一国にとって不可欠な平和と安全および独立は、願望するだけでは確保できない。ますます相互依存関係を深めている国際社会の現状を踏まえ、自らの防衛力とともに、外交努力、同盟国との協力などさまざまな施策を総合的に講じることで初めて確保できるものである。特に、資源の海外依存度が高く、自由貿易に発展と繁栄の基盤を置くわが国にとっては、国際社会の平和と協調の維持が極めて重要である。
　このため、わが国は、日米同盟¹関係をはじめとする二国間の協力関係を強化しつつ、アジア太平洋地域での地域的協力や国際連合(国連)への協力などを積極的に進め、紛争・対立の防止や解決、経済の発展、軍備管理・軍縮の促進、海洋の安全確保、相互理解と信頼関係の増進などを図っている。
　また、わが国は、国内においても、国民生活を安定させ、国民の国を守る気概の充実を図り、侵略を招くような隙(すき)を生じさせないよう経済、教育などの分野においてさまざまな施策を講じ、安全保障基盤の確立を図っている。
　しかし、国際社会の現実を見れば、これらの非軍事的手段による努力のみでは、必ずしも外部からの侵略を未然に防止できず、また、万一侵略を受けた場合にこれを排除することもできないため、国の安全を確保することは困難である。
　防衛力は、侵略を排除する国家の意思と能力を表す安全保障の最終的担保であり、その機能はほかのいかなる手段によっても代替できない。したがって、その本来の役割である本格的な侵略事態への備えは必要不可欠である。また、今日の安全保障環境においては、国際テロ、大量破壊兵器や弾道ミサイルなどの拡散・移転などの新たな脅威や多様な事態へ実効的に対応できる防衛力も必要となってきている。このため、政府は、防衛力の適切な整備を進めるとともに、日米安全保障体制(日米安保体制)を堅持し、その信頼性を向上させて隙のない防衛態勢をとっている。さらに、国際平和協力活動など、国際的な安全保障環境を改善してわが国に脅威が及ばないようにするという観点からも、防衛力の果たす役割の重要性は増してきている。
　わが国は、安全保障における防衛力の重要な役割を認識しつつ、さまざまな分野における努力を尽くし、わが国の安全を確保するとともに、アジア太平洋地域、ひいては世界の平和と安全の達成を図っている。