第III部 わが国の防衛のための諸施策 

(VOICE)防衛施設庁の解庁と庁史の編纂に携わった隊員の声

南関東防衛局企画部地方調整課環境対策室長 高橋 晃(たかはしあきら)
(当時:防衛施設庁総務部総務課企画室補佐)


 防衛施設庁は、平成18年1月の談合問題を契機として、昨年9月に廃止・本省に統合されました。その決定を知って職員は驚き、そして言いようのない寂しさに浸りました。多くの防衛施設庁を愛する先輩方も同様であったと思います。
 このような中、北原防衛施設庁長官(当時)の発意により、全庁的な体制によって、廃止・統合までに『防衛施設庁史』を編さんすることが決まり、私たち5名の総務課職員は「総括チーム」として資料の収集、文案作成、レイアウトなど全て未経験の仕事に連日深夜まで従事することとなりました。
 防衛施設庁の歴史はそのままわが国の基地問題の歴史です。進駐軍の時代、自衛隊の発展・拡充の時代、沖縄の返還、そして廃止・統合に揺れる最中においても、防衛施設庁の職員は、特別調達庁・調達庁の時代と同様に、時の政府の重要課題となった数々の基地問題の最前線を担ってきました。これとあわせて地元側の動向も含めた基地問題の概観・変遷の記録として『庁史』を編さんすることを考えました。しかし、残された時間は少なく作業は平坦ではありませんでした。
 一方で、かつての基地問題の当事者である先輩方や地元関係の方々から直接お話を伺ったことは知的刺激に満ちた経験で、著名な基地問題の現場にタイムトリップすることが度々ありました。
 このような編さん作業の中で、防衛施設庁に課せられた防衛施設の取得・安定的運用の確保という任務がいかに困難なものかを改めて認識するとともに、厳しい状況においても職責を果たすべく黙々と努力された先輩方を思い胸が熱くなることもありました。このような努力がわが国の安全保障の礎となったと確信します。
 そして、『庁史』は廃止・統合の直前に完成しました。この時手にした『庁史』の感触と重みは忘れられません。その出来映えは読む方々の判断を待たねばなりませんが、当初の目的の大部分は達成できたのではないかと思っています。
 今、改めて『庁史』を読み返してみて、『庁史』に掲載されている寄稿は地元関係の方々からのものも含めて、「防衛施設庁の廃止後も基地問題は存在し続ける。その解決のため一層の努力を期待する。」というメッセージを私たちに送っていると思えます。新しい体制となって1年が経過しますが、この期待に応えるためにも、今回の組織改編を真に有意義なものとするためにも、不断の努力が私たちに求められていると思います。

参照> 「防衛施設庁史」<http://www.mod.go.jp/j/info/choushi/
 
防衛施設庁史編さんに携わった総括チーム(中央が高橋室長)

 

前の項目に戻る     次の項目に進む