第I部 わが国を取り巻く安全保障環境 

1 安全保障環境認識

 米国は、今日の安全保障環境の下では、ソ連という敵が明確に認識されていた冷戦期と異なり、誰が、いつ、どこで米国に脅威を与え、攻撃してくるかを予測することは困難であるとしている。「国家防衛戦略」3は、米国が今日の不確実な安全保障環境において直面すると予想される課題として、以下の四つを挙げている。
1) 伝統型課題:通常戦力による国家間紛争の脅威であり、この分野において米国は優位にあるものの、敵対勢力が脅威を及ぼす可能性は排除されない。
2) 非正規型課題:米国の影響力などを低下させるため、テロや反乱といった非正規型手段を使用する脅威であり、こうした脅威が増大している背景として、政治・民族・宗教上の過激主義が台頭していることや自国の領域に対するコントロールが不十分な国家がテロリストなどの活動拠点となっていることがあげられる。
3) 壊滅型課題:大量破壊兵器などの調達、保有、使用による脅威であり、特に、ならず者国家や国境を越えて活動するテロリストが大量破壊兵器などを入手した場合に米国の脅威は高まる。
4) 混乱型課題:米国の優位を相殺する技術などを用いて米国の脆弱(ぜいじゃく)性に付け込む脅威であり、バイオテクノロジー、サイバー攻撃、宇宙兵器などの先端技術は、米国の安全保障を脅かす可能性がある。


 
3)国家防衛戦略は、国防長官が2005年3月に公表した文書であり、国家安全保障戦略を実施していく上での指針であるとともに、昨年2月に公表されたQDRの基礎となるもの。

 

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