(解説)中国の宇宙開発
中国は宇宙開発の努力を続けており、昨年10月に発表された「2006年の中国の宇宙事業」によれば、これまでに、帰還式遠隔探査衛星、「東方紅」通信放送衛星、「風雲」気象衛星、「実践」科学探査・技術試験衛星、「資源」地球資源探査衛星、「北斗」航法衛星を開発したほか、今後、海洋衛星を形成し、環境・災害モニタリング予報小型衛星計画を実施するとしている
1。「長征」シリーズ運搬ロケットの打ち上げについては、1996年10月から2005年末までに46回連続して成功したとしている。また、今後5年間の目標として、大推力の運搬ロケットの開発、高解像度の地球観測システムプロジェクトの実施、宇宙望遠鏡や新型帰還式衛星などの科学衛星の開発、宇宙飛行士の船外活動の実現とドッキング実験、月面探査衛星「嫦娥(じょうが)1号」の開発と打ち上げなどが挙げられている。
「2006年の中国の宇宙事業」では、宇宙事業の目的の一つとして「国家の安全」が挙げられており、中国は軍事的な観点からも宇宙開発を重視していると考えられる。中国では、政府の宇宙機関を代表する国家航天局が国防科学技術工業委員会の下に置かれているほか、「2006年の中国の国防」では、国防科学技術工業に関して、「有人宇宙飛行と月面探査プロジェクトなど重要な科学技術プロジェクトを組織、実施し、ハイテク産業の飛躍的な発展を促進し、国防科学技術全体の著しい発展を実現している。」と記述されている。このように中国の宇宙開発における軍事部門と非軍事部門の間には関連があるものとみられることから、中国の宇宙開発は、情報収集、通信、航法などの軍事目的での宇宙利用と関連している可能性がある。
中国は対衛星兵器にも関心を有しており、今年1月に弾道ミサイル技術を応用して自国の人工衛星を破壊する実験を実施した。この他にも、レーザー光線を使用して人工衛星を妨害する装置を開発しているとの指摘もある。
1)中国は、宇宙分野における国際協力にも力を入れており、ブラジル、フランス、ロシア、ウクライナなどと協力を行なっているほか、欧州宇宙機関の航法衛星システム計画である「ガリレオ計画」にも参加している。