第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

3 国防費

 中国は、2009年度の国防予算を約4,729億元、前年度比15.3%の増加と発表した。中国の公表する国防費は、当初予算比で21年連続の二桁の伸び率を達成したが、この公表国防費の増額のペースは、5年毎におよそ倍額となるペースであり、過去21年間で中国の公表国防費は、名目上約22倍の規模となった10。中国は、国防と経済の関係について、「2008年中国の国防」において、「経済建設と国防建設を協調的に発展させる方針を堅持する」と説明し、国防建設を経済建設と並ぶ重要課題と位置付けている。このため、中国は経済建設に支障のない範囲で国防力の向上のための資源投入を継続していくものと考えられるが、景気の減速が表面化する中で、中国がこれまでと同様のペースで国防費を増加させていくのかが注目される。
(図表I-2-3-1 参照)
 
図表I-2-3-1 中国の公表国防費の推移

 また、中国が国防費として公表している額は、中国が実際に軍事目的に支出している額の一部にすぎないとみられていること11に留意する必要がある。たとえば、装備購入費や研究開発費などはすべてが公表国防費に含まれているわけではないとみられている。


 
10)中国の発表した国防費伸び率は昨年度執行額と今年度当初予算を比較した伸び率であり、昨年度当初予算と今年度当初予算を比較すると約15.4%の伸び率となっている。外国の国防費を単純に外国為替相場のレートを適用して他の通貨に換算することは、必ずしもその国の物価水準に照らした価値を正確に反映するものではないが、仮に本年度の中国の国防予算を1元=15円で換算すると約7兆930億円となる。なお、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI:Stockholm International Peace Research Institute)「2009年版年鑑」(本年6月)は、08(平成20)年の中国の軍事支出を約849億米ドルと見積もっており、米国に次ぐ世界第2位としている。

 
11)米国防省「中華人民共和国の軍事力に関する年次報告」(本年3月)は、中国の国防費について、08年度の公表国防費は約600億ドルであるが、実際の国防費は1,050億ドルから1,500億ドルであると見積っている。


 

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