3 対外関係
1 米国との関係
米国との関係は、テロとの闘いにおける協力などを通じて、さまざまな分野において進展したが
1、米国は主としてロシアの内政の動向に、ロシアは米国の対外政策にそれぞれ懸念を表明しており、引き続き立場の違いも見られる
2。
弾道ミサイル防衛を推進する米国による02(平成14)年6月の対弾道ミサイル・システム制限(ABM:Anti-Ballistic Missile)条約からの脱退に対し、ロシアは、米国のABM条約脱退の決定は誤りであるとはしたものの、ロシアの安全保障上の脅威とはならないと受け止めてきた。しかし、米国のミサイル防衛システムの一部をチェコおよびポーランドに配備するための本格的交渉の開始が合意されたことに対し、このシステムがロシアに向けられたものであり、自国の核抑止能力に否定的影響を与え得るとしてロシアは強く反発している。
また、米露両国は、02(同14)年5月に署名され、翌年6月に発効した戦略攻撃能力削減に関する条約(通称「モスクワ条約」)により、12(同24)年12月31日までに核弾頭数を1,700〜2,200発に削減することとなっている。なお、同条約では、核戦力の構成と構造は、各国がこの上限内で独自に決定するものと規定されている。
1)たとえば、信頼醸成措置から始まった両国の軍事面における協力関係は、実際の共同行動をも念頭に置いた段階に発展しつつある。04(平成16)年から在欧米陸軍とロシア地上軍の間で指揮所演習「トルガウ2004」が開始されたのに続き、05(同17)年には実動訓練を伴う「トルガウ2005」が実施された。
2)米国は、昨年2月に公表された「四年毎の国防計画の見直し(QDR)」において「米国は、ロシアにおける民主主義の衰退、非政府組織(NGO)や報道の自由の抑制、政治権力の中央集権化、経済的自由の制限に依然として懸念を抱いている」としている。一方、本年2月、プーチン大統領は、民間機関主催のミュンヘン安全保障会議における演説で、米国が他国に自国の政策を押し付けているとしてその外交姿勢を批判した。