘機(F−4)の後継機として、新たな戦闘機を整備する。
(5)大規模・特殊災害等への対応
 大規模・特殊災害等人命又は財産の保護を必要とする各種の事態において、関係機関と連携しつつ実効的に対応するため、引き続き、災害派遣能力の向上を図るための各種施策を推進する。
2 本格的な侵略事態への備え
 見通し得る将来において、我が国に対する本格的な侵略事態生起の可能性は低下していると判断されるため、従来のような、いわゆる冷戦型の対機甲戦、対潜戦、対航空侵攻を重視した整備構想を転換し、本格的な侵略事態に備えた装備・要員の縮減を図りつつ、防衛力の整備が短期間になし得ないものであることに鑑み、周辺諸国の動向に配意するとともに、技術革新の成果を取り入れ、引き続き、戦車、火砲、中距離地対空誘導弾、護衛艦、潜水艦、掃海艇、哨戒機、戦闘機等を整備する。
3 国際的な安全保障環境の改善のための主体的・積極的な取組
(1)国際平和協力活動への適切な取組
 国際平和協力活動に迅速に部隊を派遣し、継続的に活動するため、国際平和協力活動に係る教育、研究等を行う部隊を新編するとともに、ローテーションによる待機態勢の大幅な拡充を図るほか、引き続き国際平和協力活動に資する装備品を整備する。
(2)諸外国との安全保障対話・防衛交流、共同訓練等の充実
 引き続き各レベルの交流を積極的に推進するほか、拡散に対する安全保障構想(PSI)を含む国際平和協力活動や捜索救難等に関する共同訓練に取り組むなど、二国間・多国間の安全保障対話・防衛交流等の諸施策を計画的かつ重層的に推進する。また、国際連合を含む国際機関等が行う軍備管理・軍縮分野における諸活動に対し、引き続き協力する。
4 防衛力の基本的な事項
(1)統合運用の強化
 前記II2に示すとおり、統合幕僚組織の新設及び各幕僚監部の改編を行うほか、統合運用基盤の確立に資するよう、統合幕僚学校の改編、統合演習の実施、情報通信基盤の共通化等を行う。
(2)情報機能の強化
 各種事態の兆候を早期に察知するとともに、迅速・的確な情報収集・分析・共有等を行うため、情報本部をはじめとする情報部門の体制につき、能力の高い要員の確保・育成も含め、その充実を図るとともに、電波情報・空間情報を含めた多様な情報収集・分析手段の整備や、電子戦データ収集機(EP−3)の改善を図るなど、各種情報収集器材・装置等の充実を図る。また、戦闘機(F−15)の偵察機転用のための試改修に着手する。
 このほか、滞空型無人機について、検討の上、必要な措置を講ずる。
(3)科学技術の発展への対応
(ア)指揮通信能力等の強化
 統合運用の推進や国際平和協力活動の円滑な遂行に不可欠となる確実な指揮命令と迅速な情報共有を進めるとともに、運用及び体制の効率化を図るため、指揮命令系統の情報集約・伝達、部隊レベルの情報共有、サイバー攻撃対処能力及び関係機関等との情報共有の強化を図り、内外の優れた情報通信技術に対応した高度な指揮通信システムや情報通信ネットワークを整備する。
(イ)研究開発の推進
 引き続き、固定翼哨戒機(P−3C)の後継機、輸送機(C−1)の後継機、現有戦車の後継戦車の開発を推進するほか、科学技術の動向等も踏まえ、重点的な資源配分を行いつつ、各種指揮統制システム、無人機等の研究開発を推進する。その際、産官学の優れた技術の積極的導入、モデリング・アンド・シミュレーションの積極的な活用、装備品の共通化・ファミリー化、民生品・民生技術の活用、米国をはじめとする諸外国との協力等により、効果的かつ効率的な研究開発の実施に努める。
 また、研究開発における重点投資の在り方、技術研究本部の体制等について検討の上、必要な措置を講ずる。
(4)人的資源の効果的な活用
(ア)人事・教育訓練施策の充実
 隊員の高い士気及び厳正な規律の保持のため、各種の施策を推進するとともに、自衛隊の任務の多様化・国際化、装備品の高度化、統合運用の強化等に対応し得るよう、柔軟な判断力を持つ若手幹部の増加等を通じて質の高い人材の確保・育成を図り、また、教育訓練を充実する。
 このほか、退職自衛官の社会における有効活用の在り方について検討の上、必要な措置を講ずる。
(イ)安全保障問題に関する研究・教育の推進
 防衛研究所の安全保障政策に係る研究・教育機能の充実を図るとともに、安全保障分野における人的交流等により人的基盤を強化する。
5 防衛力を支える各種施策の推進
(1)装備品等の取得の合理化・効率化
 調達価格の抑制を含む装備品等のライフサイクルコストの抑制に向け、具体的な達成目標を設定しつつ、取組を一層強化するとともに、多様な事態にも対処し得る効率的な調達補給態勢の整備や我が国の安全保障上 不可欠な中核技術分野を中心とした真に必要な防衛生産・技術基盤の確立等総合取得改革を推進し、各種施策を実施する。
(2)関係機関や地域社会との協力の推進
 各種の事態に国として統合的に対応し得るよう、警察、消防、海上保安庁等の関係機関との連携を強化するとともに、国民保護法制も踏まえた地方公共団体、地域社会との協力を推進する。
 また、防衛施設の効率的な維持及び整備を実施するとともに、関係地方公共団体との緊密な協力の下、防衛施設とその周辺地域との一層の調和を図るため、引き続き、基地周辺対策を推進する。
IV 日米安全保障体制の強化のための施策
1 情報交換、政策協議
 国際情勢についての情報及び意見の交換を強化するとともに、日米の役割分担及び在日米軍の兵力構成を含む軍事態勢等の安全保障全般に関する戦略的な対話等を継続して行う。その際、米軍の抑止力を維持しつつ、在日米軍施設・区域に係る過重な負担軽減に留意する。
2 運用協力、共同演習・訓練
 戦略的な協議の成果等を踏まえつつ、運用面における効果的な協力態勢の構築に努める。また、共同演習・訓練を充実する。
3 弾道ミサイル防衛における協力の推進
 弾道ミサイル防衛能力の向上に向けた日米共同の取組を強化するとともに、政策面、運用面、装備・技術面における協力を一層推進する。
4 装備・技術交流
 引き続き、日米共同研究等装備・技術面での幅広い相互交流の充実に努める。
5 在日米軍の駐留をより円滑かつ効果的にするための取組
 在日米軍の兵力構成に関する米国との協議に主体的に取り組みつつ、引き続き、抑止力を維持しつつ、在日米軍駐留支援及び沖縄の施設・区域の整理・統合・縮小を含む在日米軍の駐留を円滑かつ効果的にするための施策を推進する。
6 グローバル及び地域的な安全保障面での国際社会の取組における日米両国の連携の強化
 テロとの闘い、拡散に対する安全保障構想(PSI)をはじめとする新たな脅威や多様な事態の予防や対応に係る国際的取組に関して、我が国として主体的に取り組むとともに、日米が密接に連携するための施策を推進する。
V 整備規模
 前記III(自衛隊の能力等に関する主要事業)に示す装備品のうち、主要なものの具体的整備規模は、別表のとおりとする。
VI 所要経費
1 この計画の実施に必要な防衛関係費の総額の限度は、平成16年度価格でおおむね24兆2,400億円程度をめどとする。
2 各年度の予算の編成に際しては、国の他の諸施策との調和を図りつつ、一層の効率化、合理化に努め、この計画の所要経費の枠内で決定するものとする。なお、将来における予見し難い事象への対応、より安定した安全保障環境の構築への貢献等特に必要があると認める場合にあっては、安全保障会議の承認を得て、上記1の額の他、1,000億円を限度として、これら事業の実施について措置することができる。
  その際、「今後の防衛力整備について」(昭和62年1月24日安全保障会議及び閣議決定)示された節度ある防衛力の整備を行うという精神は、引き続きこれを尊重するものとする。
3 この計画については、3年後には、その時点における国際情勢、情報通信技術をはじめとする技術的水準の動向、財政事情等内外諸情勢を勘案し、この計画に定める所要経費の総額の範囲内において、必要に応じ見直しを行う。
VII その他
1 新防衛大綱に定める防衛力の在り方について、5年後又は情勢に重要な変化が生じた場合には、その時点における安全保障環境、技術水準の動向等を勘案し、必要な修正を行うための検討を行う。
2 SACO(沖縄に関する特別行動委員会)関連事業については着実に実施し、その所要経費については別途明らかにすることとする。
 
(別表)
資料10 中期防衛力整備計画(平成17年度〜平成21年度)について(別表)

 

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