第III部 わが国の防衛のための諸施策 

2 国連ネパール政治ミッション(UNMIN:United Nations political mission in Nepal)

(1)UNMIN設立の経緯

 ネパールでは、96(平成8)年、マオイスト(ネパール共産党毛沢東主義派)が国王からの政権奪取を目的とした武装闘争を開始し、以来約10年にわたり内戦が続いてきた。昨年5月、新政権が誕生し、政府とマオイストは累次和平交渉を行い、同年6月、両者の間で、国連に対しネパール国軍及びマオイストの武器および兵士の管理の監視を行うよう要請することなどの8項目の合意が成立した。両者は、同年11月には、本年6月半ばまでの制憲議会選挙の実施、このために国連がネパール国軍およびマオイストの武器および兵士の管理の監視を行う枠組みなどを内容とする「恒久平和の実現に向けた合意文書」に署名、その後、紛争終結を含む包括和平合意が成立した。
 ネパール政府からの要請を受け、本年1月24日(ニューヨーク時間23日)、国連安保理において、以下を主任務とするUNMINの設立を決定する国連安保理決議第1740号が全会一致で採択された。UNMINの設置期限は来年1月22日となっている。
○ 包括和平合意の規定に従った武器及び兵士の管理の監視
○ 共同監視調整委員会(JMCC:Joint Monitoring Coordinating Committee)を通じた武器および兵士の管理に関する合意の履行に関する支援
○ 停戦合意の監視に関する支援
○ 制憲議会選挙の計画、準備及び実施のための技術的支援の提供
○ 選挙過程のすべての技術的視点を検討するとともに選挙行為について報告するための小規模な選挙監視チームの提供

(2)UNMINへの派遣の経緯など

 ネパールは中国とインドに挟まれた要衝に位置し、同国の安定は、周辺地域全体の安定にとっても重要である。また、いわゆる破綻国家がテロリストの温床となり、国際的に影響を与える可能性があることなどを踏まえれば、同国を巡る平和と安定を求める崇高な努力が行われている中で、わが国が、アジアの一員として、資金面だけでなく人的にも貢献を行うことは重要である。
 わが国は、国連から、同ミッションへの軍事監視要員の派遣を要請され、本年3月27日、閣議により派遣を決定し、3月30日から陸上自衛官6名を派遣している。
(図表III-3-1-14参照)
 
図表III-3-1-14 国連ネパール政治ミッションにおける軍事監視要員配置場所

(3)派遣隊員の活動

 派遣隊員は、UNMINにおいて、ネパール国内5か所の各地域の司令部、7か所のマオイストキャンプ及びネパール国軍の兵舎において、武器および兵士の管理の監視を行っている。
 今般のUNMINへの軍事監視要員の派遣にあたっては、国連の規定に従い、武器は携行していない。また、今までの自衛官の派遣が部隊とともに停戦監視要員や司令部要員として派遣されたのとは異なり、軍事監視要員のみが個人単位で派遣されている。
 
国連ネパール政治ミッションにおいて活動中の石橋2等陸佐(左端)

 

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