第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

2 国連平和維持活動(PKO)の動向


 PKOは、伝統的には、停戦の合意が成立した後に、停戦監視などを中心として、紛争の再発防止を主たる目的として行われてきたが、冷戦終結後、その任務は、武装解除の監視、選挙や行政監視、難民帰還などの人道支援など、文民の活動を含む幅広い分野にわたるようになった。また、国連憲章第7章の下で、強力な権限1を与えられる活動も設立されるようになった2
 さらに、活動の人的規模も顕著な拡大を見せている。派遣人員数は、冷戦終結後に大きく上昇し、バルカン半島やソマリアへの大型PKOミッション派遣が行われていた93(平成5)年には約78,000人を記録した。その後一時は約12,000人にまで減少したが、00(同12)年頃からアフリカ、中東を中心に大型ミッションが増加したことにより再び上昇に転じ3、本年5月末現在、全世界で17のPKOミッションが展開し、117か国、約88,000人が参加している4
(図表I-2-9-1参照)
 
図表I-2-9-1 活動中の国連平和維持活動一覧

 その一方で、近年のPKOをめぐる環境は厳しさを増している。社会基盤が整備されていない地域への派遣が増加しているほか、要員の犠牲者に占める病死者の割合も増加している5。こうした状況は、要員・機材の確保の問題や要員の安全確保の問題などをもたらしている。


 
1)たとえば、近年設立されたミッションにおいては、文民の保護や国連施設の警護、治安維持などのために、必要なあらゆる措置をとることが認められている場合がある。

 
2)本年3月には、約60年にわたるPKOで得られた教訓の蓄積や、現代におけるPKOの性質や任務についてまとめた「国連PKO:原則と指針」(いわゆるPKOキャップストーン・ドクトリン)が公表されるなど、知識基盤の整備も進められている。

 
3)特にここ数年は大型化の傾向にあり、本年5月末現在で8,000人以上の要員で構成されている大型の7ミッションのうち、5ミッションは過去5年以内に設立されており、2ミッションも過去5年以内に8,000人以上まで規模が拡大されたものである。

 
4)展開先はアフリカが主体であり、派遣人員総数約88,000人のうち7割に当たる約61,000人がアフリカに派遣されている。

 
5)PKOなどにおける国連要員の犠牲者数は、これまでの総計が2,474人(本年5月末時点)に達しており、昨年1年間では90人(うち43人が病死者)であった。特に過去5年間での犠牲者(554人)のうち、病死者は275人にのぼり、事故(151人)、敵対行為(90人)による犠牲を大きく上回っている。


 

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