第6章 国民と防衛庁・自衛隊 

1 装備本部の設置


 装備品の高機能化や取得数量の減少に伴う高価格化、欧米における取得改革の進展を踏まえると、防衛庁においては、これまで以上に、より良い装備品をより安く調達するニーズが高まっている。
 また、主要装備品は、開発・調達された後、部隊において10年から20年以上の長期にわたり運用されることから、これら主要装備品の特性を踏まえた取得施策をとることが、装備品の取得の効率化にとって極めて重要である。
 このため、防衛庁においては、総合取得改革の取り組みの中で、装備品の開発、調達、運用、維持・修理、廃棄に至るライフサイクルにわたる性能、コスト、スケジュールの最適化を図るプロジェクト管理2に関するさまざまな検討を行い、今般、プロジェクト管理の手法を装備品の調達に活用し得る目途がついた。
 また、近年、民需の生産現場においては、バリューエンジニアリング3や生産工学などの手法に基づき、品質を確保しつつ製品の開発・生産コストを削減する取り組みが実施され、効果を発揮している。防衛庁においても、防衛庁の需要に民需で実施されている生産効率化の仕組みを導入させる取り組みを平成16年度に試行的に開始し、現在、その本格的な導入について検討を行っている。
 装備品の取得にあたっては、装備品の生産の効率化によりコスト削減を行いつつ、同時に、装備品の開発など装備品の導入段階に調達、運用、維持・修理などの情報を十分に取り入れ、プロジェクト管理を通じてライフサイクルにわたる性能、コスト、スケジュールの最適化を図ることが重要である。このためには、コスト管理、生産・品質管理、開発管理の機能を統合して、共同作業4を行う体制にすることが効果的であると考えられる。以上のことから、防衛庁としてはこれらの機能を一体として運用し得るよう、内部部局の原価計算部門、契約本部の契約部門、技術研究本部の開発管理部門を統合・再編し5、装備本部を設置することとした。
 なお、装備本部の設置にあたっては、談合や過払いなど装備品の調達に係る不適切な行為の早期発見、抑止をこれまで以上に図るため、装備本部内外から多重的・重層的にチェックを行う体制を整備し、装備品の取得業務が公正かつ適正に実施し得るよう配意したところである。


 
2)プロジェクト管理とは、ある事業において、プロジェクトのリーダーの下、関係各者のチームを作り、事業の目標を明確にした上で、詳細な計画をたてるとともに、事業の進捗状況を管理し、目標を期限内に完了させることを目指すもの。欧米諸国における防衛装備品の取得業務や民間企業のプラント建設や情報システム開発などの業務においても、この手法が用いられている。

 
3)顧客の要求を満たす商品を提供するために必要なコストを最低限にすることを価値とみなし、それを実現するための組織的なコストの引き下げの技術・方法

 
4)米国では、コロケーション(collocation)と称されている。プロジェクトに関わる者が1か所に集まって仕事をすることにより、プロジェクト参加者間で目的意識の共有や仕事の効率化などに関する相乗効果を期待するものであり、プロジェクト管理を実施する上での基本的な手法

 
5)技術研究本部の開発管理部門の統合は、現行の開発事業に影響を与えないよう、主要な開発事業の大半が終了後の平成21年度に実施する予定


 

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