第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)イラク復興支援派遣輸送航空隊で活躍した隊員の声

第1輸送航空隊 第401飛行隊 3等空佐(当時:イラク復興支援派遣輸送航空隊飛行隊長) 加藤 治(かとう おさむ)

 私は、第16期イラク復興支援派遣輸送航空隊で飛行隊長として勤務しました。同飛行隊の業務は、クウェートのアリ・アル・サレム基地を拠点に、イラクのアリ基地、バグダッド空港およびエルビル空港に、多国籍軍および国連の復興支援にかかわる物資や人員をC-130輸送機により空輸することでした。私は、それまでに3回の派遣経験がありましたので、業務の内容や現地での生活について不安や心配はありませんでしたが、50℃近い気温とわずか数%の湿度にはやはり体がなかなか慣れず、肉体的な疲労は大きく、任務運航はつらいものでした。しかしながら、運航のつらさや対空ミサイルなどによる攻撃を常に警戒しなければならない緊張ゆえに、任務運航を終えたときの達成感と安堵感は例えようがないほど大きいものでした。そしてイラクの復興に尽力できたこと、関係各国との信頼関係を強化できたことなどに喜びを感じるとともに、わが国の国益に寄与できたことに大きな誇りを感じています。
 私は、最終任務運航に機長として搭乗しました。運航終了後、出迎えに来られた隊司令や副司令と握手したときには、これまでに温かいご指導を頂いたことや、積極的に業務をこなしてくれた有能な飛行隊員、強力な支援態勢で任務運航を支えてくれた司令部要員、各部隊長および隊員を思い出し、すばらしい上司、同僚および部下達と一緒に仕事ができたことへの喜びがこみあげて来るのを感じました。隊司令も言葉なく目を赤くして、私の手をただただ強く握りしめていました。
 4回にわたる派遣で、国際貢献への各国の取組を現場で見ることができ、多くのことを学ばせていただきました。今後は、これから国際貢献の現場に立つであろう後輩たちに、私や本任務にかかわってきた多くの関係者の経験を伝え、より精強な部隊の育成に尽力することで、わが国の、そして世界の安定に寄与したいと考えています。
 
C-130輸送機と加藤3佐(中央)

 

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