3 国民の保護における自衛隊の役割
(1)自衛隊と国民の保護
武力攻撃事態等において、自衛隊は、速やかに武力攻撃を排除し、国民への被害を局限化することが重要であり、この自衛隊にしか実施することができない任務の遂行に万全を期すこととなる。
このため、武力攻撃事態等の規模・態様によるが、自衛隊の持てる能力を、人命救助や復旧支援などに集中することが可能な自然災害のみへの対応(災害派遣など)の場合とは異なり、自衛隊は、武力攻撃を排除するという任務との両立を図り得る範囲内で、可能な限り、避難住民の誘導、避難住民などの救援、武力攻撃災害などへの対処や応急の復旧などの国民保護措置を行うこととなる。
(2)国民保護等派遣など
国民保護法の制定に伴い、武力攻撃予測事態などにおいて、自衛隊が国民保護措置を実施できるよう自衛隊法が改正され、自衛隊の行動として、「国民保護等派遣」が新設された。
活動内容としては、自然災害時における「災害派遣」と変わるものではないが、武力攻撃事態等という環境下における活動であるため、武器使用に関する規定や、内閣総理大臣の承認規定などを設けている。
(図表III-1-1-6参照)
また、武力攻撃事態において防衛出動が命ぜられている場合や緊急対処事態に対する対処措置として治安出動が命ぜられている場合には、国民保護等派遣を命ずることなく、防衛出動や治安出動などの一環として、国民保護措置又は緊急対処保護措置を実施することとなる。
国民保護等派遣に関する規定の概要は次のとおりである。
ア 派遣の手続き
防衛大臣は、都道府県知事からの要請を受け、事態やむを得ないと認める場合、または対策本部長
2から求めがある場合は、内閣総理大臣の承認を得て、部隊等に「国民保護等派遣」を命令し、国民保護措置を実施させる。
イ 警察官などに準じた権限
国民保護等派遣を命ぜられた自衛官は、警察官などがその場にいない場合に限り、警察官職務執行法の避難等の措置、犯罪の予防および制止、立入、武器の使用の権限を行使することができる。
ウ 市町村長などに準じた権限
国民保護等派遣を命ぜられた自衛官は、市町村長などがその場にいない場合に限り、退避の指示、応急公用負担、警戒区域の設定、住民などに対する協力要請などの権限を行使することができる。
エ 臨時部隊編成など
国民保護等派遣を行う場合に、必要に応じた特別の部隊の臨時編成、即応予備自衛官および予備自衛官に対する招集命令の発令を行うことができる。
オ 緊急対処保護措置
緊急対処事態に係る措置に関しても、同様の規定を準用する。
(3)防衛省・自衛隊が行う国民保護措置
指定行政機関である防衛省および防衛施設庁は、国民保護法第33条第1項や基本指針に基づき、05(平成17)年10月に「国民保護計画
3」を策定した。この中で、自衛隊は、武力攻撃事態においては、主たる任務である武力攻撃の排除を全力で実施するとともに、国民保護措置については、これに支障のない範囲で、住民の避難・救援の支援や武力攻撃災害への対処を可能な限り実施するとしている。
自衛隊が行う措置の内容は次のとおりである。
ア 住民の避難
必要な情報を収集・提供するとともに、関係機関と連携して、避難住民の誘導や運送を実施する。このほか、地方公共団体の長から、住民の避難のために自衛隊の駐屯地・基地内の通行などを要請された場合には、速やかに所要の調整・手続きなどを行う。