第III部 わが国の防衛のための諸施策 

1 安全保障対話・防衛交流の意義

 冷戦終結後、各国が保有する軍事力や国防政策の透明性を高め、防衛当局者間の対話・交流、各種共同訓練などを通じて相互の信頼関係を深めることで、無用な軍備増強や不測の事態の発生とその拡大を抑えることが重要との認識が広く共有されるようになった。
 わが国周辺地域においては、依然として核戦力を含む大規模な軍事力が存在するとともに、多くの国が軍事力の近代化に力を注いでいる。また、朝鮮半島や台湾海峡をめぐる問題など、不透明、不確実な要素が存在している。
 また、大量破壊兵器や弾道ミサイルの拡散の進展への対応を含め、新たな脅威や多様な事態への対応は、今日の国際社会にとって差し迫った課題として国際社会が協力して取り組むことが必要であるとの認識が共有されてきている。
 こうした情勢において、国際社会および地域の平和と安定を確固なものとするためには、各国が相互の信頼関係を深めるとともに、二国間および多国間の協力を推進する必要があるとの認識に基づき、防衛省・自衛隊は、関係諸国との二国間交流やASEAN地域フォーラム(ARF:ASEAN Regional Forum)などの多国間の安全保障対話、多国間の共同訓練などを重視しており、今後とも、関係諸国の動向をも見極めつつ、その内容を深め、幅を広げることで、安全保障環境の改善に向けて積極的に取り組むこととしている。
 特に近年は、国際情勢等の変化に伴い、防衛交流について、1)信頼醸成に加え、国際社会との協力関係の構築・強化の意義の高まり、2)近隣諸国を越えた交流対象国のグローバルな広がり、3)親善的のみならず実務的な性格を有する交流や、対話のみならず行動を伴う交流の重要性の高まりなどの変化が見られる。
 このため、質的・量的に拡大する防衛交流について、防衛省全体が一体となって防衛交流を戦略的に実施していくため、本年4月「防衛交流の基本方針」1を定めた所である。
 この基本方針では、これまで行ってきた防衛交流に加え、国際協力の強化に直接的に寄与する防衛交流2を重視するとともに、二国間の対話や協議にとどまらない、多様な防衛交流の手段3を効果的に活用し、信頼・協力関係の増進を図ることとしている。
 今後は、本基本方針の内容を踏まえ、地域別および国別のあり方の策定、防衛交流企画・実施態勢の拡充、中期的な防衛交流計画の策定などにより、本基本方針の考え方および方向性を具体化・実現していく予定である。
(図表III-3-2-1参照)
 
図表III-3-2-1 安全保障対話・防衛交流


 
1)<http://www.mod.go.jp/j/defense/exchange/01.html>参照
 
2)問題意識の共有・政策協調に直結する対話や、自衛隊の国際平和協力活動の円滑化に直結する共同訓練など。
 
3)相互の部隊視察や訓練へのオブザーバー派遣、各種フォーラム・シンポジウムやセミナー、情報交換、装備・技術交流、災害分野における自衛隊の知見の提供など。

 

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