第III部 わが国の防衛のための諸施策 

1 防空のための作戦


 わが国に対する武力攻撃が行われる場合には、周囲を海に囲まれたわが国の地理的な特性や現代戦の様相1から、まず航空機やミサイルによる急襲的な航空攻撃が行われ、この航空攻撃は反復されると考えられる。
 防空のための作戦は、侵攻側が攻撃の時期、地域、方法を選択できること、初動対応の適否が作戦全般に及ぼす影響が大きいことなどの特性を有する。このため、平素から即応態勢を保持し、継続的な情報の入手に努めるとともに、作戦の当初から戦闘力を迅速かつ総合的に発揮することなどが必要である。
 防空のための作戦は、空自が主体となって行う全般的な防空と、各自衛隊が基地や部隊などを守るために行う個別的な防空に区分できる。
 
飛行中の空自F-15戦闘機

 全般的な防空においては、敵の航空攻撃に即応して国土からできる限り遠方の空域で迎え撃ち、敵に航空優勢2を獲得させず、国民と国土の被害を防ぐとともに、敵に大きな損害を与え、敵の航空攻撃の継続を困難にするよう努める。
(図表III-1-3-1 参照)
 
図表III-1-3-1 防空のための作戦の一例

(1)侵入する航空機の発見
 航空警戒管制部隊のレーダーや早期警戒管制機などにより、わが国周辺のほぼ全空域を常時監視し、侵入する航空機などをできる限り早く発見する。

(2)発見した航空機の識別
 自動警戒管制組織(BADGE(Base Air Defense Ground Environment)システム)3などにより、発見した航空機が敵か味方かを識別する。

(3)敵の航空機に対する要撃・撃破など
 敵の航空機と判断される場合、航空警戒管制組織により、地上または空中で待機する戦闘機や陸自または空自の地対空誘導弾部隊に撃破すべき目標を割り当て、管制・誘導された戦闘機や地対空誘導弾で敵の航空機を撃破する。


 
1)現代戦においては、航空作戦は戦いの勝敗を左右する重要な要素となっており、陸上・海上作戦に先行または並行して航空優勢を獲得することが必要である。

 
2)空において相手航空戦力より優勢であり、相手から大きな損害を受けることなく諸作戦を遂行できる状態

 
3)自動化した航空警戒管制組織であり、指揮命令、航跡情報などを伝達・処理する全国規模の指揮通信システム


 

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