3 在日米軍施設・区域をめぐる諸問題への取組
在日米軍再編の協議については、3年半に及ぶ日米間の厳しい交渉を経て、昨年5月1日に「再編実施のための日米のロードマップ」という形で最終的な取りまとめがなされた。これは、最近における安全保障環境の変化と両国の防衛・安全保障政策の発展を踏まえ、抑止力の維持と地元の負担軽減を通じて日米安全保障体制を一層実効的なものとしていく上で極めて重要な一歩であり、その意義は大きい。
在日米軍の施設・区域は、わが国に対する武力攻撃があった場合、日米の共同対処を迅速に行うために重要な役割を果たすこととなる。また、在日米軍は、わが国に対する武力攻撃を未然に防ぐ抑止力としても機能し、わが国の安全の確保において、極めて重要な役割を果たしている。このような米軍のプレゼンスは、地域における米軍の関与の基盤となるものであり、地域の平和と安定を維持するために不可欠なものとなっている。
在日米軍施設・区域がその機能を十分に発揮するためには、これを抱える地元の理解と協力が欠かせない。一方で、在日米軍施設・区域については、日米安保条約締結以来、過去数十年の間に、市街化が進み、これらと都市部や産業地区とが隣接し、住民の生活環境や地域振興に大きな影響が見られるなど、その周辺における社会環境は大きく変化している。在日米軍施設・区域が十分に機能を発揮するとともに、真に国民に受入れられ、支持されるものであるためには、こうした周辺における社会環境の変化を踏まえて在日米軍施設・区域による影響をできる限り軽減する必要がある。このため、政府は、在日米軍の再編に当たり、在日米軍施設・区域の周辺の負担軽減に取り組むことにより、施設・区域の安定的な使用を確保するよう努めてきたところである。
他方、抑止力を維持しつつ、米軍施設・区域が所在する地元の負担軽減を実現するためには、誰かが代わってその負担を負わねばならない。このため、政府は、再編に伴って負担を受けることとなる地元自治体に対する地域振興策等についても、併せて検討してきたところである。
このように、在日米軍の再編を実現するためには、基本的には、米側との協議、政府部内の調整、地方公共団体との協議を経て、整合性ある国の施策としてまとめていくことが必要である。
防衛省においては、対米協議は本省の内部部局、地方公共団体との調整は防衛施設庁が中心となってそれぞれ対応してきたが、今年度中に、防衛施設庁を廃止して防衛省本省に統合し、米側、関係省庁、地方との協議や政策立案が円滑かつ効果的に実施できるような体制とすることとしている。
今後、国民や地元の信頼を得て在日米軍施設・区域をめぐる諸問題に取り組んでいくために、防衛省は、防衛に関する責任と権限を有する立場から、積極的に対応していく必要がある。
参照>III部2章2節